来世に乞うご期待!

吉永久

エピソード1 最高最善最前線(脚本)

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〇渋谷駅前
来栖 誠司「恵まれない子供たちに、愛の募金をお願いしまーす!」
ボランティア団体代表「精が出るねぇ」
ボランティア団員「すごいですよね。来栖さん」
ボランティア団員「かなりの頻度でボランティアに参加してますし」
ボランティア団員「この前なんか、横断歩道を渡るお年寄りを補助していましたよ」
ボランティア団員「本当、優しい人です」
ボランティア団体代表「かなりの頻度というか、毎回なんだけどね」
ボランティア団員「え!? 毎回!?」
ボランティア団体代表「そうなんだよねぇ。確か大学生だったと思うんだけど」
ボランティア団員「行ってないんですかね? 単位足りてるから?」
ボランティア団体代表「どうだろうねぇ」
ボランティア団員「でも、それはそれですごいですよね。自分のことを犠牲してでもこうやって誰かのために尽くせるのって」
ボランティア団体代表「うーん・・・。あまり自分のことは犠牲にして欲しくはないんだけど」
ボランティア団員「すごく立派なことだと思いますけど」
ボランティア団体代表「でもその結果、自分が援助の必要な人になったら元も子もないじゃない」
ボランティア団体代表「もちろん、本当に困ってるなら手は貸すつもりではあるけど、そうならないことが一番いいよねぇ」
ボランティア団員「ふーん。そういうもんですかねぇ」
来栖 誠司「・・・・・・」
来栖 誠司(くっくっく)
来栖 誠司(馬鹿め。俺の真の計画も知らずに)
来栖 誠司(こうして俺がひたすら善行に尽くすのにはわけがある)
来栖 誠司(それはずばり、来世へ向けての徳を積むためだ!)

〇学食
  きっかけはひょんなことからだった
政孝「世の中ってのは不公平だねぇ」
来栖 誠司「なんだよ、急に」
政孝「いや、なに。さっきの講義でフランス革命のことをやって思ったんだよ」
来栖 誠司「マリー・アントワネットか」
政孝「そうそう。パンがなければケーキをたべればいいじゃないって、そりゃ貧乏人が聞いたら怒る話だよな」
来栖 誠司「実際には言ってないって説もあるけど」
政孝「そんなことは重要じゃないんだよ。要は不平等だったってことよ」
政孝「それって当時に限ったことじゃないだろ?」
来栖 誠司「どういうこと?」
政孝「現代にだって貧富の格差はあるし、そうでなくとも報われない奴っているだろ?」
来栖 誠司「どこに?」
政孝「目の前に」
来栖 誠司「俺?」
政孝「なんで驚いてるんだよ」
政孝「だってそうじゃないか。親は友人に騙されて借金を抱えて、夜逃げ同然で蒸発」
政孝「奨学金で借金を返しつつ、生活のためにアルバイトの日々」
政孝「でもそのおかげで単位はヤバいことになって、卒業すら危うい」
政孝「社会人になったら奨学金も返さなくちゃいけないし、でも賃金は安いわりに物価は高くなる一方」
政孝「あまりにも将来に希望が持てないだろ」
来栖 誠司「後半、自分の愚痴だろ」
政孝「とにかくさ、俺がいざお前の立場だったらとっくに自殺してもおかしくないってこと」
来栖 誠司「そこまで言い切るか?」
政孝「それほどってことだよ。もう前世でとんでもない悪事を働いたレベルだね」
来栖 誠司「な、なるほど・・・」
政孝「いっそ生まれ変わって新しい人生始めたいよな」
来栖 誠司「そっか・・・」
  彼に悪気がないのはわかっていた。思ったことをただ言ってるに過ぎない
  こういう裏表ない性格だからこそ、友人関係が続いていると言っても過言ではない
  だが、そう言われるまで自分の境遇に関して特に疑問を感じて来なかった
  無論、理不尽に感じることもあったが、かといって誰かを恨むような真似もしていないつもりだし
  ましてや、死にたいなどと思ったことすらない
  だけど、傍から見れば俺はいわゆる「可哀そうな奴」なのだと、その時初めて気づかされた

〇古いアパートの一室
  その夜、俺は考えた
  自分の置かれた立場、将来のこと、そして前世のこと
  もし政孝の言う通り、前世の俺がとんでもない悪事とやら働いた結果、今の俺に災難が降りかかっているのならば
  現世の俺がとんでもないくらいの徳を積み続ければ、来世は悠々自適に過ごせるということだろうか?
  お金には何一つ不自由することなく、美人の姉がいて、その姉に勝手にアイドル事務所に応募されていて
  ひょんなことからアイドルデビュー。国民的な大スターになって、世界中の美女からモテモテ
  西アフリカにでも移住して全員と結婚し、一大ハーレムを築き晩年まで幸せに過ごす
来栖 誠司「あり、だな・・・・・・」
  かくして、俺の来世のために現世の全てを賭けることを誓った

〇電車の中
  だが最近、妙な奴に出くわす機会があった
来栖 誠司(お!)
来栖 誠司(あれは席を探している顔だな)
  俺はこういう時のために必ず席に座るようにしている
  つまり、お年寄りに譲るためだ
来栖 誠司「おばあちゃん、もしよければ」
「席どうぞ」
「え?」
  おばあちゃんは同時に言われたからか、どうしようか困っている様子だった
来栖 誠司「おばあちゃん、こっちどうぞ」
常世 零「いやいや、こっちにどうぞ」
来栖 誠司(な、なんだぁ? こいつ)

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コメント

  • こんにちは!まさか善行を来世の為に積む変わり者がもう一人現れてしかもバトルロワイにまで発展するとは(笑)

    店舗どうしの豪華なおまけ合戦みたいな会話の掛け合いが笑えるしおばあちゃんのもう駅つきましたあ〜はほっこりしました

  • 善行バトルロイヤルw来世の為には徳を積むは、よく聞きますがそれがバトルにまで発展するなんて。一体、どんな善行バトルが勃発するのか楽しみです😆😆😆😆😆

  • 善行バトルロワイヤルww
    設定からして楽しすぎます!
    お婆さんに電車の席を譲るのに、タワマンにクルーザー世界一周ってww

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