GAZE ON

戸羽らい

#1 in a dream(脚本)

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〇地下の部屋
  人生の主役は私じゃない

〇地下の部屋

〇地下に続く階段

〇非常階段

〇山奥の研究所
ロゼ「今日の相手はちょっと手強いかもね〜」
土田 文香「強いんですか?」
ロゼ「相当強いらしいよ〜」
ロゼ「シェリルさんって言うんだけどね、私よりもずっと永く生きてるらしいし」
土田 文香「えぇ・・・」
ロゼ「永く生きている吸血鬼はそれだけ強い」
ロゼ「百戦錬磨ってことだからね」
土田 文香「勝てるんですか?」
ロゼ「フフフ!私を誰だと思ってるの?」
ロゼ「文香ちゃんの推しである、このロゼ様が負けるところ想像できる?」
土田 文香「・・・できないです」
ロゼ「確かに相手は格上だけどさ、格上を倒してこそ私じゃない?」
土田 文香「・・・」
ロゼ「それに、強い相手の方が勝った時のアドが大きいんだよね」
ロゼ「きっとたんまり寿命を溜め込んでるだろうしさ、吐き出させてやりますよ!」
土田 文香「ロゼ様・・・!」

〇研究所の中
  ロゼ様は私の推しで、吸血鬼です
  配信者をやっています
  彼女の儚げな美貌とウィットに富んだ発言は見る者を魅了し、一部界隈ではカリスマと呼ばれています
  ある日、いつも通り高額スパチャを投げたところ、DMで「会わない?」とのお誘いがありました
  私は二つ返事でOKし、なんやかんやあって今では彼女の眷属です
  ロゼ様は私の推しで、吸血鬼です
  吸血鬼はより永く生きるため、寿命を賭けてあるゲームを行います
  そのゲームの名はライフ、なんとか、と言いますが、正直私にとってはどうでもいいです
  大事なのは「何をプレイするか」ではなく、「誰がプレイするか」ですから
  ロゼ様のプレイを特等席で見られるこの幸福は、何物にも変え難いのだと思います

〇洋館の玄関ホール
ロゼ「立派なお屋敷ね」
土田 文香「ロゼ様〜」
ロゼ「こらこら、くっつかないの」
シェリル「あら、お揃いで」
ロゼ「呼び出すなんて、良い身分ですね」
シェリル「位の低い者が足を運ぶのは当然でしょう」

〇洋館の玄関ホール
  なんだか普段の相手とは違う
  それが彼女の第一印象でした

〇洋館の玄関ホール
シェリル「あら」
シェリル「貴方、私に何か期待しているの?」
土田 文香「えっ」
シェリル「期待に応えてあげられるかは・・・ 分からないけれど」
シェリル「きっと面白いゲームになると思うわ」
土田 文香「は、はあ」
ロゼ「・・・?」
ハトリ「皆さんこんばんは」
ハトリ「この場を担当するハトリと申します」
ハトリ「本日行って頂くゲームは」
シェリル「・・・」
土田 文香(確かに顔は良いけど・・・)
土田 文香(ロゼ様ほどの華はないかな)
ロゼ「なるほどね」
ロゼ「要するに、度胸試しみたいなものね」
ハトリ「ゲームの説明は以上です」
ハトリ「では、先攻のロゼ様からアクションと賭けるライフの提示をお願いします」
ロゼ「うーん」
ロゼ「じゃあ「両手の爪を剥ぐ」に「10年」」
土田 文香「えっ」
ロゼ「大丈夫大丈夫。すぐ再生するし」
ロゼ「まあ単なる様子見だよ。このくらい、どうせ相手も乗ってくるだろうしさ」
シェリル「・・・」
シェリル「ちょっとそれは嫌ね。降りるわ」
ロゼ「は?」
シェリル「だって・・・ネイル変えたばかりだし」
シェリル「そもそも爪を剥ぐって、猟奇的にも程があるわよ」
ロゼ「・・・」
ハトリ「失礼致します」
ロゼ「・・・まあ、これで10年なら安いもんだけど」
ハトリ「次は後攻のシェリル様、お願いします」
シェリル「そうね、じゃあ」
シェリル「「お茶する」に同じく「10年」」
ロゼ「・・・」
ロゼ「はぁ」
ロゼ「なんだか、貴方の人物像が掴めてきたわ」
ロゼ「飲むわ。飲むに決まってる」
ロゼ「飲まない理由がないから」
シェリル「そう。じゃあお茶にしましょう」
シェリル「良かったら貴方たちもどう?」
ハトリ「では、お言葉に甘えて」
土田 文香「・・・」

