救命王子

山本律磨

過(脚本)

救命王子

山本律磨

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〇海水浴場
田町「はい!中年男性が一人第3ブロックです!救助隊宜しくお願いします!」
海斗「田町!」
田町「海斗さん!」
海斗「大倉が行ってるのか!一人で!」
田町「海斗さん!ボートを!」
海斗「浅瀬なら戻って来れる!それより、救命の用意だ!」
田町「はい!」
海斗「・・・」

〇海辺
大倉「大丈夫です!意識ははっきりしています!」
大倉「宜しくお願いします!」

〇海水浴場
島木「う~む。見事なチームワーク」
島木「いやいや。彼らには助けられっぱなしだね」
砂原「そんな弱気でどうすんです。団長」
島木「お前さ、少しは協調性ってものを持とうぜ」
砂原「団長こそ、日ヶ岬青年団の心意気忘れてんじゃねえっすか?」
島木「若いのに頭硬いね。仲良くやろうよ」
島木「短い夏を明るく楽しくってね」
  『大倉!』
大倉「・・・ってえな」
海斗「どうして一人で動いた。何故すぐ報告しなかった」
大倉「俺の方が近かったからっすよ。それにいちいち報告してる時間なんか・・・」
海斗「俺が走っても一分とかからない」
大倉「その一分が命取りなんじゃないっすか!」
大倉「王子サマの顔色伺ってる場合じゃなかったんすよ」
海斗「何だと?」
田町「大倉!調子に乗ってんじゃねえぞ!」
大倉「・・・」
田町「海斗さんも・・・大倉を見くびりすぎです」
海斗「・・・」
砂原「なんだなんだ?仲間割れか?」
砂原「手柄の取り合いとはみっともねーな」
島木「おい。失礼だぞ」
砂原「これが王子の本性なんですよ。こいつは結局目立ってチヤホヤされたいだけなんです」
島木「砂原!」
海斗「・・・いえ」
海斗「彼の言う通りです」
海斗「悪かった」
大倉「いえ、俺も調子に乗ってました」
海斗「監視に戻る・・・ゆっくり休んでくれ」
海斗「休むことも仕事だろ」
「・・・」
晴香「素敵」
大倉「相変わらず暇そうだね」

〇海辺
  日ヶ岬青年団・TLC親睦会
砂原「よう」
砂原「その、あれだ。あんま気にすんなよ」
砂原「アンタの判断は正しかったと思うぜ」
大倉「いえ、イキッてたのは事実ですし」
大倉「自分一人で助けられるって、タカくくってました」
砂原「いや、チヤホヤされてえとか。別にアンタに言った訳じゃなくて」
砂原「そうだよ!アイツどこだ?アンタの代わりに殴り返してやる!」
大倉「ははっ。多分、まだ仕事してますよ。日誌書いたりとか」
砂原「チッ、そういう所だ。いつもムスッとしてて皆の夏の為に人生捧げてますみたいな」
砂原「気に入らねえんだよ。そういう態度」
大倉「まあ、僕からは何とも・・・」
砂原「気に入らねえ・・・」

〇テントの中
海斗「ふう。そろそろ帰るか」
海斗「救命王子・・・」
  「これが王子の本性なんですよ。こいつは結局目立ってチヤホヤされたいだけなんです』
海斗「・・・そうだ」
海斗「俺は変わってない」
海斗「あの頃から、全く」

〇海辺
  『聖美!しっかりしろ!』
  『聖美!聖美!』
  『なんでだ・・・』
  『なんで人を呼ばなかった・・・』
  『聖美が死んだら・・・俺は・・・』
  『起きろ・・・』
  『起きろ!』
  『離れて下さい!彼も運ばないと・・・』
海斗「・・・直哉」
  『許さねえ・・・』
直哉「お前だけは許さねえぞ!海斗!」

〇テントの中
海斗「・・・」
  『海斗』
  『聞こえてるか?』
  『俺はお前を許さない」
  『聖美もお前を許さない』
  『聞こえてるか?』
  『聞こえてるか?』
海斗「ああ、聞こえてる」
海斗「聞こえてるさ。直哉」
  続く

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