読切(脚本)
〇神社の石段
子供の頃
渋谷に住んでた婆ちゃんが
こんな話をした
婆ちゃん「カツミ 渋谷道玄坂の 人喰い松 知っとるかい」
カツミ「何それー!」
婆ちゃん「昔、区画整理で道玄坂の松の大木を 切ろうとすると 怪我人が次々でてね 「道玄坂の人喰い松」と呼ばれたんだと」
婆ちゃん「お前も 気を付けるんだよ もう松の呪いは解かれて 神社に祠があるだけだがね・・・」
婆ちゃん「あの坂へ行くとね おかしな世界へ引きずり込まれるのさ」
カツミ「うわーん! 怖いー!」
〇神社の石段
婆ちゃん「おやおや雨だ 怖がらせて 悪かったね」
婆ちゃん「渋谷はね 竜神様がいるから 大丈夫だよ」
カツミ「ぐすん 竜神様?」
婆ちゃん「雨で、厄を洗い流してくれるのさ さ、帰ろう カツミの好きなドーナツ買ってあげるよ」
カツミ「そっか!竜神様すごい! やったー♪ ドーナツ!」
怖がるアタシを気遣ってか
「人喰い松」の話を聞いたのは
その一度きりだった
〇渋谷駅前
ー現在
渋谷駅前
カツミ「えっへぇ 渋谷まで来た甲斐あったぜ!」
カツミ「3時間並んで買ったドーナツ! やっば!匂いからしてうまそ~!」
カツミ「SNSで自慢だな ドーナツはここに置いて 携帯・・・携帯、どこいった?」
着物の男「弱った! これは弱った! 腹が減っては戦はできぬ!」
着物の男「なにやら ただならぬ匂い! なんだあの穴の開いた菓子は!?」
着物の男「いやいや 俗世の穢れた食い物など 我の口には合わん!」
着物の男「しかし・・・これは・・・何と言うか・・・ ゴクッ・・・ ・・・バクバク!」
カツミ「ん?アタシのドーナツは?」
カツミ「うわぁぁあ! 嘘だよな!? 大人がアタシのドーナツ食ってる!」
着物の男「む! もごもご むぐmぐg ・・・キリッ(`・ω・´)b」
カツミ(うっげ! 何だこいつ? 新手の痴漢か?)
着物の男「我は! お前を! 愛している!」
カツミ(やっぱ痴漢だ! アクロバティックな痴漢!)
着物の男「そうゆうことだ 我は時間がない! 然らば御免!」
カツミ「おいアタシのドーナツ! ちょっと!お巡りさーん! くっそ、待てー!」
〇ハチ公前
カツミ「アイツどこ行きやがった!!?」
〇渋谷駅前
〇道玄坂
カツミ「まぢでいねー!」
〇道玄坂
カツミ「? 急に暗くなったぞ! それに人がいない!」
着物の男「!?なぜここに! お前も我を愛しているから ついて来たのか?」
カツミ「あ、愛してる?(やっぱ痴漢だ!) てか、アンタがあたしのドーナツ 食ったからだろ!」
着物の男「おお~ど!う!な!つ! と言うのか! あの穴の開いた菓子は!」
着物の男「娘! 名は!?」
カツミ「アンタみたいな痴漢に 誰が言うか!」
妖「ギシャーー!」
着物の男「娘!こっちだ!」
「ちょっと!手引っ張らないで!」
〇SHIBUYA109
着物の男「無事か」
カツミ「うん なんで助けてくれたの」
着物の男「良い人間は守る! それに 我はお前を愛していると言ったろう」
カツミ「・・・おっさん、やっぱ変だわ(笑) アタシはカツミ ここで何してんの? 皆どこ行ったの?」
着物の男「ここは人間が踏み入れぬ土地よ 妖気が溜まると、巨大な呪い松が生えて悪さをする だから掃除だ」
着物の男「しかし、弱ったな 我が目覚めるのは久々だ 雨が降らぬと力が出せん」
