山手線で待ち合わせ(脚本)
〇可愛らしい部屋
山手線で待ち合わせ
エリ「って、よくよく考えなくても山手線には終点がないじゃない!!」
今春上京した幼なじみのマリとの約束後、盛大に気付く失敗──
今までマリと遊ぶ時、利用する路線の関係で目的地が終点になるケースが多かった
そのため路線名さえ告げれば、目的地は終点だと暗黙の了解で伝わっていた
思わず、今までと同じノリで約束したわけだけど・・・
山手線は環状線!!
明確な終点がないということに!!!!
エリ「はあ、参ったなあ・・・」
勿論、マリの連絡先は把握している
何ならSNSのアカウントも・・・!!
だけど、マリは基本的にスマートフォンもSNSも放置──
簡単に連絡が付かないと知っているから頭が痛いわけで・・・
エリ(当日、落ち合えなければ・・・マリだって、スマートフォンを確認するはずだけど)
そこまで先延ばしにしたくない──
〇渋谷の雑踏
エリ「そもそも東京にはるばる会いに行くのよ!!」
エリ(地元で遊ぶような時間的余裕はないわけで・・・)
エリ(避けることが可能なことは、全力で回避したいというか・・・)
〇可愛らしい部屋
エリ「そう言えば・・・」
エリ「私以上にマリは無駄な時間を忌み嫌っていたっけ・・・」
昼寝をしたり、推理小説を読んだり、ボーッと過ごすことは好むけど
無駄な時間を誰よりも嫌悪しているんだよね・・・
そもそも下らない用件に振り回されて、無駄な時間を費やしたくない省エネ気質が発端で
マリのスマートフォンやSNSの放置が日常化したわけで・・・
エリ(つまり、逆説的に考えると『山手線で待ち合わせ』というフレーズだけで)
エリ「落ち合うべき場所が暗示されているはず!!」
エリ(そうなると・・・)
エリ「マリがボーッと止まり続けても苦ではない駅を当てるか」
エリ(もしくは・・・)
エリ「推理小説好きなマリの謎を推理して、待ち合わせの駅を当てる」
エリ(この二択なら・・・きっと・・・)
エリ「待ち合わせの駅は謎解き形式のはず!!」
〇可愛らしい部屋
思い立ったら即行動
手元の端末を用いて、おもむろに山手線の駅名を検索する
候補は──29駅
エリ(・・・目白、池袋、高田馬場・・・)
地元にずっと住み続けている私でも街のイメージが浮かびやすい名前もあれば
イメージが浮かびにくい名前もある
エリ(・・・新宿、代々木、原宿・・・)
ボーッと駅名を眺めていると、ふと気付く
エリ「止まるべき、駅名を・・・!!」
〇ハチ公前
エリ「マリ!! 久しぶり!!」
マリ「──エリ!?」
マリ「てか、めちゃくちゃ着くの早かったねー」
エリ「当たり前じゃない。めちゃくちゃ考えまくったんだから!!」
今、私たちが落ち合っている場所は渋谷駅
ところで、マリが伝えたかった全貌は────こういうことだ
山手線で待ち合わせ
前述の通り、山手線の駅であることは前提条件
しかし──山手線で止まることを示唆する駅名なんて一切ない
そこで注目すべき点は『渋谷』のみ『止』というパーツが含まれていること
というわけで、私は渋谷駅に狙いを定めて下車したわけだ
下車すべき駅の目星さえ付けば──あっという間だ
マリはモデル顔負けの高身長
──見つけるのは、楽勝だった
〇SHIBUYA109
マリ「ボーッと止まり続けても苦ではない駅だとは考えなかったの?」
移動しながら二択まで絞った話をしている最中、不意にマリがツッコミを入れてくる
エリ「あはは・・・その可能性は即、除外したなあ」
マリ「え・・・どうして?」
キョトンとしているマリに向けて、私は笑顔で返していく
エリ「だって、昔から遊ぶ時は二人とも楽しめることじゃないとマリはチョイスしないもの」
エリ「ずっと地元に住んでいて東京の土地感が一切ない私相手に」
エリ「困惑するような謎を盛り込むタイプじゃないと幼なじみとして断言できるもの!!」
エリ「というわけで、マリ」
エリ「渋谷の案内、よろしくね!!」
マリ「!!」
マリ「勿論だよ!!」
私たちの再会は、まだ始まったばかり──
スッキリと最後まで読み進めていきました。謎解きって、人を引き込むし、爽快感があって、気持ちいいです。
「止」という字があるから「渋谷」というのに
なるほどと思いました😊
スマホとかがあって当たり前の世の中に、この遊び心がとても新鮮でした😌
SNSや携帯電話(ポケベルも含む)が無かった時代は固定電話や文通で待ち合わせをしていた頃、こういう謎解きで待ち合わせしていた人も多そう笑
友人との信頼関係があってこそでした!