第2話「犯人は奴だ。いやそうとも限らない事は否めない」(脚本)
〇整頓された部屋
マヨルガ「そしたらゴルゴンがこう言ったの」
マヨルガ「・・・てね!」
穴倉圭「腹痛い腹痛い!!」
穴倉圭「マヨルガさん、ブラックジョークのセンス パネえっすわ!!」
マヨルガ「そう?」
穴倉圭「だって、ゴルゴンが」
マヨルガ「また家主に怒られるぞ?」
マヨルガ「もう1つとっておきのがあって・・・」
穴倉圭「待って待って!!」
穴倉圭「とっておきの話は、とっておいてください!」
マヨルガ「良いのか?」
穴倉圭「落ち込んだ時にぜひ聞かせてください!」
マヨルガ「分かった」
穴倉圭「マヨルガさん。こんな楽しい流れで 聞くのもなんですが・・・」
〇黒背景
マヨルガ「老者への惨たらしき蛮行を許すな!」
〇整頓された部屋
穴倉圭「あの事件の犯人、分かりませんか?」
マヨルガ「取り憑いた悪魔はだいたい分かるが、 どんな人間がやったかは分からない」
穴倉圭「やっぱりその悪魔は・・・」
穴倉圭「サタンスポットから出て来たんですか?」
マヨルガ「そう・・・かもしれない」
穴倉圭「どうする事も出来ないとは分かっていても・・・ 何か責任を感じてしまいます」
マヨルガ「それは私の方が重い」
マヨルガ「私が箱から抜け出した直後に現場へ 向かっていれば・・・」
マヨルガ「やはり長いブランクが仇になってしまった」
マヨルガ「刀が完全に錆びていた・・・」
穴倉圭「凄えー!!」
〇アパートの台所
穴倉圭「このハーブ、いくら丁寧に育てても すぐ枯れてたんですけど」
穴倉圭「こんなに育っちゃいましたよ!」
穴倉圭「見た事無いキノコまで生えちゃってる!」
穴倉圭「パワー強すぎだっつーの!」
穴倉圭「マヨルガさん!ほら!見て見て!」
マヨルガ「ほうほう」
穴倉圭「もっと近づいて真上から見ると よく分かりますよ」
マヨルガ「どれどれ?」
マヨルガ「ほう、色合いは綺麗だ。匂いもする。 鑑賞に堪えるシロモノなんだろうな」
穴倉圭「・・・・・・」
マヨルガ「人間にとってこの植物は癒しの効果が あるのか?」
穴倉圭「・・・」
マヨルガ「まあ私には何の効果も無いが」
穴倉圭「・・・・・・」
マヨルガ「おい、聞いてんのか?」
穴倉圭「本当に鑑賞に堪えますわ」
穴倉圭「マヨルガさんの方がよっぽど癒しの効果 ありますわ」
マヨルガ「それが目的だったのか」
マヨルガ「たった今、事件の話でしんみりしてたのに」
マヨルガ「人が話している最中にしれーっと キッチンに移動し・・・」
マヨルガ「自然な感じを装って誘い込み、 舌の根も乾かぬうちに鼻の下を伸ばす」
穴倉圭「その膨れっ面も良いわあ」
マヨルガ「お前、悪魔だな」
穴倉圭「そのくらい図太くないとやってられないすよ」
〇二階建てアパート
〇玄関内
家主の澄江さん「はーい」
こんにちは。警察です。
家主の澄江さん「警察?何かしら?」
家主の澄江さん「あら、ハンサムねえ」
猪谷巡査「どうも。ちょっとお時間よろしいですか?」
家主の澄江さん「早くしてよ? 私の時間、限られてんだから」
猪谷巡査「この周辺の情報収集をしてまして ご協力をお願いしたいんですが」
家主の澄江さん「あ!こないだの暴行事件でしょ?」
猪谷巡査「すいません。詳細はお伝えできません」
家主の澄江さん「何よ水くさい。そんで?」
猪谷巡査「このアパートで不審な人物や異変に 気付かれた事などはありませんか?」
家主の澄江さん「そうねえ・・・うーん・・・」
家主の澄江さん「こないだ穴倉君が夜中に大声出したから 「おだまり!」って怒ったくらいかな」
猪谷巡査「穴倉さんという方は、他に不審な点は ありませんでしたか?」
家主の澄江さん「今んとこ、それくらいだわね」
猪谷巡査「了解です。 もし不審な事がありましたら、 遠慮なくこちらにご連絡してください」
家主の澄江さん「もう帰っちゃうの?」
猪谷巡査「ええ。まだ他にも情報収集に行かないと いけませんので」
家主の澄江さん「ここに連絡したら、話し相手になってくれるのかしら?」
猪谷巡査「いや、申し訳ないんですが、そのような 相談は受け付けておりません」
家主の澄江さん「じゃあ要らないわ」
猪谷巡査「えっ?」
家主の澄江さん「美尾羅警察でしょ? 番号くらい知ってるわよ」
猪谷巡査「了解です。お忙しいところご協力いただき ありがとうこざいました」
家主の澄江さん「それ嫌味?」
家主の澄江さん「別に忙しくな・・・」
家主の澄江さん「ちょっと! 最後まで聞きなさいよ!」
〇二階建てアパート
猪谷巡査「あの婆さんは、別件で何かありそうだな」
八代巡査「フフッ、確かに」
猪谷巡査「猪谷です。どうしました?」
猪谷巡査「了解しました。すぐ向かいます」
〇白
〇病室のベッド
マスター加賀「はっ!」
ナース南雲「加賀さん、聴こえますか?」
マスター加賀「ええ・・・私は何故ここへ?」
ナース南雲「あ、そのまま身体起こさないでください」
