暁に鈴蘭

キリ

電気を消したい女(脚本)

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〇古びた神社
  今日と明日の2日間限定で、暁月寺には
  人間がうじゃうじゃ集う
  夏祭りという催し物があるからだ
暁鈴(まあ、年に2日だけだ)
暁鈴(祭りごとに享楽するものたちを 見るのもまた一興)
暁鈴「?」
参拝者B「ふあぁ〜・・・」
参拝者B「お姉さん、尻尾があるの?」
暁鈴「・・・ぅぅ」
  暁鈴は、どこからか持ってきた
  短冊と筆を使い、参拝者に見せた
参拝者B「“ねがいをいえば、はなしてやるぞ“?」
参拝者B「おねがい、かぁ」
参拝者B「あ!」
参拝者B「わたし!背が大きくなりたい!」
参拝者B「それでね!高いところにある電気消したい」
参拝者B「あと、みんなより小さいから追い越したい」
暁鈴「・・・」
暁鈴「良かろう」
暁鈴「だが、その願いはすぐには叶わない」
参拝者B「ええ〜〜」
暁鈴「それに、」
暁鈴「灯りは、親が消してくれるだろ?」
暁鈴「君が成さずとも叶うぞ」
参拝者B「やだぁ!わたしが消したいもん!」
暁鈴「・・・」
皇樹「分かるよ分かる、よぉ分かる」
皇樹「ボタンって無性に押したくなるねんなぁ?」
暁鈴「貴様っ・・・」
参拝者B「キ様?」
皇樹「ちょおーーーーーーー! ! ?」
皇樹「お前なぁ、子供の前で口悪いねん」
皇樹「俺のことは名前教えたやん」
暁鈴「・・・」
皇樹「ああ〜はいはい、そういう奴ですよねえ」
皇樹「この狐ほっといて、あっちの 金魚すくい見に行かへん?」
暁鈴(こやつまた、見知らぬ者を・・・)
暁鈴(今度は妹か何かなのか?)
暁鈴(関係ないことだが・・・)
参拝者B「金魚すくいさっき見たもん」
参拝者B「わたしおみくじやるから」
皇樹「そ、そか・・・」
皇樹(暁鈴の態度の悪さは、気にせんみたいやな)

〇古びた神社
参拝者B「んーーー」
参拝者B「これに決めた!」
暁鈴「ん」
暁鈴「・・・」
参拝者B「ど、どうなの?」
  おみくじは漢字表記のため、
  暁鈴に読ませてもらうことにした
  しかし、なぜか結果を言うのに
  言葉を詰まらせた
参拝者B「わ、悪い結果でもいいよ?」
暁鈴「・・・」
暁鈴「なんでもない」
暁鈴「おみくじの結果は吉だ」
暁鈴「君が願うことは、君の成長によって 変化するものだ」
暁鈴「その暁には、背丈を測ってみると良い」
参拝者B「なーんだ♪吉だったんだ!」
参拝者B「わたしの成長で変わるのか〜 どんなことをすればいいのかなぁ」
参拝者B「お姉さんには分かるの?教えて?」
暁鈴「自分で考えて行動することぞ」
参拝者B「ふ〜ん」
暁鈴「そうだ、ラッキーアイテムだが」
暁鈴「スポンジ、だそうだ」
参拝者B「スポンジ? !」
参拝者B「なら、お掃除すれば成長できるよね!」
参拝者B「分かったよ!おうちに帰ったら、 スポンジを使うお掃除いっぱいする!」
参拝者B「お姉さん!おみくじ読んでくれて ありがと!」
暁鈴「・・・っ」
皇樹「うーわっ、なに湿気たツラしてんねん」
皇樹「キャラに似合わへんぞ〜?」
暁鈴「貴様は失せろ」
皇樹「あれぇ〜〜」
皇樹「俺まだ賽銭してへんけどー?」
皇樹「話してもええんか?」
皇樹「ちょい!無言で立ち去るのやめぇ」
皇樹「かなしゅうなるわぁ〜」

〇オレンジ(ライト)
  祭りを終えた時刻
  帰宅した参拝者は、
  二人暮らしをしている父親に伝えた
参拝者B「お祭り楽しかったよ〜〜♪」
参拝者B「それでね──」
  出店やそこで食べたもの、暁鈴のことや
  色々なことをわくわくと父に話した
  父親は大笑いしていた
参拝者B「あ!もうこんな時間」
参拝者B「わたし、今日お皿洗うね!」
参拝者B「今日、スポンジがラッキーアイテムなんだ えへへっ♪」

〇オレンジ(ライト)
暁鈴「・・・っ」
暁鈴「我は、軽口を叩いてしまったな」
暁鈴「君の父親は、車椅子に乗っているのか」
暁鈴「家族はその父親だけ・・・」
暁鈴「それなのに我は・・・っ」
暁鈴「親が消してくれるなどと・・・」
暁鈴「軽率だった・・・」
暁鈴「君のおみくじを見た時、“外傷ある者” と書いていたのを見て、はっとさせられた」
暁鈴「灯りは君が怖がらないよう付けておき、」
暁鈴「寝むったあとに、父親が車椅子から 一人で起き上がり、消していたのだな」
暁鈴「壁掛けの灯りだから・・・」

〇黒背景
「・・・・・・すまぬ」

〇古びた神社
  翌日──
参拝者B「お姉さ〜〜ん!」
暁鈴「!」
参拝者B「聞いて聞いて!」
参拝者B「昨日ね」
参拝者B「スポンジを使うためにお皿洗いしたの!」
参拝者B「そしたらね?」
参拝者B「気づかないうちに、台に乗ってるのに つま先立ちしてお皿洗ってたの!」
参拝者B「だからきっと!お皿洗いしてたら 大きくなれるかもって気づいたんだ!」
参拝者B「ここのおみくじのお陰だよ! 本当にありがとう!」
暁鈴(わざわざそれを言いに来たのか)
暁鈴(我はてっきり、もっと暗く──)
  暁鈴は何も言わず、会釈だけした
参拝者B「ああ!遅刻しちゃう!」
参拝者B「またね!」
暁鈴「・・・ふう」
暁鈴「今回は、我もラッキーアイテムに救われた」
暁鈴「まだまだ、ということかな」

次のエピソード:すれ違いな男女 前編

コメント

  • 暁鈴様の細やかな心配りや自省する様子は、本当に素敵ですね!それ以上に、参拝客Bこと女の子の素直さや健気さに心打たれました!

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