エピソード6 善意と悪魔の間に(脚本)
〇ゆるやかな坂道
女子高生「~♪」
妙な男「・・・・・・」
女子高生「え、ちょ、何!」
妙な男「・・・・・・」
〇黒
女子高生「はっ!」
女子高生「ここ、どこ・・・」
女子高生「誰かー!」
女子高生「ねぇ! 誰かいませんか!」
女子高生「誰!」
妙な男「・・・・・・」
女子高生「ねぇ、いるんでしょ?」
女子高生「私を攫ったのはあなたなの?」
女子高生「何が目的? 言っておくけど、うちは別にお金持ちじゃないからね!」
妙な男「・・・・・・」
女子高生「黙ってないで、なんとか言いなさいよ!」
女子高生「なに・・・なんなのよ・・・」
女子高生「わけわかんない・・・」
???「そこまでだ、坂頭さん」
〇廃ビルのフロア
坂頭 優「・・・・・・」
常世 零「彼女を解放しろ」
坂頭 優「・・・もちろんだとも」
坂頭 優「今ちょうどやろうとしていたところさ」
坂頭 優「攫われていく彼女を見かけてね、慌てて追いかけてきたところなんだよ」
常世 零「もうあんたの嘘は通じない」
常世 零「あなたが彼女を誘拐する一部始終は撮らせてもらった」
坂頭 優「・・・・・・」
坂頭 優「盗撮とはね。善行はどうした?」
常世 零「あんたには言われたくない」
常世 零「もう観念しろ」
坂頭 優「ほう?」
常世 零「全部はあんたのせいなんだろ」
常世 零「かなちゃんの時も」
〇川沿いの公園
かな「誰かが、かなのこと呼んだような気がして・・・」
〇廃ビルのフロア
常世 零「迷子犬メリーの時も」
〇川沿いの公園
飼い主「ちゃんと繋いでおいたはずなんだけどねぇ」
〇廃ビルのフロア
常世 零「全部、あんた自らが仕組んだことだった」
常世 零「子供ならはぐれさせるだけでうまく行くだろう。だけど犬はそうはいかない」
常世 零「最悪、自力で戻られてしまう。そこであんたは、犬をそのまま連れ去って閉じ込めるなりして、外を出歩けないようにした」
常世 零「それが、やたらとあの犬に吠えられていた真相だ」
常世 零「来栖と行ったカフェで起きた一件や、駅での階段からの転落事故の時には協力者がいた」
常世 零「それは過去にあんたが助けた人で、その恩義につけこむようにして助成を求めたんだ」
常世 零「おおかた気のある女性がいるから、協力してほしいと言ったんだろ」
常世 零「なぜか人はその手の迷惑行為には寛容だからな」
常世 零「つまりあんたは自作自演で善行で、本来ならばあり得なかった恩義を無理矢理引きずり出して、盗んだんだ」
坂頭 優「くくっ」
坂頭 優「くくく」
坂頭 優「あっはっはっはっはっは」
常世 零「・・・何がおかしい」
坂頭 優「いや、なに」
坂頭 優「ドラマなんかでよくある、追い詰められた犯人が自供してしまうシーンを見てさ」
坂頭 優「それでもシラを切り続ければいいじゃないかと思っていたんだが」
坂頭 優「自らその立場になってようやくわかったよ。こうまで見事に看破されると、いっそ清々しいな」
常世 零「認めるんだな」
坂頭 優「ああ」
来栖 誠司「どうして・・・」
来栖 誠司「どうして、そんなことしたんですか」
坂頭 優「どうして、か」
坂頭 優「理由なんかないな。ただ俺は感謝されたかっただけだ」
坂頭 優「それが大きな感謝であればあるほど満たされるんじゃないかと、そう思ったんだ」
坂頭 優「その点、さっき常世くんが言った「恩義を盗む」ってのは実にうまい言い回しだ」
坂頭 優「まさにその通りだからね」
常世 零「イカれてる・・・」
来栖 誠司「俺、坂頭さんのこと信じてたんですよ・・・」
坂頭 優「知ってるよ?」
坂頭 優「だから利用できないかなって思ってた」
常世 零「てめぇ!」
来栖 誠司「俺たちに近づいたのも計算の内ですか? 始めからそれが目的で」
坂頭 優「いやいや、それはちょっと買い被り過ぎだな」
坂頭 優「最初はただ、俺がせっかく用意した善行のチャンスを横取りされるのが嫌だったからね」
坂頭 優「できれば速やかに排除したかったんだけど」
坂頭 優「どうやら考え方が俺と同じと来たからね。方針を変えたんだ」
常世 零「お前と一緒にするな!」
坂頭 優「同じじゃないか」
坂頭 優「俺たちは前提は誰かの不幸のもとに成り立っている」
坂頭 優「善行に対しての見返りを求めるなら、それってつまり誰かの不幸を望んでいるのと同じじゃないか」
坂頭 優「俺と君たちに、果たしてどんな違いがある?」
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