妖との出会い

ヤッピー

6. 浄化の兆し、再会の想い(脚本)

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〇湖畔
ナキサワメ「・・・」
たまも「・・・居たわね。 もう、なんでこんな遠くまで吹っ飛ばしてるのよ。すっかり明るくなっちゃったじゃない・・・」
ドージ「・・・不慮の事故だ」
チビ「(ひょこっ)」
チビ「えへへ、みんな無事で良かった!」
ドージ「・・・そういやお前、なんで隠れてないでウロチョロしてやがったんだ?」
チビ「え!えーっと・・・」
メイ「あ、私見てたよ!チビちゃんが隠神刑部を引っかいてる所」
チビ「そ、そうだよ! タマモさんに向かってなんか気持ち悪いガラス玉みたいなのを向けてたから──」
チビ「引っ掻いて止めたの!」
ドージ(──さっき真菰が反応してた呪詛の入った神器のことか・・・)
ドージ「・・・そうか」
ドージ「──手柄だったな、チビ」
ドージ「(チビを撫でる)」
チビ「えへぇ・・・♡ チビ、お手柄〜・・・」
たまも「そうね・・・ありがとう、チビちゃん 助かったわ」
チビ「えへへぇ〜」
たまも(全く・・・ チビちゃんには甘いんだから・・・)
ドージ「・・・真菰」
たまも「なっ、何!?急に・・・」
ドージ「メイ達が世話になったな。 ──本当はお前を巻き込みたくなかったんだが・・・」
たまも「・・・いいわよ、別に。 この世界の管理者として、当然のことをしたまでよ」
ドージ「正直、お前がいなかったらアイツらは危なかった。・・・ありがとな」
たまも「いっ・・・いいって言ってるでしょ? もう・・・ばか・・・」
たまも「・・・ほ、ほら最後の仕上げをしましょう!ナキサワメの御尊体は残ってるから、穢れを取り除かないとね」
メイ「あ、あの・・・」
たまも「何?」
メイ「結局・・・ナキサワメって何だったの?」
ドージ「ああ── あれは水神の一種だ」
たまも「啼澤女命(なきさわめのかみ)── かつてイザナミの死に泣いたイザナギ様の涙から産まれた女神よ」
たまも「イザナギ様の、イザナミを愛する想いが命を宿らせたの・・・ あの二人から産まれた神の殆どが中つ国に残ってるけど」
たまも「どうやら隠神刑部が冒涜された神器を使って捕まえていたようね」
メイ「凄いね・・・ イザナミとイザナギって高天原から来たっていう国造りの神様だっけ?」
たまも「そうよ。・・・よく知ってるわね」
メイ「うん、おばあちゃんの蔵書に色々書いてあったし・・・ ゲームでもよく出てくるよ」
ドージ「・・・そんなすげぇ神だったのか サワメのやつ・・・」
たまも「あら、知らないで話してたの? よく綺麗な水を貰いに言ってたわよね、昔」
メイ「し、知り合いなの・・・?」
ドージ「ああ。 ・・・まぁ、昔酒造りしてた時に水を貰ってただけだ」
ミズチ「いや〜デカイっすね〜 流石水の神・・・龍神だな〜」
チビ「うにゃ! でっかいお魚さん!美味しいかな? お刺身がいいかな?」
ミズチ「・・・いやいやそれは無理でしょ」
たまも「──さて、準備はいいかしら? メイちゃん?」
メイ「え?何が・・・?」
たまも「何って・・・ ナキサワメの浄化よ。あなたにも手を貸してもらうわよ」
メイ「──ええっ!? な、なんで?私何も出来ないけど・・・」
ドージ「・・・アホ。ちゃんと説明してからにしろよ。メイは自分の血に気づいてねぇぞ」
たまも「そうなの? てっきりあんたからもう伝えてたのかと・・・」
メイ「え、え?」
たまも「・・・メイちゃん。あなた、どうしてこの妖の世界に入ってこれたのか分からない?」
