封鎖された渋谷

マシュウ

読切(脚本)

封鎖された渋谷

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封鎖された渋谷
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〇地下街
  東京・渋谷
  ここは突如政府により封鎖された。
  政府はこれを、渋谷内でウイルス兵器が使用され、その封じ込めのためにと説明した。
  おいで。おいで。ここは楽しい楽園の街。
  これは『7・7渋谷ウイルス事件』と呼ばれた。
陽介「よいしょっと」
  俺はそんな渋谷に潜入しようとしている。
  目的は彼女である麻衣を探すためだ
  おいで。おいで。みんなが待ってるよ。
  最初俺は麻衣もウイルスで死んだものと思っていた。
  しかし、先日渋谷にいた友達が帰って来た
  友達によると、まだ中に生存者がおり、麻衣もいたという。
  俺はその真相を探るべく、地下鉄から侵入した
陽介「よし、ここを出れば渋谷のスクランブルだ」
  一度入ったら病みつきさ。楽しくてしょうがない。
  出口にはシャッターが降りており、先が見えない
陽介「ここを、開ければ・・・・・・」
  ! よし!

〇渋谷駅前
陽介「・・・・・・」
陽介「あれ?」
  なぜかそこには『普通』の渋谷があった。
  普通だよ。普通だよ。普通が一番楽しいよ。
陽介「どいうことだ? 政府の発表は嘘だったのか?」
  だったらなぜ、封鎖などしているのだろう?
  麻衣は生きているのか?
陽介「わぁ!?」
陽介「あ、危ねぇ・・・・・・」
  普通に車も走っている。
  俺は辺りを歩いてみることにした。

〇ファミリーレストランの店内
店員「いらっしゃいませー」
  さようならはありません。
陽介「・・・・・・」
  近くのレストランに入ってみたがこれといって異変はない
???「あ! いたいた!」
麻衣「もう! 陽介くん! どこにいたの?」
陽介「麻衣・・・・・・!?」
  失踪した彼女だ。なぜここに!?
麻衣「どうしたの? 陽介くん?」
麻衣「というかどうして厚着? 暑くないの?」
  ここは暑いよ。暑いよ。
陽介「あ、ああ。そうだな」
陽介「・・・・・なあ、麻衣」
麻衣「? どうしたの?」
陽介「ここは何なんだ? どうしてお前は帰ってこない?」
麻衣「え? 何の話してる? 映画?」
陽介「違う!!」
陽介「ここは政府が封鎖しているんだ!? そんな場所がどうしてこうも普通なんだ!?」
陽介「街もお前も!」
  おかしくないよ。普通だよ。
麻衣「え!? ちょっと落ち着いて! 陽介くん!」
陽介「・・・・・・」
陽介「すまん。ちょっと色々驚いて」
麻衣「ううん。大丈夫だよ」
麻衣「それで。どうしたの?」
陽介「聞いてくれ、麻衣」
陽介「この渋谷は封鎖されている。だから、俺は地下鉄を通って────」
  あれ? なんだこの違和感?
麻衣「通って?」
陽介「ああ。そしてここに来た。 お前を探すために」
麻衣「なんか大袈裟な話してるけど、待ち合わせの話でしょ?」
麻衣「ハチ公前で待ち合わせしてたのに、陽介くん、このレストランに入っていくんだもん」
麻衣「私が見てなかったら、会えなかったよ」
陽介「いや、でも俺がハチ公を見に行ったときにはいなかっただろ?」
麻衣「えー! 嘘だー! いたもん! あたし!」
  あれ? 俺、ハチ公なんて見たっけ?
陽介「それで、麻衣。お前、大丈夫なのか?」
陽介「は!?」
麻衣「うん? どうしたの?」
陽介「い、いや・・・・・・」
  一瞬、麻衣が化け物に見えたような・・・・・・?
  気のせいだよ。気のせいだよ。
麻衣「あたしは元気だけど? どうしたの?」
陽介「いや、例えば病気になったとか?」
麻衣「病気になってたらここにいないよ」
陽介「そ、そうだよな。ウイルスなんてないよな?」
麻衣「何言ってんの?」
麻衣「ウイルスにはみんなかかってるじゃん」
陽介「は?」
麻衣「ウイルスになったから病気にならないんだよ? 私も陽介くんも」
陽介「お前、なに言って・・・・・・」
麻衣「早く、外の人にも教えてあげたいよね?」
麻衣「ウイルスにかかれば、こんなにも素敵になれるって」
  素敵だよ。素敵だよ。
陽介「・・・・・・」
麻衣「────なんて冗談!」
麻衣「どう? びっくりした?」
陽介「なんだよ! 脅かすなよ!」
麻衣「だって今日の陽介くんおかしいんだもん」
麻衣「だから乗ってあげたの」
陽介「まったく・・・・・・悪かったよ」
麻衣「わかればよろしい! じゃあ、早くデートしよ?」
麻衣「時間は有限なのだ!」
陽介「よし! 行こうか?」

〇渋谷のスクランブル交差点
  麻衣と渋谷の街を歩く。
  変わらない日常がまた戻ってきたのだ。
  また? 俺はこの日常を失ったことがあるのか?
  あれ? 俺どうして渋谷で麻衣と歩いているんだ?
  そもそも、麻衣って誰だ?
  俺は結婚していて、子供もいたはずじゃ?
  頭が痛い。
  どうして気がつかなかったのか?
  厳重に封鎖しているはずの渋谷に、一般人が地下鉄から簡単に入れるはずがない。
  私が案内した。案内した。
  封鎖と同時に地下鉄は埋め立てられたのだから。
  では、どうやってここに来たのか?
  わからない。

〇店の入口
  窓ガラスに自分の姿が映る。
陽介「・・・・・・」
  君も案内して。案内して。
  ああ。友達に。外の友達に伝えないと。
  この素敵な楽園を。楽園を。
  ここに来なければいけないと。

〇地下街
快「陽介が言うにはこの先が渋谷だ」
快「陽介はウイルスはでたらめとか言ってたけど本当だよな・・・・・・?」
  さあ、いらっしゃいませ。
  楽しい。楽しい。日常の街。
  『死悔耶』へ・・・・・・

コメント

  • 異常と正常の狭間で、揺れ動く心がうまく表現されていると思います。
    そう、みんながウイルスに飲み込まれれば、感染した方が「普通」なのだと。

  • ジャンルがホラーとなっていたので、
    どんなお話なんだろうと思ったのですが、
    最後のシブヤの漢字に「おぉっ」となりました😌
    枠なし文字がうまいことハマっていますね✨

  • 今、自分がいる街はそうでないことを祈ります。何が当たり前で、普通なのでしょうか。永遠に変わらないものを手にすると幸せなのでしょうかと考えさせられました。

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