~罪を犯した閻魔王~転生地獄再編成記

村崎陽花

1話 閻魔の目覚め(脚本)

~罪を犯した閻魔王~転生地獄再編成記

村崎陽花

今すぐ読む

~罪を犯した閻魔王~転生地獄再編成記
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇裁きの門
???「閻魔王 お前は地獄を司る王でありながら、罪を犯した」
???「よって転生し、人として生まれ変わるがいい──」
閻魔王「そうか・・・ ならば仕方ないな」

〇男の子の一人部屋
閻架「スー・・・」
閻架「ハッ・・・!」
閻架「何か夢を見たような・・・?」
  ここは自分の部屋だ。
  俺は両親を早くに亡くして、今は叔母夫婦のお世話になっている。
叔母「閻架(えんか)、朝よ!起きなさい! ・・・どうかしたの?」
閻架「あ、叔母さん。おはよう! 何でもないよ」
閻架(なんだか不思議な夢だった気がするなあ・・・)

〇土手
初江「おはよう、閻架」
  学校に向かう俺に声をかけたのは、同じクラスの初江(はつえ)だ。
閻架「おはよ あれ、弓道部の朝練は?」
初江「大会はまだもう少し先だから、今日は朝練ないの」
閻架「そうなんだ。でも毎日放課後も頑張ってて、すごいよなー」
初江「ありがとう。次の大会、頑張るね」
初江「そういえば知ってる? 今日、うちのクラスに新しい先生が・・・」
通行人「た、大変だ! 男の子が溺れてる!」
閻架「ええっ!?」
閻架「どこですか!?」
通行人「川のあそこだ!」
閻架「初江、鞄持ってて」
初江「えっ、閻架ちょっと待っ・・・」
閻架「すぐに助けるからな!」
  俺は迷わず川に飛び込んだ。
初江「お願い、二人ともどうか無事で・・・!」

〇土手
初江「はあ・・・二人とも助かって良かった・・・!」
閻架「帽子が川に落ちて、それを取ろうとしたんだって」
男の子「うん、ありがとう お兄ちゃん」
閻架「なあ、その帽子。誰かに落とされたんじゃないのか?」
男の子「えっ・・・ う、うん。同じクラスの子に・・・」
閻架「やっぱり。今日みたいな風で、あんな遠くに落ちるわけないもんな」
男の子「ふざけてた・・・んだと思う だから、大丈夫だよ!」
  男の子は駆け出して行ってしまった。
閻架「あっ・・・!」
初江「本当に無茶するんだから」
初江「でも、そこが閻架の良いところね」
閻架「俺、小さい頃に両親を亡くしているからさ」
閻架「目の前で理不尽な目に合う人がいたら、助けてあげたいんだ」
閻架「でも現実は、難しいな」
初江「あの子、妹と同じ小学校だと思うの。 通学途中にこんなことがあった、って先生たちに伝えておいてもらうわ」
閻架「ありがとう、初江」

〇教室
小野「本日からこのクラスの副担任をする小野と言います。よろしくお願いします」
女子生徒「ねえねえ、あの先生すごく格好良い!」
女子生徒「背も高いしモデルみたい!」
小野「そうだ、学級委員の永居(ながい)閻架くん」
閻架「あ、はい!」
小野「今日の放課後、頼みたい用事があるから残ってもらっていいですか?」
閻架「? わかりました、先生」

〇教室
  放課後。俺は先生のいる教室へ向かった。
閻架「先生、何の用ですか?」
小野「ああ。よく来てくれましたね」
小野「・・・お待ち申しておりました」
閻架「え・・・?」
小野「お迎えにあがりました。閻魔王」
閻架「何のこと、ですか?」
  先生が俺の額に手を当てると、眩い光が迸った。
閻架「うわあああ!!」
  次の瞬間、俺の中に流れ込んできたのは遠い過去──前世の記憶だった。
閻架「俺は・・・地獄の王、閻魔だった・・・?」
小野「はい。そして私は閻魔王の補佐官、小野篁(おののたかむら)」
小野「どうかもう一度、我々と共に地獄を再編しましょう」
小野「あなたが消えてしまったことにより地獄は解体されました」
小野「また、あなたと共に罪人を裁く他の十王も行方知れずです」
閻架「一体そんなこと、どうやって・・・」
小野「天界の力です」
小野「そして罪人は死んでも、罪を償うことのない世の中になってしまいました」
小野「どうか、もう一度地獄を再編して頂きたいのです」
閻架「そんな・・・」
小野「あなたの力で、罪人を地獄へ落とすのです」
閻架「む、無理だよ・・・ だって、俺にそんなこと出来ない!」
  俺はそう声をあげると、すぐさま教室から逃げ出した。
小野「・・・・・・」