メイ「う、うん・・・分からない」
たまも「結論から言うと── あなたに陰陽師の血が流れているからよ」
メイ「え、ええええっっ!!」
ドージ「──普通自分で気づかねぇか? ・・・ったく」
メイ「きっ、気づくわけないじゃん!そんなの!・・・ってことは、ドージさんは最初から私の力、知ってたの・・・?」
ドージ「・・・いやまぁ、最初は知らなかったが」
ドージ(・・・『アイツ』に雰囲気が似てたのはそういう事だったか。神通力持ちってのは皆気質が似るっつーことか・・・)
たまも「今回の一件は隠神刑部が仕組んだものよ 神通力をもつ者──神だったり、陰陽師に連なる者だったりが通った時に・・・」
たまも「その力に呼応して結界に亀裂を作り出す ──言わば『落とし穴』を仕掛けていたの」
メイ「『落とし穴』・・・」
たまも「殆どの神は避けれるし、今の現世では神通力を持った人間も少ないから大体は不発に終わるんだけど・・・」
たまも「逢魔ヶ刻で結界が妖力で張り詰めてる時だったから、そこまで強くないメイちゃんの力でも『落とし穴』が作動しちゃったみたい」
メイ「そ、そっか・・・ 廃神社を秘密基地にしてたバチが当たったのかな・・・」
たまも「・・・廃神社?私の稲荷の社がある所じゃないの・・・?」
ドージ「──っ! それよりも、メイはその、神通力ってのは使えねぇのか?」
メイ「え、えぇ・・・使えないよ・・・ ホントに私、陰陽師の力があるの?」
たまも「・・・ええ、紛れもなく本当よ。 隠神刑部はその血を使ってナキサワメの飢餓を直して使役しようとしてたみたい」
ドージ「・・・情けねぇ話だが、隠神刑部の狙いは宴じゃなくて、お前らの方だったってことに気づかなかった訳だ」
メイ「えっ・・・!」
メイ「・・・ってことは──! 分かった!」
メイ「隠神刑部が、人間の世界から陰陽師の力を持つ人間を連れてきて、その力でナキサワメノカミを使役しようとしてて──」
メイ「私とマサヤが同時に入っちゃって、マサヤだけ捕らえられたけど、 力を持ってたのは私の方だったから──」
メイ「マサヤを利用して私をおびき寄せようとしたって訳だね!」
ドージ「・・・その通りだ」
たまも「り、理解が早いわね・・・ 流石陰陽師の血筋と言うべきかしら?」
メイ「え、いやいや・・・ ほら、良くマサヤとやってるゲームとかでありがちな話だから・・・」
(どんなゲームやってんだ(のよ)・・・)
たまも「と、とにかく! 私は五行法術こそ使えるけど、 触媒なしで神様の浄化なんて出来ないの」
たまも「だからメイちゃんに私の力の触媒になって欲しいの。・・・大丈夫、私の言う通りにしていればいいわ」
メイ「わ、分かった! 私・・・頑張る!」
ドージ「・・・そう力むな。 ほら、オレも力を貸してやるからよ」
メイ「・・・! うんっ!」
ナキサワメ「──(パチッ)」
チビ「うにゃぁっ!? お、起きた・・・」
ナキサワメ「・・・」
ミズチ「あ、あれ?動かない・・・?」
ドージ「体の蝕みが収まってるんだろうよ とてつもない空腹は収まってないだろうが・・・」
たまも「・・・安心して。 すぐに鎮めるから──」
たまも「さぁ、メイちゃん。 さっき教えた通りに・・・」
ドージ「──胸張っとけ。 お前は今、大妖怪二人分の力を借りた 一流の陰陽師なんだからよ」
メイ「──うん!」
メイ「スゥ──っ・・・」
メイ「中つ国を正せし神の系譜よ── 悪しき心を断ち阻み、 いにしへたる無垢へと回帰せよ!」
ドージ「・・・!」
メイ「六根清浄──呪詛撃滅── 急急如律令!」
ナキサワメ「・・・」

