お悔み申し上げます。こちら煉獄部転生課です。

無宿者

獄獣(脚本)

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〇基地の廊下

〇オフィスのフロア

〇マンションの共用階段

〇基地の廊下
立本 楓馬「四階の通信室・・・ってどこにあるんだ?」
立本 楓馬「西棟とか言われてもそもそも今どこなのか 分かってないしな・・・」
立本 楓馬「そもそも今、何階なんだ・・・?」
立本 楓馬「マップとか案内板とか階数の表示とか何にもないからなぁ・・・」
立本 楓馬「・・・・・・あっちかな?」

〇オフィスのフロア

〇マンションの共用階段

〇基地の廊下
立本 楓馬「というか・・・」
立本 楓馬「さっきから似たような景色ばっかりだなぁ・・・」
立本 楓馬「本格的に迷子になりそうだ・・・」
立本 楓馬「あ、あの人、首から職員証みたいなの下げてるし、職員の人かな・・・?」
立本 楓馬「ちょっと聞いてみるか」
立本 楓馬「すみません」
男性「誰だ・・・?」
立本 楓馬「あの、すみません。ちょっといいですか?」
男性「なんだ亡者よ」
立本 楓馬「少し聞きたい事があるんですが、職員の人っすよね?」
男性「ほう・・・」
男性「他人について聞くときは、己から名を名乗るのが礼儀と言うものだろう」
立本 楓馬「あ、すいません」
立本 楓馬「俺は、立本 ふう」
男性「だがしかしっ!」
男性「そこまで我が名を欲すると言うのであれば、よかろう!!」
男性「貴様に我が名乗りを拝聴する権利を与えてやる!!」
男性「しかと聞け!!」
男性「我は、世界の終焉を予言したかの有名なハルマゲドン伝説の立役者にして!!」
男性「優秀な医師でもあり、占星術師でもあり!類まれなる才能を抱きこの世に生れ落ちた!!」
男性「かの名高き預言者、ノストラダムスの生まれ変わりである!!」
男性「ミエール・ノストルとは我の事!!」
立本 楓馬「・・・・・・」
男性「ふっ・・・あまりの気高き名乗りに言葉も無いと見える」
男性「しかし、恥ずべきことではないぞ亡者」
男性「我が存在は貴様らよりも、遥か高みの存在」
男性「この偉大なる姿を前にして言葉を失い感動に溺れるのは自然の摂理だ・・・」
男性「ここで一つ貴様に忠告だ、立元楓馬・・・」
男性「西には、凶報が訪れる」
男性「せいぜい頭上に気を付けて歩くといい」
男性「くは、今日も哀れな亡者に我が偉大なる勇姿を見せつけてしまった・・・」
男性「ふはは・・・」
男性「はーっはっはっはっはっはっは!!!」
「はーっはっはっはっはっはっは!!!」
立本 楓馬「・・・・・・」
立本 楓馬「・・・・・・」
立本 楓馬「なんだ、今の」
立本 楓馬「・・・・・・」
立本 楓馬「・・・・・・」
立本 楓馬「此処にもそういうの居るんだな・・・」
立本 楓馬「・・・・・・」
立本 楓馬「あれ、でも俺、まだ名乗ってないよな?」
立本 楓馬「職員だから知ってたのか?」
立本 楓馬「西に凶報って嫌なこと言うな・・・」
立本 楓馬「ってか西ってどっちだ?」
立本 楓馬「・・・・・・」

