Night Mare

こーにゅ

エピソード6(脚本)

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〇オフィスのフロア
  その次の日、男性は、いつもと変わらず、職場に出勤する。
男性(上司・・・あれから特になにも言ってこないな)
男性(職場にも普通に来てるし・・・ あんなに泥酔してたのに、あのあと普通に帰ったのかな)
男性(ま、僕が気にすることじゃないか・・・)
男性「すみません、外回り行って来ます」
「・・・・・・」
  男性の呼び掛けに対し、オフィスにいる数人がチラッと男性をみたが、特にあたたかい言葉をかけたり、返事をするものはいない。
男性(相変わらず職場の人は冷たいけど・・・ ま、それも変わらずだな)

〇開けた交差点
男性(あ、、しまった、外に出たはいいけど、今日の営業先のお客さんとの会談、まだ時間があったな・・・)
男性(かといって事務所には戻りにくいし・・・)
男性(・・・まぁ、丁度いい時間まで、少しだけゆっくりしていよう)
男性(あそこの角に、丁度いいカフェがあるから、あのカフェで時間を潰そうかな・・・)
  男性が、カフェに向かって歩いていると、背後から近づく影が・・・
???「とやーーーっ!!!」
男性「うわぁっっ!!?!」
メア「あっはは!! 今度こそ驚いたわね~?」
男性「え、あ・・・え?き、君は・・・ ガールズバーの・・・?あれ?」
メア「ちーがーうーわーよー! はー、やっぱり姿かたちが違うと、いくらあなたでも 、メアとは気づけないかしら?」
男性「えっ!?!?め、メア???」
メア「ふふ!ええそうよ、メアよ」
男性「し、信じられない・・・現実にメアがいるなんて・・・ ホントにメアなんだな?」
メア「だーかーらー、そう言ってるじゃない」
男性「・・・まさか、精神体のみだった存在が肉体を持つとは・・・」
男性「あれ、ていうか・・・ メア、その女性って事故に遭ったって聞いたんだけど・・・」
男性「メア、まさかその女性を・・・」
メア「ちょっと、人聞き悪いこと言わないでちょうだい」
メア「この身体はね・・・」

〇郊外の道路
  メアいわく・・・
「はぁ・・・メアが肉体を持つ方法なんて、本当にあるのかしら・・・」
「誰かの夢に常に入り込んでおくとか? でも、それだと、その人間はずっと寝ていないといけないわよね」
「・・・あら?そういえば、メアが夢に入ってる状態で、その人間が起きちゃったら、メアってどうなるのかしら?」
「今まで、人の夢にちょびっとだけ干渉して、いたずらして出てきたけれど、ずっといた場合は・・・」
「・・・夢から追い出される?」
「それってつまり、どういう状態なのかしら・・・」
「うーん、まったくわかんないわ。 こういうこと、相談できたらいいけれど・・・あいつに聞いても分かんないだろうし」
  メアが、考え事をしながら、現実の空間を彷徨う。
  ずいぶん前に、男性をこの近くで見かけたため、この付近の地形は覚えた。
  すると、道端の側溝に、なにかを発見する。
「・・・あら?あれって・・・」
「ひ、人が倒れてるの!?」
  みると、足を踏み外したのか、片足を側溝に突っ込み、うつ伏せで倒れている女性がいる。
「ねぇ、ちょっと、あなた大丈夫!!?」
  メアの声は、現実を生きる人間たちには聞こえない。
  ・・・はずだったのだが。
???「ん、んん・・・」
「しっかりしなさい!」
???「あぅー・・・・・・ ・・・・・・たい、、」
「なに!?なんて言ってるの?!」
???「・・・・・・」
???「・・・しに、たい・・・」
「・・・はぁ・・・?」
「あなた、「死にたい」って・・・そう言ったの!?」
???「もう・・・やだ・・・・・・」
「・・・っ!! もう、こんな状態で放っておけるわけないじゃない!!」
「ほら、頑張って起き上がりなさい!」
???「・・・・・・」
???「・・・・・・」
女性「・・・・・・」
  側溝に倒れていた女性は、よろよろと立ち上がる。
  メアは、この女性の顔に見覚えがあった。
「あら、待って、あなた、もしかして・・・」
(いえ、今はそんなことどうだっていいわね)
女性「もう、嫌だ・・・このまま、死にたい・・・」
「・・・・・・っ!!」
「あなたねぇ!せっかく現世に生きられてるのに、軽々しく死にたいなんて言わないでちょうだい!?」
「そりゃ色々あるのかもしれないけど・・・メアにはそんなの知ったことじゃないわ!!」
女性「・・・もう、こんな私なんて、捨ててしまいたい・・・」
「もう・・・いくら言っても無駄みたいね」
「あら?そういえば・・・」
「メア、なんで現世のあなたと会話できてるの?」
女性「死にたい・・・死にたい・・・・・・」
(・・・もしかして・・・)
(メアは、本当は・・・、)
「ねぇ、あなた」
女性「・・・?」
「このメアが、あなたの代わりに現世で生きてあげるわ」
「夢の中でしか関われないメアが、あなたと会話ができるのは・・・」
「・・・もう、あなた自身の精神の最期が、 近いのでしょう?」
「・・・だったら、その身体、」
女性「・・・・・・」
女性「・・・・・・」
女性「・・・・・・」
女性「・・・・・・」
メア「・・・メアが、使ってあげるわ」

〇開けた交差点
男性「そうか・・・それで、その女性のなかに・・・」
メア「まぁ、そんな感じかしら」
男性「さしずめ今のキミは、精神が仮死状態になった女性の身体を乗っ取って、メア自身の自我に書き換えてるってことかな」
メア「んー・・・?難しいことは、よくわからないわ」
男性「それにしても・・・不思議な現象があるものだね・・・」
男性「夢の中だけで存在していたメアが、肉体を持てるようになるなんて、・・・」
メア「・・・ねぇ、あのさ・・・」
男性「ん?なに?」
  ぐううう・・・と、おなかの鳴る音。
メア「・・・昨日の夜から、おなかが変な音たててるの」
メア「この女・・・まさか変な病気持ちかしら」
男性「あはは、それは多分、おなかが空いてるだけだよ」
メア「おなかが空く・・・そう、これが「空腹」という状態なのね」
男性「まさか、おなかが空く感覚もピンと来てないとは・・・」
メア「な・・・!今ちょっとバカにしたでしょ!?」
男性「そっか・・・だって、メアはずっと精神体だったもんね。お腹が空くことなんて、なかったよね」
男性「僕もちょうど、軽くなにか食べようと思ってたんだ」
メア「食べる・・・?そういえばよく、人が食に関する夢を見てたわ」
メア「人がものを食べると、どうなるの?」
男性「美味しいものを食べると、とっても幸せな気持ちになれるよ。 メアも、一緒にいこう」
メア「・・・幸せな気持ちに・・・」
メア「・・・ふふ!なかなか興味深いわね」
メア「ええ、是非!一緒に食べましょう!」
  ──人間の女性の身体に入り込み、すっかり馴染んだメア。
  メアに身体を渡した女性は、本当の意味で「自我」を手放したがっており、この願いをメアが叶えたのだ。
  男性もまた、メアと再び話をすることができた。
  メアという、夢の中だけの存在が、2人の人間の希望を叶えたのである。
  メアは、その後男性に、人間生活での過ごし方を教わり、男性と共に楽しく過ごし始めたのだった。
  ────END

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