マスター加賀「確か店から出て、自宅へ帰るとこまでは 覚えているんですが・・・」
ナース南雲「そこまで覚えていたら大丈夫ですよ」
ナース南雲「今は余計なことを考えずにゆっくりと お休みになってください」
本間医師「加賀さん、頭の痛みはありますか?」
マスター加賀「・・・後頭部と首に鈍痛がします」
本間医師「加賀さん、そのままで良いんで、 手の指だけ閉じたり開いたり出来ます?」
本間医師「はい、結構です。順調に回復してますね」
マスター加賀「・・・」
本間医師「異常は無いですが、しばらくしたら CTを撮りますんで」
本間医師「それまでは、頭を動かさずにゆっくり お休みになってくださいね」
ナース南雲「何か御用がありましたら」
ナース南雲「こちらのボタンを押してくだされば いつでも来ますからね」
マスター加賀「・・・はい」
〇アーケード商店街
───────1週間後──────
〇繁華な通り
猪谷巡査「穴倉さんですね?」
猪谷巡査「美尾羅警察の猪谷です」
穴倉圭「あ、こないだの?」
猪谷巡査「ちょっとお伺いしたい事があるんですが、 ご協力いただけますか?」
〇警察署の入口
〇取調室
新沼刑事「引っ越しを終えた後、 この喫茶店に行きましたね?」
穴倉圭「ええ。行きました」
新沼刑事「なぜ、トマトジュースを頼んだんですか?」
穴倉圭「何故って、それしか無かったんで」
新沼刑事「それに対して憤りはありませんでしたか?」
穴倉圭「憤り?そりゃコーヒー飲みたかったんで 残念ではありましたけど」
穴倉圭「そんな事で憤るほどバカじゃないですよ」
新沼刑事「実はですね、周辺情報をもとにリストアップした疑いのある人物の写真を」
新沼刑事「加賀さんに見て頂いたんですが・・・」
〇病室のベッド
新沼刑事「こちらの人物ですか?」
マスター加賀「うーん・・・違います」
新沼刑事「ではこちらは?」
マスター加賀「違いますね」
新沼刑事「こちらは?」
マスター加賀「そいつだ!!」
〇取調室
穴倉圭「そんなわけないでしょ!?」
穴倉圭「そもそも加賀さんは、まだ頭を怪我されてる状態でしょ?」
穴倉圭「記憶に正確性があるんですか?」
新沼刑事「CT検査の結果、脳波の異常や記憶障害などは見られませんでした」
新沼刑事「その加賀さんがあなたの写真を見て、 尋常じゃない反応をしめしたんですよ」
穴倉圭(加賀さん、どうしたんだろ・・・?)
新沼刑事「穴倉さん。いや、穴倉!」
新沼刑事「素直に吐いたらどうだ? え?コラ?お?なあ?お前よお?」
〇秘密基地のモニタールーム
三笠警部補「先生、穴倉の供述に何か感じるものは、 ありますか?」
心理学者 沼尾「彼は多重人格だな」
三笠警部補「どの辺でそれが垣間見えましたか?」
心理学者 沼尾「やけに落ち着いた物言いだが、 表情と目の挙動がおかしい」
心理学者 沼尾「普段は穏やかだが、ちょっとした歯車の 違いで凶変するタイプだ」
心理学者 沼尾「自分の欲求が満たされなかったストレスが 後からどんどん増幅していくと」
心理学者 沼尾「凶暴な人格に変わり、一線を越えてしまう」
心理学者 沼尾「記憶が飛んだ状態で実行してしまうから 本人も気づいてない可能性が高いね」
三笠警部補「なるほど」
〇取調室
新沼刑事「吐けオラッ!!てめえがやったんだろ!!」
穴倉圭「だから、やってないって言ってるでしょ!」
スピーシー「奴に憑依して自白させてやる!」
スピーシー「その後、暴れ倒せば業務完了だ!」
スピーシー「ダメだ!!邪気が強くて入れない!!」
スピーシー「こ、こいつ何もんだ!?」
八代巡査「警部!!加賀さんを襲ったという男が 出頭してきました!!」
新沼刑事「え!?」
〇作戦会議室
青田「知り合いに闇バイトを紹介されて、 あの店のマスターを襲撃すれば」
青田「20万即入金してもらえるって・・・」
土橋刑事「何の躊躇もなくやったのか?」
青田「いや、途中で身体が震えて辞めようと 思ったんすけど、」
青田「フッと憎悪に変わって気が付いたら 金槌で・・・」
土橋刑事「マスターと君に関わりは?」
青田「全くないです」
土橋刑事「なぜ憎悪に変わったんだ?」
青田「それが・・・自分でも分からないんです」
〇取調室
新沼刑事「なるほど、ふん、ふん・・・そう来ましたか」
新沼刑事「穴倉さん」
新沼刑事「きょ、今日のところはとりあえず、 お引き取り頂いて結構ですよ!」
新沼刑事「ご足労お掛けしてすいません」
新沼刑事「おい、八代!」
八代巡査「はい!」
新沼刑事「スポーツ観戦のチケットをお渡ししろ」
八代巡査「穴倉さん、どうぞ!」
穴倉圭「要らねーよ!!」
〇秘密基地のモニタールーム
心理学者 沼尾「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
心理学者 沼尾「初めて統計が外れたわ」
三笠警部補(このインチキ親父が!)