〇オフィスのフロア
立本 楓馬(とりあえず戻ってこれたみたいだ・・・)
立本 楓馬(仕方ない、素直に久志方さんに聞くか)
立本 楓馬(えっと、四番窓口は、と・・・)
立本 楓馬(誰も居ないなぁ・・・奥に居るのかな?)
男性「どうしたんだい?何か用かな?」
立本 楓馬「あ、すいません。久志方さん居ますか?」
男性「あぁ、利子ちゃんなら今少し出てるけど、何か用だったかい?」
立本 楓馬「えっと、用と言いますか、聞きたい事があるんすよね・・・」
男性「僕で良ければ聞こうか?」
立本 楓馬「あぁ、ありがとうございます」
立本 楓馬「実は、行きたい場所があるんですけど」
立本 楓馬「此処に来たばっかりでよく施設内の事とかよく分かってなくって・・・」
男性「あぁ、それなら確かここに施設内の案内図が・・・」
男性「あったあった」
立本 楓馬「わ、地図っすね・・・ありがとうございます!」
男性「よければちょっとここの施設について説明しようか?」
立本 楓馬「是非お願いします」
男性「そういえばまだ自己紹介してなかったね」
男性「霊魂冥界第三支社、煉獄部転生課、四番窓口係獄卒の」
佐良布 天哉「佐良布 天哉(さらふ てんや)」
佐良布 天哉「これが僕の名前。よろしくね。楓馬君」
立本 楓馬「よろしくっす!!」
佐良布 天哉「さて、施設の案内についてだけど、」
佐良布 天哉「楓馬君が今いるここが、転生課窓口」
佐良布 天哉「後、一階には「懺悔室」「転生の間」「控室」があるね」
佐良布 天哉「「懺悔室」は主に亡者の人が転生するにあたっての覚悟とか気持ちの整理をしてもらう為に、獄卒とお話をしてもらうお部屋だね」
佐良布 天哉「「転生の間」はそのまま。亡者を魂魄に戻す場所だ」
佐良布 天哉「「控え室」は基本的に窓口係で業務にあたっている獄卒達の休憩所かな」
佐良布 天哉「後、一階の空間は、亡者の人達がテレビを見たり、椅子に座ってお喋りしたりするスペースが殆どだね」
立本 楓馬「テレビやってるんすね、こっちでも。 しかも同じ番組・・・」
佐良布 天哉「テレビは古いブラウン管だけどね」
佐良布 天哉「そろそろ買い換えたいんだけど、そんな予算は無いし、今度作ってもらおうかなんて話してたんだ」
立本 楓馬「へぇ、作れるんすか?」
佐良布 天哉「ものづくりが得意な奴が同僚に居てね」
佐良布 天哉「まあ、もう数年はあのままだろうけど」
佐良布 天哉「此処は基本的に娯楽が無いからね。テレビがあるだけでも大分違うのさ」
立本 楓馬「そういや、俺、転生するまであと42日あるって言われたんすけど、寝泊まりとか風呂とかどうしたらいいんすかね?」
佐良布 天哉「基本的に亡者だからね」
佐良布 天哉「睡眠も必要無ければ、食事だって必要ない」
佐良布 天哉「けど、生きていた頃の習慣が抜けなくて空腹を感じる人も居るし、お風呂に入れないと気持ち悪いと言う亡者も居る」
佐良布 天哉「だからね「別館」に、食堂と仮眠スペース、大衆浴場があるんだ」
立本 楓馬「「別館」すか」
佐良布 天哉「二階に渡り廊下があるからそこから行けるんだ」
立本 楓馬「へ~そうだったんすね!!」
佐良布 天哉「そうそう」
佐良布 天哉「二階には他に、ジムやプール、図書館なんかも揃ってる」
立本 楓馬「娯楽ありまくりじゃないすか!」
佐良布 天哉「まあ、殆どが本来は獄卒向けに作られたスペースだったんだけどね」
立本 楓馬「へ~」
佐良布 天哉「この施設はこんな感じかな」
佐良布 天哉「一応、他にも階や部屋はあるんだけど、亡者の人は立ち入り禁止のエリアになってるから」
立本 楓馬「え、そうなんすか?」
佐良布 天哉「そうそう、スタッフオンリーっていうか。業務に関わる事とか色々あるからさ」
立本 楓馬「四階も、すか?」
佐良布 天哉「うん、そうだね」
佐良布 天哉「立ち入り禁止エリアには、亡者の人が迷って入り込まないように、仕掛けがしてあるから万が一もないし」
立本 楓馬「仕掛けってどんなの何すか?」
佐良布 天哉「うーん・・・」
佐良布 天哉「簡単に言うと、「結界」みたいな?」
立本 楓馬「「結界」すか・・・」
佐良布 天哉「まあほんとに亡者の立元君には関係ない所だから、あまり気にしなくていいよ」
立本 楓馬「そう、っすか・・・」
立本 楓馬(まずいな・・・四階に行けないのか・・・)
立本 楓馬(しかも亡者は立ち入り禁止って事は、俺が四階に行きたい事は言わない方がいいだろうし・・・)
立本 楓馬(でも何でジャンさんは、亡者が立ち入り禁止の場所を教えてきたんだ・・・?)
立本 楓馬「・・・・・・ん?」
佐良布 天哉「どうかした?」
立本 楓馬「・・・・・・」
佐良布 天哉「・・・・・・?」
立本 楓馬「揺れてません?」
佐良布 天哉「え?」
立本 楓馬「地震じゃないすか?」
佐良布 天哉「・・・・・・?」
佐良布 天哉「言われてみれば・・・・・・?」
立本 楓馬「・・・・・・」
佐良布 天哉「・・・・・・」
立本 楓馬「・・・・・・くる!」
立本 楓馬「佐良布さん!!机の下に!!!」
佐良布 天哉「違う!!」
佐良布 天哉「地震じゃない!!」
佐良布 天哉「これは」
佐良布 天哉「獄獣だ!!」