〇湖畔
メイ「・・・っ! ド、ドラゴンが・・・ おっ・・・」
「──女の人になったーーー!?」
ミズチ「わ、わ〜お・・・ べっぴんさんだー・・・」
チビ「うにゃ・・・ お魚さんじゃなくなっちゃった・・・」
サワメ「う〜・・・ 何これ・・・体がすっごく痛い・・・」
ドージ「ははっ、そりゃあんだけ大暴れしたら痛くもなるわな」
たまも「・・・どっちかと言うとあんたの攻撃のせいじゃないかしら?」
サワメ「・・・んん?」
サワメ「あれ〜っ! ドージ?タマモ!?久し振り〜っ!」
たまも「・・・変わりませんね、サワメ様。 さっきまであんなに大暴れでしたのに」
サワメ「う〜、なんか嫌な気分だったのは覚えてるけど・・・ ぼや〜っとして、あんま覚えてないんだよね・・・」
ドージ「ったく──何百年振りだ? 人間の世界に戻ったって聞いたが・・・」
サワメ「あ、うんっ!現世に戻ったあとは── ずっと川で遊んだり〜・・・ ワダツミの所まで泳いだりしてた!」
たまも「それはとても・・・ お暇だったんですね」
サワメ「ぶ〜、暇って言うな暇って! 八百万も神様が居たらやる事ないの! 井戸の中は暗くてつまんないしっ!」
ドージ(だからそれが暇なんじゃねぇか・・・)
たまも「──それで・・・そんな貴方様が、 どうしてまたこっちの世界に来て、あんな風に暴れ回ることになったのですか?」
サワメ「うう・・・それはね・・・ ──毎年、オオクニヌシの所に遊びにいく日、あるじゃん?」
ドージ「・・・いや分かんねぇよ 『神無月』のことか?」
サワメ「かんなずき?」
たまも「──出雲大社へのご参拝の時・・・ですか?」
サワメ「そうそう!その時! 私もその時たまーに遊びに行くんだけど」
サワメ「皆酔っ払っててつまんなかったから 清流の沢を探しに辺りの山に遊びにいったんだ」
ドージ「・・・出雲って言やぁ、 刑部の出身地じゃねぇか」
サワメ「そうそう!その刑部がね! 私が山で遊んでたら急に出てきて・・・」

〇山中の川
サワメ「わ〜い、ザッブーン──!」
サワメ「やっぱ流れるお水が一番だね〜 井戸の中は全然楽しくないし・・・」
  ヒソ・・・ヒソ・・・
「・・・あれ、出雲大社に来てる神だよな なんで妖の山に来てやがるんだよ・・・」
「神無月には俺たちのテリトリーに入って来ないって約束だったはずだろ・・・」
「お、おい・・・誰か追い出せよ・・・」
「無理だろ!あんな力の強い神・・・ 近づいただけで祓われちまう・・・」
サワメ「──っは〜!最高〜! ぅぅ〜っ、やぁーっ!!」
「うわぁぁぁ──!!」
サワメ「んん??なんか聞こえた?」
  しーー・・・ん──
サワメ「──気のせいか! それ〜っ!」
  ・・・
隠神刑部「俺のシマで暴れ回ってる祟り神ってのはアイツか・・・?」
妖「は・・・はい・・・ もう手に負えなくて── 近づくことも出来ません・・・」
隠神刑部「・・・仕方ない 俺がヤツをとっちめてくる」
サワメ「〜♪」
隠神刑部「──やあ こんにちは、得体の知れない神よ」
サワメ「──わっ!ビックリした・・・」
サワメ「あなたは? あなたも清流の心地良さを堪能しにきたの?」
隠神刑部「・・・ええ、似たようなものです。 出雲大社へいらっしゃったのですか?」
サワメ「うんっ!久しぶりに家族の皆と会えるかな〜って!」
サワメ「でもね、私が行った時にはみーんな酔っ払っててつまんないの・・・」
隠神刑部「・・・そうでしたか。 それは心痛みますね」
隠神刑部「ところで・・・ 貴方の母親は伊邪那美命(いざなみのみこと)ではございませんか?」
サワメ「そうだよ!」
隠神刑部「でしたら── 実は私、彼女の遺品を持っているのです。ご家族の方に渡せる日を待っておりました」
サワメ「えっ!?イザナミ様の遺品・・・?」
隠神刑部「こちらへ来て下さい・・・ お渡ししますよ」
サワメ「うんうん、分かった!」
隠神刑部「・・・」

