エピソード1(脚本)
〇開けた高速道路
プロローグ──
『追跡車両108に連絡、犯人車両は予定通り港へ向かって現在も逃走中。繰り返す、犯人車両は現在も逃走中』
富松重三「108了解」
トミーが無線を取り、短く返事を返す。トミーはアクセルを少し踏み込み、車のスピードが上がる。
佐藤零士「なあ、トミー。犯人が予定通りに逃走するなんておかしくないか?既に警察側に情報が漏れてるのに強行する意味が理解できないんだ」
富松重三「うるせぇ、そんな細かいこといいんだよZERO。予定通りに向かってるならそれでいいだろ?なぁ、ソテー」
相手成 葵「それはそうなんだけど・・・なにか引っかかるんだよね・・・・・・」
ソテーは顎に指をかけて少し悩みながら答えた。
信号を無視して、夜の街を覆面パトカーで駆ける。乗り心地はさながらジェットコースターだ。
富松重三「そういえば、ZERO」
ハンドルを握ったままトミーは助手席に乗っている自分にチラッと視線を向けた。
佐藤零士「なに?なんか聞きたいこと?」
富松重三「いやぁ、犯人の能力ってなんだったか聞きたくてな。何も聞かずに飛び出したからよ」
「いやそれはトミーのせいでしょ・・・・・・」
相手成 葵「僕とZEROは聞いてたよ。確か鍵とかのロックを外す系の能力だったはず。その能力で逃走用の車を入手したらしいよ」
富松重三「なるへそ。ま、そこまで厄介なやつじゃなさそうだな・・・・・・多分」
(大丈夫かなぁ・・・・・・)
〇海岸線の道路
『追跡車両108に緊急連絡!犯人車両が予定より早く港へ到着!至急港に合流されたし!繰り返す!至急港に合流されたし!』
富松重三「くっそ!どこが予定通りだよ!おい飛ばすぞ!ちゃんと掴まっとけよ!」
トミーはアクセルを思いっきり踏み込んだ。
港まで直線距離200mほど。しかし道路は海を避けるようにカーブしており、距離はまだ1kmはあるだろう。
飛ばしたとしても1、2分はかかるだろう。”普通の”警察官ならば・・・
富松重三「ソテー!お前の【重力】で車を浮かせろ!あとは俺が【触手】で道路を作る!ZEROは犯人を取り押さえる準備しとけ!」
自分はシートベルトを外し、ジャンパーのチャックを上まで上げた。
ソテーが目を閉じ、車が浮く。
車はそのまま慣性の法則によってガードレールを飛び越え、海へと投げ出された。
佐藤零士(本当に車を浮かせれるのか・・・・・・! だけど、このままじゃ真っ逆さまだぞ・・・・・・?)
そして車は海に──
落ちることなく、代わりになにかに着地した衝撃が自分たちの体を貫いた
富松重三「いっ・・・てぇな!クソッ!大丈夫か?お前ら」
トミーの作り出した触手が港方向にまっすぐ道路のように伸びていた。
先程の衝撃はトミーの触手の上に車が着地した時の衝撃だったのだ。
佐藤零士「自分は何とか大丈夫だよ・・・・・・」
相手成 葵「僕も大丈夫・・・・。でも早くしないと・・・・!」
富松重三「わーってるよ!」
トミーが荒々しくハンドルを握りしめる。
佐藤零士(既に港は見えてる・・・。あとは時間の問題だ・・・)
佐藤零士「トミー・・・これ自分たち、港より上空にいない・・・?」
体感ではあるが、上空50mほどに自分たちはいる。まさに飛行機やヘリの気分だ。
佐藤零士(どうやって降りるんだ・・・?ソテーの能力で降りるのか?それだと間に合わなくないか・・・?)
富松重三「俺の触手は合計で400mまでしか伸びねぇ、港まではギリギリ届かねぇんだ・・・」
佐藤零士「え?!どうするのさ!?」
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トミー、ZERO、ソテーという呼び方が既に刑事ドラマみたいで面白い。冒頭からスピード感あふれる展開ですぐに世界観に引き込まれました。一人一人の能力が異なるので、犯人逮捕のためにどの能力をどのタイミングでどう組み合わせて使うかが勝負なんですね。犯人のロック外しも地味に便利そうだな。