〇貴族の応接間
ロゼ「・・・」
土田 文香「だ、大丈夫?」
ロゼ「ああ、へーきへーき」
ロゼ「多分、思ったより楽に勝てると思う」
土田 文香「え?」
ロゼ「このゲームってさ、どうしても寿命が多い方が有利なんだけど」
土田 文香「うん」
ロゼ「それってさ、お互いが命を賭けて戦うことが前提の話であって」
ロゼ「今回に限ってはそうじゃないんだよね」
土田 文香「え?」
シェリル「ハーブティーでいいかしら?」
ハトリ「お構いなく」
ロゼ「彼女は遊んでる」
ロゼ「元々命を賭ける気なんてない」
土田 文香「・・・」
ロゼ「「適当に寿命使って、暇潰しができればいい」と考えてるだろうね」
ロゼ「必死になって寿命を集める私を、上から見下ろして悦に浸る。典型的な貴族だよ」
土田 文香「・・・悪趣味ですね」
ロゼ「まあ、私にとっては都合が良いけどね」
ロゼ「奪えるだけ奪って、後は勝手に投了してくれるのを待つだけだから」
ハトリ「ごくごく」
ハトリ「ではロゼ様、次のアクションをお願いします」
ロゼ「「両足の爪を剥ぐ」に「30年」」
シェリル「えっ・・・!」
シェリル「貴方もしかしてドM・・・」
ロゼ「乗るの?乗らないの?」
シェリル「30年・・・ちょっと痛いけど」
シェリル「爪を剥ぐ方が痛いわね」
ハトリ「では、失礼します」
ロゼ「・・・」
ロゼ「私の苦しむ顔を見て満足?」
シェリル「貴方、私のことを勘違いしてない?」
シェリル「そんなSな趣味はないわよ」
土田 文香「・・・」

〇貴族の応接間
  ごめんなさい
  強がりながらも、ちゃんと痛がるロゼ様を見ていたら
  ちょっと興奮してきたかもしれません

〇貴族の応接間
ロゼ「じゃあ次、貴方の番」
シェリル「そんな次、次って」
シェリル「ゆっくり楽しみましょうよ」
ロゼ「私は貴方と違って本気なの」
ロゼ「死んでも、寿命を稼がなくちゃいけない」
シェリル「ふーん、そう」
シェリル「じゃあ「生きる理由を語る」に「30年」」
ロゼ「私は・・・」

〇貴族の応接間
  ロゼ様の生い立ちや境遇を私が知らないはずありません
  彼女は経験から、命を粗末に扱うことを嫌います
  遊び半分で寿命を賭ける。そんな吸血鬼たちを心の底で憎んでいることも知っています
  彼女は懸命に生きている。生に対して、誰よりも誠実に向き合っている
  そんな彼女の口から語られる哲学は、配信なら切り抜かれて100万回再生は狙えるほどにドラマチックでした

〇貴族の応接間
土田 文香「・・・」
シェリル「大層な価値観をお持ちのようね」
シェリル「なんだか、自分がちっぽけな存在のように思えてくるわ」
ロゼ「・・・」
シェリル「貴方ほど立派なものではないけれど、私が生きる理由はね」
シェリル「「観測し続けること」よ」
土田 文香「観測・・・」
シェリル「10年後、100年後の世界がどうなってるか気になるじゃない?」
シェリル「身近なもので例えるならそうね」
シェリル「好きな漫画の続きが読みたいから生き続ける、そんな感じかしら」
土田 文香「なんか分かるかも」
ロゼ「ねぇ文香」
ロゼ「私たち雑談しにきたんじゃないんだけど」
土田 文香「わっ、私はロゼ様の雑談好きだけど」
ロゼ「ありがとう。でも今はそういうのいいから」
ハトリ「ロゼ様、アクションをお願いします」
ロゼ「・・・」
ロゼ「「バルコニーから飛び降りる」に「100年」」
シェリル「えぇ!?」
シェリル「貴方正気?」
ロゼ「飲むの?飲まないの?」
シェリル「飲むわけないじゃない。痛いもの」
ロゼ「じゃあ100年貰うわ」
土田 文香「ロゼ様・・・」