〇湖畔
「・・・」
サワメ「・・・そしたらね!変なおっきい洞窟に連れていかれて、中に閉じ込められちゃったの!」
サワメ「私、淋しくてずーっと泣いてて・・・ 洞窟の中が水浸しになるまで泣いてた・・・」
ドージ「あー・・・ それで力尽きて眠った後に・・・」
たまも「刑部に封印された訳ねぇ・・・」
サワメ「そうだよ! ──あれ、なんで言う前に分かったの?」
ドージ「・・・いやまぁ、ただの憶測だよ」
たまも「それは・・・お気の毒に・・・」
ドージ「(その時居たのが当時の俺だったら、 ぶっ殺してるかもしれねぇな・・・)」
たまも((──先代玉藻様だったらきっと、 人・・・神質にでもして、出雲大社に殴り込みに行ってるわね・・・))
サワメ「でも、こうしてまた皆と会えたから── 結果オーライかなっ!」
ドージ「いや良くねぇよ!アホ! 二度と妖のテリトリーで暴れんなよ!」
メイ(は、話に入れない・・・ なんか凄い物騒な話してる・・・!)
サワメ「ん・・・? んんん・・・?」
サワメ「さっきの可愛い人間の女の子っ!」
メイ「あっ・・・え、ええと・・・」
サワメ「ねぇねぇ、キミが私のこと浄化してくれたんでしょぉ?」
メイ「あ、うん・・・はい、そう・・・ですよ」
サワメ「ありがと〜っ! 私、あの狸に騙されちゃってね、 色々と塞ぎ込んでたんだ!」
サワメ「こうやって楽しく居られるのはキミのおかげだよ!ありがとっ」
メイ「う、ううん! 私は全然、何もしてないよ・・・」
ドージ「・・・悪ぃな、メイ。 神ってのは大体がバカなんだ。 コイツは特にな・・・」
サワメ「コラ〜!誰が馬鹿ですってぇ〜?」
たまも「い、いえいえ・・・ サワメさんは純粋なお方ですよ とっても・・・」
サワメ「ふーん、そっか! ・・・ってかお腹空いた! 久し振りにタマモの社でパーティしよ!」
たまも「あ〜──はいはい、良いですよ。 ──久し振りですものね・・・」
ミズチ「いや〜・・・ ナキサワメっての、昔一度聞いたことはあったけど・・・女の子だったんだね」
チビ「うにゃ? サワメさんって神様なの?」
ミズチ「うん、そうだよ。 ・・・あの天真爛漫さは神そのものだね ──ほんと、神ってのは喜怒哀楽が激しくて面倒臭いよな・・・」
サワメ「あっ、そういえば── メイちゃん!」
メイ「何?」
サワメ「そこの男の子、呪痕のせいですごーく 深い眠りに落ちちゃってるよ。 起こしてあげようか?」
メイ「えっ!?マサヤ、そんな状態だったの?」
たまも「ごっ、ごめんなさい、メイちゃん・・・ つい私たちの感覚で『少ししたら』って言ったけど・・・」
たまも「一年や二年は人間に取っては長いわよね・・・」
メイ「そ、そんなぁ・・・」
サワメ「安心してっ! 私の奇跡で払ってあげる!浄化してくれたお礼だよっ!」
メイ「ほっ・・・ほんと!? ──お願いしますっ!」
サワメ「はーいっ ──それっ!」
マサヤ「うぅ・・・ ん・・・?」
メイ「──っ!マサヤっ!」
マサヤ「痛──ッ!?・・・えっ!? メ・・・メイ!?メイなのか?」
メイ「うんっ!良かったぁ〜 マサヤが無事で、本当に・・・」
マサヤ(俺・・・気を失ってたのか。 いつの間に俺の事、助けてくれたんだ?)
メイ「体は痛くない?どこか怪我してないよね?大丈夫?」
マサヤ「わ、分かったからくっ付くなよ! 恥ずかしいだろ!」
メイ「あ、ゴメン・・・ つい、飛び込んじゃった・・・」
「・・・」
マサヤ「・・・ あー・・・えーっと・・・」
メイ「あ・・・ えっと・・・」
サワメ「えへへっ!感動の再会ってヤツ? かーわい〜っ!」
「──っ!」
サワメ「ほらぁ、もっとなんか無いの? ギューってしたり、チューしたり! 縁結びの願掛けならしてあげるよ〜っ?」
マサヤ「そっ、そんなことする訳ないだろ!」
メイ「そ、そうだよっ! そんな風に茶化さないでっ!」
サワメ「え〜っ、なんで──」
  グイッ──
サワメ「──わぁっ!?」
ドージ「早くこっちこいサワメ・・・ 二人にしてやれよ」
サワメ「何よ〜っ、もうっ!」
マサヤ「──ったく、なんなんだよアイツ・・・」
メイ「──マサヤっ・・・ 本当に、無事でよかった・・・!」
メイ「(マサヤに抱き着く)」
マサヤ「う・・・なんだよ、お前まで──」
メイ「うう・・・ メイ、頑張ったんだよ・・・? ずっと、マサヤのこと探してたんだから」
メイ「怖い所にだって行ったし、あの隠神刑部って人にだって立ち向かったんだから!」
マサヤ「お、俺の為に・・・? メイ──!」
メイ「う、うう・・・ ううう──」
メイ「うわぁぁぁぁんっっ!!!」
マサヤ「ば、ばか、泣くなよっ・・・」
マサヤ「う、うう・・・」
マサヤ「ううう〜──!」
たまも「うっ・・・ グスッ・・・」
ドージ「・・・なんでお前まで泣いてんだよ ──ったく・・・」
ミズチ「やれやれ・・・ これで一件落着、ッスね!」
チビ「うにゃっ! 二人とも再会出来て良かった〜 お疲れ様っ!ドージさん!」
ドージ「はっ、この程度余裕だっつーの」
ドージ(・・・)
ドージ(最後までしっかりとスジ通したな・・・ お前は強ぇよ、メイ・・・)