〇男の子の一人部屋
閻架「信じられない。あんなこと・・・」
閻架「そうだ、きっと悪い夢なんだ」
閻架「疲れて教室で居眠りをして、それで・・・」

〇裁きの門

〇男の子の一人部屋
閻架「う・・・」
  記憶が脳をかすめる。
  すると、突然部屋の窓が開いた。
閻架「わわーっ!? 小野、篁・・・先生!」
小野「昔のように、篁と呼び捨てでいいですよ」
小野「このような所から失礼しますね」
小野「どうしても信じてもらえないようなので、実力行使をさせてもらいます」
閻架「一体何を・・・」

〇睡蓮の花園
  気付くと、美しい湖のある不思議な風景が目の前に広がっていた。
閻架「ここは・・・」
小野「人間が生きる世とは別世界にある、天界です」
  ふと、湖のほとりに一人の男が佇んでいることに気が付いた。
閻架「っ! この男は・・・!」
小野「あなたのご両親を殺した者です」
小野「確か幼い頃に放火で、家を焼かれて家族が亡くなったんですよね」
閻架「ああ。犯人は死刑になったって・・・」
小野「ですが、この者自身も同じような経験をし、家族を失っていました」
小野「情状酌量の余地あり、今は天界におります」
閻架「はあ!? なんだよ、情状酌量って」
閻架「俺の両親を奪った罪がそれで帳消しになるわけないだろ!!」
小野「ですが、天界はそのような判断を下しました」
小野「人間世界に転生するか、天界に行くか」
小野「これが地獄のない、今の世の中の現状です」
小野「地獄がないので今後、こちらの世の治安は荒れるでしょうね」
閻架「そんな・・・」
閻架(俺はなんとか消防隊員の人に助けてもらったけど)
閻架(どれだけ辛かったか・・・ 周りの人がどれだけ悲しんだか・・・)
閻架「・・・ふっざけるな!」
閻架「そんな理不尽、受け入れるられるわけないだろ・・・!」
小野「閻魔王の能力が、覚醒した・・・!」
閻架「俺の前世が閻魔王なら、この男に罪を償わせることは出来るよな」
小野「ええ。それこそが、あなたが出来る役割なのです」
閻架「俺が出来る、役割・・・」
閻架「わかった。はああっ!!」

〇睡蓮の花園
罪人「ひいいいっ、一体これは何だ!?」
閻架「『地獄の業火に焼かれて罪を償え』」
罪人「うわあああああああああああ!!!!!!」

〇裁きの門
  俺は男の魂が火に包まれ、炎の川に落ちていくのを見届けた。
小野「あの男はしっかりと罪を償うことでしょう」
閻架「・・・うん」
小野「天界や現世には、このような者が大勢いる」
小野「だからこそ、十王を揃えて、地獄を再編する必要があるのです」
閻架「わかっている。理不尽を許してはいけない」
閻架「罪は、償わないといけないんだ」
閻架「苦しんだ人のためにも。そして、苦しむ人を増やさないためにも」
閻架「でも・・・」
小野「葛藤しているのですか?」
小野「ご安心下さい。その葛藤や呵責はいずれ消えるものです」
閻架「罪を償わせるという目的なら、俺は地獄の再編に協力する」
小野「はっ。あなたに再びお仕え出来ること、嬉しく思います」
  篁は、俺の前に跪くと優雅に一礼した。
閻架「ところで他の十王が、どこにいるのか手がかりはあるのか?」
小野「あなたの力が復活したため、いずれ集まって来ると思いますよ」
「案外・・・」
「身近なところにいるのかもしれません」
  こうして俺は、篁と共に地獄を再編することになった。
  この物語は、もう少し続く・・・

次のエピソード:2話 二人目の王

コメント

  • 壮大な物語になりそうでワクワクしますね!
    地獄がないということは、罪を犯した者を裁く者がいない…なるほどと思いました。

  • この物語で、あらためて地獄の存在意義というものを考えさせられました。あくまでも罪を償わせるためならば地獄に一度落ちることも必要なのかもしれません。これから再編成されてどんな顔ぶれが揃うのか楽しみです。

  • ダークヒーロー的な雰囲気の物語、閻魔としての仕事に専念してしまうのか、それとも葛藤がそれを許さないのか楽しみになります

成分キーワード

ページTOPへ