〇立派な洋館(観測室の電気点灯)
「・・・」
「・・・ッ」

〇黒

〇黒
  その後もロゼ様は寿命を稼ぎ続けました
  ボロボロの身体で、虫のように這いながらも全力で戦い続ける
  そんな泥臭さも彼女の魅力だと思います
  見る者に勇気を与える生き様とはこのことでしょう

〇貴族の部屋
土田 文香「ロゼ様・・・」
ロゼ「・・・」
ロゼ「どんだけ溜め込んでるの、アイツ」
ロゼ「もう600年は奪ったのに、一向に投了する気配がない」
土田 文香「ロゼ様は頑張りましたよ」
土田 文香「そろそろ終わりにしていいのではないでしょうか?」
ロゼ「文香、ルール聞いてた?」
土田 文香「えっ」
ロゼ「このゲームはお互いにアクションを提示して、相手が拒否したらベットした分の寿命が貰える」
ロゼ「その繰り返しで先にどちらかの寿命が底をつくか、投了するまで終わらない」
土田 文香「じゃ、じゃあロゼ様が投了すれば・・・」
ロゼ「できるわけないでしょ」
土田 文香「どうして?」
ロゼ「投了すると、このゲームで獲得した寿命を全て失う」
ロゼ「敗者側はノーリスクで投了できるけど、勝者側は投了するメリットがない」
土田 文香「そんな・・・」
ロゼ「うっ」
土田 文香「ロゼ様!」
ロゼ「さっきの毒、思ったより効いたわね」
土田 文香「どうして毒なんか・・・」
ロゼ「それは・・・」
シェリル「毒を飲むって、絵になるわよね」
シェリル「私も貴方のファンになろうかしら」
ロゼ「・・・」
シェリル「きっと貴方の勇姿は歴史に刻まれるわ」
シェリル「そのための「観測者」だものね」
土田 文香「・・・?」
シェリル「でも、ごめんなさい」
シェリル「私は歴史には興味ないの。それに、貴方をそんなものに縛り付けたくない」
シェリル「ロゼさん・・・」
シェリル「私と一緒に未来を生きましょう」
ロゼ「何するつもり?」
シェリル「そうね。私が次に提示するアクションは」
ロゼ「・・・は?」
ロゼ「いやいや何言ってるの?そんなことできるわけ」
シェリル「飲めないのかしら?」
ロゼ「飲む飲まないとか以前に、物理的に」
シェリル「忘れたの?私たちは──」
シェリル「──元々そういう存在じゃない?」
ロゼ「は、は」
ロゼ「はああああ?」
ロゼ「「生きた証を消去する」って「ロゼ様」が消えるってこと?」
シェリル「貴方は消えないわ。貴方に関する記憶が、皆の中から消えるだけ」
ロゼ「同じじゃないッ!」
ロゼ「私がこれまで積み上げてきたものが全て水の泡と化す」
ロゼ「あ、あの子も!」
  あの子の中からも私は消えるって言うの!?
シェリル「ええ」
ロゼ「じょ、冗談じゃ」
シェリル「飲めないなら1000年支払ってもらうけど」
シェリル「貴方にそこまでの寿命はあるの?」
ロゼ「あ、あ」
ロゼ「わ、私は・・・」

次のエピソード:#2 dawn

コメント

  • こんにちは!
    今までに見たことのない話の題材でとても面白かったです!
    寿命を賭けて戦うなんて吸血鬼らしいし、それに推しがいることも不思議な世界観ですね!

    漫画の続きが見たくてずっと生きるって感覚、わからないようで分かる気がします。よくネットでも「来週は〇〇の発売日だから来週までは生きる」って構文?みたいなのありますが、これはリアルなお話なんですね(笑)👍
    推しの女の子のとの絆も試されそうですね

  • 吸血鬼も誰かの記憶に残りたいと思うかどうか。孤独をどう思うのか。
    誰からも観測されなくなれば、それは死んでいるのと同じという考えと、寿命を天秤にかけるというのがいいですね。

  • 暇を持て余した神々ならぬ 吸血鬼たちの遊び…って感じで 、とってもクールで魅力的な展開ですね。 先が楽しみです!

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