〇森の中
伝書雀「チュン・・・チュン・・・」
「ん・・・んん・・・」
伝書雀「チュンッ!!」
  バサバサバサッ──
隠神刑部「・・・」
隠神刑部「・・・!」
隠神刑部「俺ァ・・・負けたのか・・・」
隠神刑部「・・・情けねぇ。彼我の力量差も考えずにぶつかって、ぶっ飛ばされて──」
隠神刑部「ここで終わるのか・・・」
隠神刑部(・・・)
「刑部様〜っ!」
隠神刑部「──っ!」
信楽「良かった・・・! 此処に居られたのですね!」
隠神刑部「・・・信楽」
信楽「さっきまで土砂降りでしたが・・・ 刑部様は雨に打たれませんでしたか?」
隠神刑部「・・・さあな」
信楽「その、刑部様・・・ 申し訳ありません、俺が酒呑童子を倒せなかったばっかりに・・・」
隠神刑部「お前の落ち度じゃない。 俺の作戦に不備があったんだ・・・ もうほっといてくれ」
信楽「刑部様・・・」
信楽「そんなこと、出来ませんよ・・・」
隠神刑部「俺はもう敗れた・・・ お前らのアタマ貼るには役不足だ」
信楽「・・・しっかりして下さい!刑部様! 貴方ともあろうお方が、一度の失敗で諦めるのですか!」
隠神刑部「信楽・・・」
信楽「私達のボスは刑部様だけです! 出雲の妖怪共をまとめて取り仕切ってた偉大なる隠神刑部だけが、私達のボスです!」
隠神刑部「・・・」
信楽「・・・また一から行きましょう!」
信楽「私は何処までも着いていきますよ・・・刑部様・・・!」
隠神刑部「──ははっ、仕方ねぇな・・・ お前に慰められてるようじゃ、俺もまだ修練が足りねェ・・・」
隠神刑部「一から鍛え直しに出雲に戻るぞ! 着いてこい!信楽っ!」
信楽「──っ!はいっ!刑部様!」
伝書雀「チュンっ♪」

