エピソード2 迷子と世迷言(脚本)
〇河川敷
来栖 誠司「またお前か」
常世 零「いい加減、慣れろ」
来栖 誠司「気安く言うじゃないか。俺がどんな気持ちで来世に賭けているのかも知らないくせに」
常世 零「それはお互い様だろ」
今日、俺たちは河川敷のゴミ拾いボランティアに参加していた
参加人数は十数名程度の小規模な活動だが、みんな少しでも町を綺麗にしたいという純粋な思いを胸に抱いて集まっている
無論、俺は違うが
来栖 誠司「言っておくが、俺の邪魔だけはするなよ」
常世 零「ゴミ拾いでどうやって邪魔するんだよ」
来栖 誠司「ふん!」
俺たちはバラけて作業することにした。一緒にいたら、また邪魔をされかねないからだ
そうして、お互い努めて意識しないよう作業していたのだが・・・
???「常世さん、すごーい!」
ボランティア団員「いっぱい集めてますね!」
常世 零「いえ、それほどでも」
常世 零「それに、むしろこれだけ集まってしまうという現状を危惧するべきなのかもしれません」
ボランティア団員「そうだよねぇ。どうしていつの時代もポイ捨てってなくならないんだろうねぇ」
ボランティア団体代表「捨てる神あれば、拾う神あり。存外、我々みたいにゴミを拾う人がいることで、バランスは成り立っているのかもしれないよ」
ボランティア団員「なに言ってるんですか?」
来栖 誠司「・・・まずい」
来栖 誠司(このままでは奴に負けてしまう)
来栖 誠司(それだけは何としてでも避けなくては!)
来栖 誠司「うぉおおお!」
ボランティア団員「来栖さんも気合入ってますねぇ」
常世 零「ですね」
常世 零(いるか? ゴミ拾いであの掛け声)
〇河川敷
来栖 誠司「はぁ・・・はぁ・・・」
来栖 誠司「だいぶ拾ったな」
来栖 誠司「そろそろ戻らなくちゃ・・・」
来栖 誠司「って、ここどこだ?」
来栖 誠司(まずい。ゴミ拾いに夢中になりすぎて はぐれてしまった)
来栖 誠司「迷子っちまったぜ」
常世 零「まったく、世話が焼けるな」
来栖 誠司「なっ! ・・・てめぇ! なんの用だ!」
常世 零「迎えに来てくれた奴に言うセリフか?」
来栖 誠司「頼んじゃいない!」
常世 零「どの口が言ってんだよ」
来栖 誠司「はぁ? なにを言って──」
かな「うえぇぇん! ママ、どこぉー?」
「どうかした? お嬢さん?」
来栖 誠司「てめぇ! また邪魔するか!」
常世 零「それはこっちのセリフだ」
来栖 誠司「俺が先に見つけたんだぞ!」
常世 零「いいや、俺だね」
来栖 誠司「往生際わるぅー! それでも大人かよ!」
常世 零「そう年齢変わらんだろ」
来栖 誠司「いや、俺は大学生だし!」
常世 零「その癖していつもボランティアに参加してるじゃないか」
来栖 誠司「それはお前もだろ! 平日の昼間からプラプラしてないで働いたらどうですかぁー?」
かな「えぇーん! ママぁー!」
「あ・・・」
来栖 誠司「い、一時休戦だ」
〇川沿いの公園
かな「えぇーん。ママぁ」
来栖 誠司「お兄ちゃんたちが一緒に探してあげるから、ね?」
常世 零「だからもう大丈夫だよ。泣かないで」
かな「えーん!」
来栖 誠司(まずい。このご時世だ。このままじゃ俺たち誘拐犯に間違えられかねない)
来栖 誠司「あ、そうだ! ねぇ、お腹空いてない?」
かな「・・・お腹?」
来栖 誠司「そうそう」
かな「・・・空いたかも」
来栖 誠司「なら、アイスクリーム食べない?」
かな「食べる!」
来栖 誠司「よし!」
来栖 誠司「じゃあ、常世。買ってきて」
常世 零「・・・俺がか? 言い出したのお前だろうに」
来栖 誠司「頼むよ。俺、基本金ないからさ」
常世 零「いや、俺もないが」
来栖 誠司「・・・・・・」
常世 零「・・・・・・」
来栖 誠司「・・・割り勘でどうっすか?」
〇川沿いの公園
来栖 誠司「ほい」
かな「わぁ! ありがとう!」
来栖 誠司「どういたしまして」
かな「おいしー」
常世 零「よかったね」
かな「ねぇ、お兄ちゃん」
来栖 誠司「うん、どしたの?」
かな「次はタピオカミルクティー飲みたい!」
「え!」
来栖 誠司「・・・・・・」
常世 零「・・・・・・」
来栖 誠司「割り勘・・・」
常世 零「ああ・・・買ってくる」
来栖 誠司「ねぇ、かなちゃん」
かな「ん?」
来栖 誠司「そろそろさ、お母さん探しにいかない?」
かな「あ! かな、かくれんぼしたい!」
来栖 誠司「ええ?」
かな「お兄ちゃん、鬼ね!」
常世 零「お待たせー、ってあれ? かなちゃんは?」
来栖 誠司「どうやら俺は鬼らしい」
常世 零「お前、かなちゃんに何したんだ?」
来栖 誠司「そういう意味じゃない」
〇川沿いの公園
そんなこんなでとことん遊びに付き合わされた俺たちだったが、それは間もなくして終わりを告げる
来栖 誠司「かなちゃん、みっけ」
かな「見つかっちゃった!」
かな「じゃあ、次はかなが──」
母親「かな!」
かな「あ! ママだ!」
母親「もう、どこに行ってたの!」
母親「心配かけて・・・」
かな「ママ、ごめんなさい」
かな「誰かが、かなのこと呼んだような気がして・・・」
母親「そうなの?」
かな「うん。でも勘違いだったみたい」
母親「そっか。何にせよ、無事でよかった」
二人は駆け寄って抱きあう
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)