〇美しい草原
  佐良布が指をさした方を見れば、窓は赤く染まっていた。
  噴き出たような鮮血で染まった空の下で、見た事の無い巨大な生物が雄たけびを上げていた。
  見た目は爬虫類のそれに近いが、皮膚からは粘液が滴っており、それが地面を焦がしている。
  見上げる程の巨大さに、光の無い空洞の眼窟が背筋に寒気をもたらした。
  明らかに、この世の物とは思えない悍ましい生き物だった。
  まさに地獄に棲む獣。その名に恥じない風貌をしていた。
立本 楓馬「うおぉぉおおおおおお!!!?」
立本 楓馬「でっか!!!?」
立本 楓馬「なな、なんすかあれっ!!!?」
立本 楓馬「ど、ど、どどど、どうするんすか!?」
立本 楓馬「避難、避難しないとヤバいっすよ!!」
立本 楓馬「他の人にも言わないと!!」
佐良布 天哉「あー、大丈夫だよ立本君」
立本 楓馬「え?」
佐良布 天哉「獄獣は別に珍しいものじゃないから」
立本 楓馬「え?」
佐良布 天哉「そりゃあ確かにあいつらは、此処に集まる亡者たちの魂魄を餌として狙ってくるような奴らだし、」
佐良布 天哉「基本的に冥界の生き物だから、現世の銃とか効かないし、」
佐良布 天哉「亡者なんて手も足も出ずに、傷一つつける事も抵抗することも叶わずにぺろりと食べられちゃうけど、」
立本 楓馬「説明口調で分かりやすいヤバさ!!!!」
立本 楓馬「猶更不味いじゃないっすか!!」
佐良布 天哉「僕らなら、」
佐良布 天哉「獄卒なら、問題ないんだよね」
久志方 利子「やれやれ、見回りに駆り出されたかと思えば、やはりか」
久志方 利子「全く、少しは休ませて欲しいものだ」
立本 楓馬「く、久志方さん!?」
佐良布 天哉「おぉ、待ってました!!執行係!!」
立本 楓馬「執行、係?」
佐良布 天哉「うちの仕事の花形でね」
佐良布 天哉「こうして偶に亡者を狙ってやってくる獄獣の駆除をする獄卒達の事さ」
立本 楓馬「刀持ってるのってそういう理由があったのか・・・」
佐良布 天哉「まあ、常に武器を携帯しているのは彼女くらいのもんだけどね」
佐良布 天哉「彼女が来たからにはもう安心だ」
佐良布 天哉「一種のヒーローショーみたいな感じで、文字通り高みの見物でもしていればいいさ」
久志方 利子「悪いが仕事が立て込んでるんでな。構ってやれる時間は無い」
久志方 利子「仕事を押し付けて来たアイツにも文句を言ってやりたいしな・・・・・・」
久志方 利子「・・・・・・」
  「行くぞ、兼定。」
  天然理心流―
       土の構え――
             「木枯らし」―

〇オフィスのフロア
立本 楓馬「すご・・・」
立本 楓馬「あっという間だ・・・」
佐良布 天哉「でしょ?」
佐良布 天哉「すごいよね、利子ちゃん」
立本 楓馬「あんなでっかいのに、ぴょーんって・・・」
立本 楓馬「え、ほんとにあの人、人間すか!?」
佐良布 天哉「あはは、嫌だな立本君。利子ちゃんは獄卒だよ」
立本 楓馬「獄卒って・・・ここの職員って意味じゃないんすか?」
立本 楓馬「久志方さんとか佐良布さんって、人間じゃないんすか?」
佐良布 天哉「もちろん」
佐良布 天哉「僕らは獄卒。君達亡者とは、人間とは生き物さ」
佐良布 天哉「あぁ、でもここは死後の世界だから、生き物でもないのかな?」
佐良布 天哉「まあ細かい事は僕も分かってないから」
立本 楓馬「え・・・?」
佐良布 天哉「40日と少しで居なくなる君には、関係ない話さ」
佐良布 天哉「それにしても、楓馬君」
佐良布 天哉「反応、早かったね」
立本 楓馬「え?」
佐良布 天哉「獄獣の振動に僕よりも早く気づくなんて・・・」
立本 楓馬「あぁ・・・」
立本 楓馬「俺、揺れには人一倍敏感なのかもしれないっす」
佐良布 天哉「へぇ、なんで?」
立本 楓馬「昔、小さい頃に大きな地震に遭ったんすよ」
佐良布 天哉「地震・・・」
立本 楓馬「そのせいか、揺れには敏感なのかもしれないっす」
佐良布 天哉「へぇ、そっか」
佐良布 天哉「・・・・・・」

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