〇大きな日本家屋
菊千代「嵐は止んでるぞ ほら、お前らも帰れよ」
妖「かたじけない・・・ よもや酒呑童子の部下に助けられようとはな・・・」
菊千代「気にすんなっ! 屋敷ぶっ壊してせいせいしたしな!」
妖「そ・・・そうか・・・」
「キクさーんっ!」
チビ「にゃーんっ!」
菊千代「チビッ!無事だったんだな! よ〜しよしよーし──」
チビ「えへへへっ〜 チビお手柄だったんだよ!」
菊千代「そりゃよく頑張ったな! 偉いぞ〜っ」
菊千代「ん──!」
ドージ「・・・! よう、菊。上手く纏めたみたいだな」
菊千代「ドージィ〜っ!」
菊千代「──ってげぇぇ! 玉藻までいんじゃねぇかよ!」
たまも「・・・あら、居たら何か悪いことでも?」
ドージ「ま、色々あってな──」
「酒呑童子様──っ!」
ドージ「おう、お前ら!よくやったな! こっちはお前らのおかげで成功した! 恩に着るぜ!」
菊千代「──ったりめぇだ! ウチらが手ぇ貸して、上手くいかねぇ訳ねぇだろっ!」
ドージ「うしっ!テメェら! 玉藻ン所で打ち上げすんぞ! 着いてこい!」
「うぇ〜い!」
たまも「ちょっと・・・ そんな大勢で来ていいなんて言ってないわよ・・・」
サワメ「いいじゃんいいじゃん! 宴も祭りも飲み会も、いっぱい居る方が楽しいしっ!」
たまも「はぁ・・・ もう、また社が壊れるわ・・・」
マサヤ「──すげぇ大漁の妖怪・・・ これ全部お前の味方か?」
メイ「うん!ドージさんが菊千代さんに頼んで、連れてきてもらったんだよ!」
ミズチ「ま、宴に参加しろって言っただけだけどな〜」
マサヤ「スッゲェ・・・!」
メイ「ふふんっ、どれもこれもマサヤの為だったんだからっ!」
マサヤ「酒呑童子さん、って言うのか あの鬼・・・!カッケェ──」
メイ「ふふんっ ドージさんはかっこいいんだからっ!」
ミズチ「はは・・・ なんでメイちゃんが得意げなんだい?」
  スッ・・・
女将(ふふ、派手にやったじゃないか童子 これで、隠神刑部のシマはアタシらのもんさね・・・)
お蜜「話しかけなくていいんですか〜? 私、本物のタマモさんに逢いたいな〜っ」
女将「アタシらは何もやっちゃいないだろ。 童子に貸しを作れただけでいいんだよ」
お蜜「ふ〜ん、変なのぉ〜っ」
女将「さ、戻るよお蜜。 刑部のシマだった所に手を回すんだ。今日から大忙しだよ」
お蜜「えぇー・・・やだ〜・・・」