〇整頓された部屋
マヨルガ「何しれーっと魔界に帰ろうとしてんの? 帰さないよ?」
スピーシー「わ、我は魔界の門番!!」
マヨルガ「門番なら魔界の入口に立つでしょ 現世に飛び出すなよ」
スピーシー「う、うるせえ!!」
マヨルガ「お前だろ? マスター殴った人に取り憑いたヤツ」
スピーシー「ああ、そうだ! 不安定でムシャクシャした野郎が ヒットマンをやるはずが、」
スピーシー「意気地がねえから後押ししてやったんだ!!」
マヨルガ「葬りきる力が無いアンタも 5流の悪魔だけどな」
スピーシー「な、な、何だってえ!? て、て、て、て、てめえ消されてえか!!」
マヨルガ「私を消せる奴がサタンスポットに 忍び足で入らねえだろ、このコソ泥め」
スピーシー「チキショー!!!」
スピーシー「クソッ!!」
マヨルガ「先ずドタマの皿をカチ割ってと」
マヨルガ「爪を食って、残りは後で煎じてと」
マヨルガ「サミング100連発でフィニッシュ!」
マヨルガ「なぜ人間に憑依した?」
スピーシー「ただ・・・契約を・・・実行したまで・・・」
マヨルガ「滅する前に1つねぎらってやる」
マヨルガ「アンタじゃ役不足だったね」
スピーシー「この・・鬼め・・」
マヨルガ「最後に「この悪魔め」と言わなかった 所だけ、悪魔の矜持を守ったね」
マヨルガ「まあザコには変わりないけど」
穴倉圭「疲れた〜」
穴倉圭「おうマヨ、ただいま〜 今日大変な事があってさあ」
マヨルガ「こっちも大変だったわ」
穴倉圭「え?何かあったの?」
マヨルガ「とりあえずサタンスポットには、 もっと良い塩を盛れ」
マヨルガ「聖水も雑誌の広告のやつで済ますな」
穴倉圭「聖水ってさあ、オシ○コでも良いのかな? んなわけねーか?」
穴倉圭「えっ!?な、なに今の!?」
マヨルガ「お前なんかいつでも消せるんだからな そこ肝に銘じとけ」
穴倉圭「すいませんした!!!!!」
〇おんぼろの民宿
〇狭い畳部屋
総裁「箱もみつからない。 加賀の襲撃は失敗する」
総裁「どうなってるのかなあ・・・?」
幹部B「契約違反では無いか?と 魔界の方へ通達しましたが」
幹部B「意識が戻った加賀に取り憑いて、 無実の男を犯人だと言わせた」
幹部B「スピーシーの判断を評価すべきと 言っておりました」
総裁「でも結局、失敗したじゃない」
総裁「ほら、魔脳岩が全然反応してない。 スピーシーは消えたね」
幹部B「向こうサイドはスピーシーは 消えてないと突っぱねてます」
幹部A「やはり使者がスピーシーを 消した可能性が高いかと」
総裁「じゃあ、使者と裏切り者を 葬るしかないね」
───────つづく───────
〇海辺
第2話「犯人は奴だ!いやそうとも限らない事は否めない」
私、肝の座ったやり手のお婆さんキャラが凄く好きなんですけど澄江さん出てくるとテンション上がりますね
いくら顔のいい男が来ても断る時はずばって言うところとか(笑)
事件はやはり悪魔の仕業、これからもどんどん巻き込まれそうですね
マスター生きてて良かった!
穴倉君の飄々とした感じスゴイ好きだし、彼のおかげでお話がポップになって読みやすいですね
独特のセンスがクセになります。
最後のアストロベルトのシーン。
時々会話が成立する胃脳グループみたいな作品を見ている錯覚に陥ります。
この状況でのうのうと生きている宍倉くんはやっぱりかなり図太いというか、おかしな人ですね。読む分には楽しいです。
そういえばキッチンから宍倉くんが呼ぶ吹き出しですが、
作成画面で台詞ボタン、右上の登場キャラ以外を選択…ってやると、任意のキャラの台詞挿入できます。
敵方の存在も見え、ストーリーに緊張感が出てきて目が離せませんね!
それと、冒頭のゴルゴンが言ったことが気になりますww そして聖水www