カツミ「もしかして あそこに生えてるでっかい松の木? ドーナツ屋は無事か!!?」
着物の男「おい危険だ! 行くな!」
〇渋谷のスクランブル交差点
カツミ「なんだあれ! 渋谷のスクランブル交差点に でっかい松が生えてる!」
着物の男「カツミにも見えるか ありゃあ 人喰い松だ 妖を生むぞ」
妖「ギシャー!」
着物の男「危ない!かつみ!」
着物の男「・・・うぐ!」
カツミ「おっさん!」
着物の男「やはり・・・ 雨が降らぬと力が出せぬ」
カツミ「アタシを庇っておっさんが! おい!大丈夫か!」
「ギシャー!」
カツミ「ごめん、アタシのせいだ・・・ うぐ・・・ウっ」
カツミ「うわーーーーーん! うわーーーーーーーん!」
〇渋谷のスクランブル交差点
「グギャー!」
〇渋谷のスクランブル交差点
竜神「カツミぃ!無事か! 泣くな泣くな! 我はここよ!」
カツミ「え? おっさん?」
竜神「聞け!我は渋谷の地を守る竜神! お前の雨を降らせる力で本来の姿に戻れた!」
カツミ「アタシの力?」
竜神「我に気に入られた人間は 竜神の加護を受けるのだ」
竜神「小さい頃から祖母と熱心に 我の神社へ参拝に来ていたな 見ていたぞ」
カツミ「あの 婆ちゃんとよく散歩した 神社か!」
「ギシャー!」
カツミ「松から化け物がどんどん出てくる!」
竜神「埒が明かん! 一気に松の木ごと洗い流すぞ!」
〇渋谷のスクランブル交差点
竜神「さらばだ! カツミ! またいつか!」
〇渋谷のスクランブル交差点
カツミ「は? えっちょ・・・! やりすぎ・・・!」
〇渋谷のスクランブル交差点
〇温泉の湧いた渋谷
ブッシューーーー!
〇温泉の湧いた渋谷
通行人「うわぁ~! 何だあの穴!? というか、温泉が出てるのか!?」
カツミ「う~ん・・・ どうなった? 竜神は!?」
警察官「危ないから下がって! 突然渋谷スクランブルのど真ん中に 大穴が空いて、 温泉が噴き出てるんだ!」
カツミ「え! 突然? いや、あの穴は・・・」
カツミには
あの穴が
大きな松の木を根本から無理やり
引っこ抜いた跡に見えてならなかった
〇神社の石段
北谷稲荷神社
カツミ「竜神が祀られてんのはこの神社だな」
カツミ「(手を合わせて) こん前はありがとね・・・!」
着物の男「はっはっは! また、いつでも来い! どうなつ待ってるぞ!」
カツミ「? 何か聞こえたような」
カツミ「気のせいか! っしゃ!チーズの専門店でも寄ってくか!」
人混みに紛れ妖気が漂う
不思議な伝説が根付く街、渋谷
訪れた折には、竜神様にご挨拶を
ダイレクトに心を打つステキな物語ですね!他作品でも感じることなのですが、キャラクターのセリフ回しが巧みで、そのまま音声化しても受け入れやすい心地よい口語なので、スッと入ってきますね。会話ベースで組み上げられたストーリーって、TapNovelとの相性が良いですよね!
竜神様、強いだけでなくてちょっと天然の魅力的なキャラでした。昔から伝わる伝承、伝説を現代ストーリーにするのは難しいところもあると思いますが、とても楽しいお話でした。
渋谷にも寺社や言われがあって、不思議とそういう話に接したり、小さい頃の思い出と交わった記憶がふるさとを感じる元になったりするんじゃないかなぁと思うんです。昔話風のお話にしたかったので参考になりました。また、龍の映像も、色々と参考になりました、感謝。