〇神社の本殿
サワメ「いえーいっ!久し振りぃ! いっぱい飲むぞーっ!」
たまも「ちょ、ちょっとサワメ様! 本殿じゃなくて境内の方に行ってくださいっ!」
菊千代「おいドージ!サシで呑むって『約束』だっただろ!」
ドージ「アホ抜かせ、『一緒に』呑んでやるとしか言ってねぇよ!」
菊千代「──はぁっ!?」
菊千代「ドォォジィィィィイ〜────!!」
ミズチ「・・・っとまぁ── 俺らの宴は凄く荒々しいんだ・・・ メイちゃんとマサヤくんは本殿に居なよ」
メイ「気遣ってくれてありがとう、ミズチさん ・・・でも、私もみんなと一緒に盛り上がりたいな・・・」
マサヤ「俺も・・・腹減ったから行きてぇな」
チビ「うにゃ! そしたら二人とも、チビの近くで参加するといいよ!」
マサヤ「なんか変わるのか?」
チビ「チビはお酒じゃない飲み物だから、二人も一緒に飲めるよ!」
メイ「うんっ、分かった!」
ミズチ「くれぐれも怪我とかしないように・・・ 気をつけなよ──」
「おう!(うん!)」

〇古民家の居間
たまも「──いい? 私の言うことをよく聞きなさい!」
たまも「あんたら鬼は外、外! 酔っ払ってなんか壊したら祓うからね!」
菊千代「ひゃ〜おっかねぇ・・・ 冗談通じねぇからな玉藻には・・・」
たまも「何?」
菊千代「ギャッ──! おいドージッ!さっさと酔わせちまえ!」
たまも「ふふっ・・・バカね。 私がお酒に酔う訳無いでしょ・・・」
ドージ(ウソつけ・・・)
チビ「にゃっ! ドージさんっ!飲みすぎちゃダメだよ!」
ドージ「心配すんなって。 こんな時くらい呑んだっていいだろ?」
たまも「あーサワメ様、今回は御神酒を沢山用意してありますが・・・ くれぐれも酔って龍に変身して物を 壊さないようにお願いしますね」
サワメ「うんっ! 壊さないように変身するね!」
たまも「──変・身・し・な・い・でっ!下さい!!」
メイ「ふふっ、とっても和やかだね」
マサヤ「結構物騒な話が飛び交ってるように感じるんだけど・・・」
メイ「そうかな?」
マサヤ「・・・お前結構肝が据わってるよな」
サワメ「お〜いっ、二人とも!」
サワメ「お酒は呑めないでしょ? 綺麗なお水は居る?」
メイ「うん!欲しいなっ」
マサヤ「俺も欲しい! 子供用の甘酒ってそんなに好きじゃくて」
サワメ「はーいどーぞっ 搾りたてだよぉ〜っ」
メイ「ありがとう!」
マサヤ(し・・・搾りたてって・・・ 一体何処から・・・)
サワメ「・・・んん〜? マサヤ君、なーんか変な想像してない?」
マサヤ「なっ── し、してねぇよ!」
サワメ「ふぅ〜ん?そうなの?特別に私のお水、 直接マサヤ君に飲ませてあげようかと思ったのになぁ〜?」
メイ「ちょ、ちょっとサワメさん!」
マサヤ「ば、バカにすんなっ!」
サワメ「なぁ〜んて、冗談に決まってるじゃない ・・・ひょっとしてぇ、 本気にしちゃったぁ?」
マサヤ「べっ、 別に本気になってなんかないし・・・」
サワメ「わっ!」
ドージ「お前はこっち来い、アホ女」
サワメ「アホってゆーな!アホって! 神様だぞっ!」
  グイッ──
サワメ「あ〜んっ!もうっ! 引っ張んないでぇ〜っ」
マサヤ「ほんと、なんなんだよ・・・」
メイ「マサヤ・・・ ──ほんとに変な想像してたの?」
マサヤ「してねぇよっ!」
  一同は思い思いに宴を楽しんだ・・・

次のエピソード:7. 巡る想い、色褪せない思い出

コメント

  • ひとまず良かった良かったですね
    チビちゃん推しですが
    ドージの子分ミズチ、刑部の子分信楽の好感度アップ

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