GAZE ON

戸羽らい

#2 dawn(脚本)

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〇貴族の部屋
ロゼ「私は・・・」
ロゼ「誰かに見てもらいたくて・・・それで」
シェリル「それで?」
ロゼ「私の存在意義は、誰かに承認してもらうことで・・・」
ロゼ「みんなから忘れられたら、私が私じゃなくなる・・・」
土田 文香「わ、私も嫌です!」
土田 文香「ロゼ様を忘れちゃうなんて!」
土田 文香「ロゼ様は私にとって・・・生きる理由でもあるんです」
土田 文香「やめてください・・・そんなの」
ロゼ「文香!」
土田 文香「ロゼ様・・・」
ロゼ「お願いします。本当にそれだけは」
シェリル「貴方たち、何か勘違いしてない?」
シェリル「これはゲームよ。相手の嫌がることをするのは当たり前じゃない」
シェリル「自分にはできて、相手にはできないことをする」
シェリル「これまでだって、そういうふうにプレイしてきたじゃない」
土田 文香「・・・」
土田 文香「貴方は怖くないんですか?」
土田 文香「人に忘れられるのが」
シェリル「怖がる必要がどこにあるのかしら」
シェリル「私たち吸血鬼はね、本来日陰者なのよ」
シェリル「目立たないところでひっそりと、植物のように生きるべきなの」
ロゼ「私は嫌だ・・・そんなの」
ロゼ「愛されたい・・・人間たちのように、人生を謳歌したい・・・」
土田 文香「シェリルさんって、寂しいんですね」
シェリル「寂しい?」
土田 文香「はい。友人の一人でもいたら、そんな発想にならないと思うので」
シェリル「そうね」
シェリル「私は寂しい存在かもしれない」
シェリル「・・・で、飲むのかしら?飲まないのかしら?」
  そんなに忘れられたくないなら
  自身の命と引き換えに
  「皆の心の中に生き続ける」なんて選択も、ロマンがあると思うけれど
ロゼ「う・・・う・・・」
土田 文香「ロゼ様・・・」
ロゼ「の・・・」
ロゼ「の、飲みましゅう・・・!」
土田 文香「えっ」
ロゼ「私、死にたくない・・・!」
ロゼ「死ぬくらいなら・・・忘れられてもいい!」
ロゼ「あっあっ・・・!」
ロゼ「ああっあああああっ・・・!」

〇貴族の部屋
  その泣き顔はとても無様で
  情けなくて、嗜虐心をそそられて
  目に焼き付けたいほどに、綺麗でした
  きっと私は、ロゼ様がロゼ様である限り
  彼女の全てを愛してしまうんだと思います
  嗚呼、忘れたくありません
  どうか、私の脳の片隅に、彼女の泣き顔を保存できないでしょうか

〇貴族の部屋
土田 文香「ロゼ様・・・」
ロゼ「う・・・うぅ・・・」
シェリル「成立ね」
シェリル「ハトリ」
ハトリ「はい」
シェリル「─────」
ハトリ「─────」
土田 文香「・・・」

〇白

〇川沿いの公園
  GAZE ON
  episode 2
  「dawn」
土田 文香「はあ」
  どうやら、私は3ヶ月ほど行方不明だったらしい
  何故だか、その間の記憶が全くない
土田 文香「仕事はクビになるし、どうしたものか」
土田 文香「こんな時、推しがいれば・・・」
土田 文香「・・・」
土田 文香「推し、かあ」
土田 文香「なんか、ビビッと来る人いないかなあ」
土田 文香「・・・」
土田 文香「はあ・・・」
土田 文香「わっ」
土田 文香「も、もしもし・・・」
  こんにちは、文香さん
土田 文香「誰ですか?」
  名乗るほどの者じゃないわ
土田 文香「・・・切りますね」
  ちょっ、切らないで
土田 文香「何ですか?」
  私、貴方が困ってると思って
  少しばかり、資金援助を
土田 文香「お金くれるんですか?」
  詳しくは近くのファミレスで──
土田 文香「─────」
土田 文香「なんだか怪しいけど、まあいいか」

〇ファミリーレストランの店内
土田 文香「・・・」
シェリル「文香さん、こっちこっち」
土田 文香「あの、貴方がお金くれる人ですか?」
シェリル「・・・?そんなこと言ったかしら?」

〇ファミリーレストランの店内
  『胡散臭い人』
  それが彼女の第一印象でした

〇ファミリーレストランの店内
土田 文香「帰りますね」
シェリル「待って!帰らないで!」
土田 文香「宗教の勧誘とかですか?」
土田 文香「ごめんなさい、私あまり信心深くないので」
シェリル「私を信仰してみない?」
土田 文香「結構です」
シェリル「・・・じゃなくて、貴方と友達になりたいの!」
土田 文香「え?」
シェリル「私、友達いなくて。寂しい毎日を過ごしてるのよ・・・」
土田 文香「お金くれたら友達になりますよ」
土田 文香「何ですかこれ」
シェリル「お宝よ。きっと高く売れるわ」
土田 文香「貰っておきます」
シェリル「じゃあ私たちは友達ということで」
シェリル「私はシェリル。シェリーと呼んでもいいわよ」
土田 文香「シェリーさん、ですか」
シェリル「ねえねえ!」
シェリル「さっそく今夜、遊びに行きましょう」
土田 文香「えぇ」
シェリル「警戒しなくていいわ!」
シェリル「安心安全で、とっても楽しいところなの!」
土田 文香「やっぱり胡散臭いですね」
土田 文香「行きます」
シェリル「ふふふっ」

〇繁華な通り

〇繁華な通り

〇豪華な客間
  ──────♪
  ───────♪
サリア「今宵も、月が綺麗です」
「あら、貴方には幻が見えているのかしら」
シェリル「今夜の月は雲に隠れているわよ」
サリア「それは貴方の心が曇っている証です」
サリア「きっと無意識に、見たくないものから目を背けているのでしょう」
シェリル「あら、自己紹介がお上手なのね」
土田 文香「えーと、何ですかこれ?」
シェリル「ふふ、これから私はこの人と遊ぶの」
シェリル「よーく、見届けてちょうだい」
サリア「人間と戯れるなんて、堕ちるとこまで堕ちましたか」
シェリル「あら、貴方は吸血鬼に誇りを感じているタイプかしら?」
サリア「当然でしょう。我々は夜を統べる気高き種族」
サリア「人間とは「品格」が違うのです」
シェリル「貴方の「品格」を潰してしまうのは気が引けるけれど・・・」
シェリル「今夜も楽しいゲームになると思うわ」
土田 文香「吸血鬼って何?」
土田 文香「中二病・・・?」
ベアル「お集まり頂きありがとうございます」
ベアル「この場を担当するベアルと申します」
ベアル「今宵、開催するゲームは」

次のエピソード:#3 blind

コメント

  • 自分の狂気を人が判読できるレベルに落としこむと狂気が薄れる…。芸術家ですね。発想の根っこが逆なんですね

  • 著者コメントで吹きました笑

    シェリル、寿命千年取られてもピンピンしてるな……
    吸血鬼として格の次元が違いすぎる

  • 思わず笑っちゃったりして、何より続きがすごい気になる良い作品…

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