エピソード3 食えない男は犬も食わない(脚本)
〇マンション前の大通り
来栖 誠司「ワンワン!」
常世 零「クゥーン」
来栖 誠司「ウゥゥ、ワンワン!」
常世 零「クゥーン」
来栖 誠司「ワンワンワン!」
常世 零「ワンワン!」
来栖 誠司「ワンワンワンワン!」
常世 零「ワンワンワンワン!」
「ワンワンワンワン!」
〇ゆるやかな坂道
数時間前
犬を探しています。
○月○日より行方不明です。
あまり吠えません。
見つけてくれた方には謝礼もします。
連絡先は──
来栖 誠司「・・・・・・」
来栖 誠司(子供と違い、迷子の犬は探すのが大変そうだな)
来栖 誠司(だが俺には秘策がある。それはずばり)
来栖 誠司(犬になり切ること!)
来栖 誠司(犬の気持ちになることで、自ずと居場所がわかるようになるという寸法さ)
来栖 誠司(こんな秘策を思いついてしまう己の才能が怖いぜ・・・)
来栖 誠司「いくぜ!」
来栖 誠司「ワンワン!」
〇マンション前の大通り
来栖 誠司「ワンワン!」
来栖 誠司「ワンワンワンワン!」
常世 零「ワンワンワンワン!」
来栖 誠司「ワン?」
常世 零「ワン?」
来栖 誠司「・・・・・・」
常世 零「・・・・・・」
来栖 誠司「ワンワン(何してる)」
常世 零「ワンワン(そっちこそ)」
来栖 誠司「ワンワンワンワン(見てわからんか。犬探しだ)」
常世 零「ワンワン(俺もだ)」
来栖 誠司「それでどうして犬の鳴き真似になるんだワン」
常世 零「犬探しは、犬の気持ちになる切るものだと相場が決まってるワン」
来栖 誠司(そこに気づくとは・・・)
来栖 誠司(やはり、こいつは俺と同レベルの天才だ!)
来栖 誠司(つまり、この勝負はより犬になり切った方の勝ち!)
来栖 誠司「負けないワン!」
常世 零「こっちこそワン!」
来栖 誠司「ワンワン!」
常世 零「ワンワン!」
来栖 誠司「ワンワンワン!」
常世 零「ところで、小腹が空いたワン!」
来栖 誠司「え?」
来栖 誠司(こいつ、おもむろにドッグフードを取り出しやがった!)
来栖 誠司(徹底してやがる! かくなる上は・・・)
来栖 誠司「電柱にマーキングするしか・・・」
常世 零「プライド捨てすぎだろ」
来栖 誠司「ドッグフード食ってる奴に言われたくない!」
常世 零「結構いけるぞ。食うか?」
来栖 誠司「食”わん”!」
常世 零「お、犬が板についてきたな」
〇川沿いの公園
来栖 誠司「ウゥゥ、ワンワン!」
常世 零「ワンワンワン!」
来栖 誠司「お、おい! あの犬!」
常世 零「ああ。間違いない」
犬「ワンワンワンワン!」
来栖 誠司「やっぱり本物は格が違うな」
常世 零「言ってる場合か。行くぞ」
坂頭 優「いやはや、困ったなぁ」
常世 零「大丈夫ですか?」
坂頭 優「あ、ああ。君たちは?」
来栖 誠司「犬を探しているんです。あなたもですよね?」
坂頭 優「ああ、そうだ。俺も張り紙を見てね」
坂頭 優「君たちもかい?」
「はい」
坂頭 優「そうか。それは助かった」
坂頭 優「実は見つけたはいいものの、どうにも嫌われているみたいでね」
坂頭 優「手を焼いていたんだ」
常世 零「なら俺たちも協力します」
坂頭 優「感謝する。じゃあ早速だけど、一旦預かってもらえるかな?」
坂頭 優「俺が飼い主に連絡を取るからさ」
「はい」
来栖 誠司「おー、よしよし」
犬「クゥーン」
来栖 誠司「お、懐いた」
来栖 誠司(もしや、俺には犬を手名付ける才能もあるのか?)
常世 零「随分と人懐っこいんだな。よしよし」
来栖 誠司(ちぇっ。こいつもか)
犬「ワンワン!」
坂頭 優「お待たせ。すぐ迎えに来るってさ」
常世 零「よかったです」
坂頭 優「ああ、よせよせ。そいつを近づけないでくれ」
来栖 誠司「随分と嫌われてますね」
坂頭 優「そうみたいなんだが、まるで心当たりがなくてね」
坂頭 優「全く、困ったもんだ」
常世 零「・・・・・・」
〇川沿いの公園
飼い主「ご苦労様」
犬「ワンワンワンワン!」
飼い主「メリーちゃん、もうどこに行っちゃだめよぉ」
犬「ワン!」
来栖 誠司「見つかってよかったですね」
飼い主「全くよ。いなくなった時はどうなるかと思ったわよ」
飼い主「ちゃんと繋いでおいたはずなんだけどねぇ」
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