悪魔さんと天使のゆる~異日常

ヨリミチ

エピソード9(脚本)

悪魔さんと天使のゆる~異日常

ヨリミチ

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〇西洋の城
  数か月前の天界

〇上官の部屋
天使さん「・・・やっと昨日の分が終わりましたか」
天使さん「さて、今日の分を・・・」
  コンコン
天使さん「どうぞお入りください」
一般天使「失礼いたします大天使様!」
一般天使「追加の執務を持ってまいりました! 新規の死者リストと出生リスト、悪魔共からの地上明け渡し要求書諸々です!」
天使さん「・・・最近仕事が多くないですか? 天国行きの人間以外のリストは省いてありますこれ?」
一般天使「・・・大天使様なら全能だから一瞬だとお噂はかねがね! それでは私は訓練の時間がありますので、失礼いたします!!」
天使さん「・・・つらい」

〇見晴らしのいい公園
天使さん「そういうわけで私は仕事を放り投げて地上に逃げてきたのです。その時に翼を少し痛めて・・・今は完治しましたけどね」
エルエル「うう、大天使様がそこまで追いつめられていたなんて・・・」
悪魔さん「被害者面してるけど、あんたが天使の代わりに仕事すればよかったんじゃ?」
  てか、私の落とし穴で翼を痛めたっていうのは嘘だったってこと? 居候させなきゃよかった
エルエル「何を言うこの悪魔! 大天使様は全能のお方! その大天使様のお仕事を奪うとはつまり、大天使様を愚弄するのと同じです!」
悪魔さん「あっぶないわね! 当たったらどうすんのよ!!」
エルエル「ちっ!」
天使さん「は、ははは・・・。上司を立てるのが天界のルールですからねしょうがないですよね・・・」
  天界とんだブラック企業だわ・・・
  そりゃ天使も逃げ出すでしょうに
エルエル「さあ、大天使様! 天界に戻りましょう!  実を言うと私は大天使様を連れ戻すように遣わされた使者なのです!」
エルエル「皆大天使様のお帰りを今か今かと待っております! 勿論溜まった書類には手を付けてはおりませぬ!」
悪魔さん「いや、そこはせめてやっておいてあげなさいよ・・・」
悪魔さん「って! 待って待って! あんた天使を連れ帰るつもり?」
エルエル「ちょうど今宵は満月で、天界に続く月のカーテンが降りてくる日です。いくら大天使様でも天界まで飛んでは帰れませんからね」
  エルエルは何か問題でも?と言わんばかり
悪魔さん「い、いや、天界の問題だし、私が口挟むことじゃないけど、えっと・・・なんてか」
  なんか可哀想とか、急すぎるとか、天井ぶっ壊したのどうすんだとか、言いたいことが頭の中をめぐり出てきた言葉は──
悪魔さん「て、天使はどうなのよ? 実際もう帰りたいの?」
  それだった
天使さん「えっ? そ、それは勿論──」
  まあ、いくらブラックでもやっぱり故郷は恋しいか・・・
  そうよね、私も地獄に帰りたいし
天使さん「・・・まだ、帰りたくありません」
天使さん「できることならもう少しだけ、悪魔さんと一緒に──」
エルエル「いやいや大天使様! 何言ってるんですか? 業務も溜まってますし帰らなくては!! それに──」
  エルエルは私を指さした
エルエル「悪魔と天使は敵同士です! 一緒にいたら何をされるかわかりませんよ!!」
  エルエルの言葉はごもっとも。
  私も悪魔の力を取り戻そうとさんざん天使を敵対視してきたじゃないか
天使さん「あ、アクマさんはそんな方では!」
悪魔さん「エルエルの言う通りだわ。 帰んなさいよ天使」
天使さん「えっ・・・」
悪魔さん「そもそも迷惑だったのよね 私は悪魔の力を取り戻したいってのに邪魔ばっかするんだもの」
天使さん「あ、アクマさん?」
悪魔さん「もう悪魔の力は戻ったし、今までの事は大目に見てあげる。目障りだから帰って」
天使さん「そ、それがアクマさんの本心なのですか?」
悪魔さん「そうよ? なんならいつもみたいに心を読んでみれば?」
天使さん「・・・」
天使さん「そう、ですね・・・私、目障りでしたよね。ごめんなさい」
天使さん「エルエル行きましょう」
エルエル「だ、大天使様! 月のカーテンが降りてくるまではまだ時間があるのでどこかで時間を潰さないと!!」
  二人の背中が遠くなっていく
悪魔さん「さて、私も今日バイト辞めるって店長に言わないとね・・・」

〇ケーキ屋
店長「いらっしゃいませー!!」
店長「・・・」
店長「おい」
悪魔さん「あ、いらっしゃ~ませ~」
店長「てめえ、今日が最後って言ってその覇気のなさはどういうことだ?」
悪魔さん「あ、だ、大丈夫です店長! 私ちゃんと働きますか──」
  持っていたお皿がツルっと滑った

〇店の休憩室
  最後のバイトが終わった
店長「ほれ、給料」
悪魔さん「いままでお世話になりました店長」
店長「・・・ああ、急な転校じゃしかたねぇからな」
店長「まあ、次はお前よりも仕事ができる奴を雇うさ。天子ちゃんみたいな、な」
店長「ああ、仕事中ずっと元気なかったからまさかとは思ったがよぉ。お前また天子ちゃんと喧嘩でもしたのか?」
  店長は面倒くさそうに煙草の煙を吐き出す
悪魔さん「そ、そんなんじゃ・・・」
店長「たっく、最後の最後までわかりやすい奴だなおめえは。よしみだ。聞いてやるから話してみな」
悪魔さん「い、いえ、ほんと喧嘩ってわけじゃ・・・」
店長「そうかい。ま、ぶつかり合いなんざ友達ならよくあるこった。俺が言えることは一つ。転校する前にきちんとだな──」
悪魔さん「あいつと私は友達なんかじゃ!!」
店長「何言ってんだおめぇは? 鏡見て見ろ、ほれ」
  促されて鏡をのぞき込むと、ふてくされたような顔の私が映っていた
店長「友達だと思ってなきゃそんな顔しねぇよ。どうでもいい奴の事なんかでいちいち悩まねーんだよ人間は」
悪魔さん「・・・店長」
悪魔さん「そっか、人間って・・・ 友達ってそういうものなのね・・・」
悪魔さん「ありがとうハゲ店長! おかげで私ちょっとわかったかも!!」
店長「・・・殺すぞ?」

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