なんでも武器屋『古今東西』へようこそ。(脚本)
〇森の中の小屋
ここが・・・
アルベール「噂の『伝説の武器屋』か・・・」
俺の名は
『アルベール・バルド・クロス』。
伝説の武器を求めて旅をしている。
〇西洋の城
俺は王都で騎士候補生をしていた。
ある日、国王陛下の思いつきで国中に
お触れが出された。
『翌年の◯日より、武術大会を行う。』
『武器はなんでも可。体術も魔法も可。己の得意技で勝利を掴め!』
『優勝者には可能な限り、どんな願いでも叶えよう。』
『老若男女身分問わず参加は自由。腕に自信ある者は是非参加せよ!』
アルベール(優勝すればどんな願いでも叶う!)
アルベール(陛下に実力を示せば、念願の騎士になれる・・・!)
アルベール(いや、それどころか身分の高い地位にのし上がれる!)
こう見えても俺は伝説の勇者の末裔だ。
先祖の功績でかつて我が家は『公爵』の
地位にあったのだ。
アルベール(今は訳あって『男爵』の位にまで 下がったが・・・)
アルベール(これは大チャンスだ!)
〇古い洋館
しかし、勇者の末裔と言っても現在は
しがない貧乏男爵。
古の勇者が使っていた武具は、資金繰りの為に売りに出されて手元にはない。
何も出来ずに途方に暮れてたが・・・
そんな中で行商人から『伝説の武器屋』の噂を聞いた。
その武器屋はどんな武器でもすぐに用意ができる伝説の武器屋。
その武器は呪いだろうが、伝説だろうが、なんでも作れるらしい。
先祖の武器があれば、俺は大会に出場できる・・・
俺は行商人から武器屋の場所を聞き、
旅に出たのだった。
〇森の中の小屋
──そして現在に至る。
アルベール「まさかこんな樹海の中にあるとは 思わなかったが」
アルベール「こいつは期待できそうだ・・・!」
〇鍛冶屋
店主「いらっしゃいませ!」
店主「武器屋『古今東西』へようこそ!」
アルベール「ここに伝説の武具が手に入ると聞いているのだが?」
店主「はい、ここはなんでも武器屋」
店主「古今東西の色々なモノを取り揃えております」
アルベール「俺は『アルベール・バルド・クロス』」
アルベール「古の勇者が使っていた武具が欲しい」
店主「ああ!古の勇者の一族でしたか」
店主「昔はかなり栄えていたけど」
店主「過去の栄光に縋り付いて、歴代の当主たちが私利私欲の為に散財したあげくに」
店主「詐欺師に引っかかり、借金返済の為に資産のほとんどを失い没落していった」
店主「まさに栄枯盛衰な伝説を残した、 あのクロス男爵ですか!」
アルベール「・・・我が家の汚点をあまりえぐらないでくれるかな?」
店主「すみません、私、嘘が嫌いなので」
アルベール「コホン!」
アルベール「『嘘が嫌い』ということは、勇者の武具は確実にあるのだな?」
店主「はい、厳密に云うと少し違いますが」
店主「文献を元に、当時使用されていた武具を 忠実に再現して創っている感じですね」
店主「悪く云えば複製品ですが、性能は本物と 変わらないですよ」
アルベール「なら問題はない」
アルベール「古の勇者の武具一色をもらいたい」
アルベール「金はいくらでも出す」
店主「古の勇者の剣でしたら、こちらになります」
アルベール「おお・・・ 確かにこれは伝説の剣・・・」
店主「それでは、男爵様の能力を伺います」
アルベール「能力?」
店主「”──”」
アルベール「な、なんだ?」
店主「能力鑑定の魔法です」
店主「お客様の能力に合わせて武具をお渡しするのが、店のルールです」
アルベール「そうなのか?」
アルベール(魔法なんて初めて見た・・・)
店主「男爵様の能力を判別したところ・・・」
店主「この武器を扱うには相当修行が必要になりますが、よろしいですか?」
アルベール「なっ!?俺では扱えんと言うのか!?」
アルベール「本物ならともかく、これは偽物だろう!?」
アルベール「偽物なら誰でも使えるんじゃないのか!?」
店主「確かにこの商品は偽物でございますが」
店主「攻撃力は忠実に再現しているので」
店主「素人の方に持たせるのは危険という事です」
アルベール「俺は騎士候補生だぞ!」
アルベール「この俺が素人の筈あるかぁ!」
店主「でも男爵様は騎士『候補生』であって、 『プロ』の騎士ではありませんよね?」
店主「正式な騎士ではないのに、あまり威張れる立場ではない気が・・・」
アルベール「だったらこの場で俺と勝負しろ!」
アルベール「武器屋を名乗るのだから、お前も素人じゃないのだろう!?」
店主「まあ、確かに・・・」
アルベール「安心しろ、俺は本気は出さん」
アルベール「俺も騎士の端くれ、 手加減はしておいてやる」
店主「仕方ありませんね」
店主「でも、私は見ての通りの可憐な乙女」
店主「着替えてきますから、外でお待ちください」
アルベール「ああ・・・」
店主「・・・あの人、本当に勇者の末裔ですか?」
〇森の中の小屋
アルベール「・・・」
「お待たせしました!」
店主「模擬戦用の武器をお持ちしました」
店主「これで本気出しても、命に別状ないので 安心してお使い下さい」
店主「多少の痛みは感じますが」
アルベール「・・・アンタ、本当に勝負する気だったのか?」
アルベール「さっきは頭に血が上って あんな事言ったけどさ」
アルベール「やっぱり女の子に喧嘩売るのは、紳士に あるまじき行為だし」
アルベール「俺も言い過ぎたし、悪かったと思っている」
アルベール「だから、やめにしないか?」
店主「大丈夫ですよ」
店主「元より模擬戦は行う予定でしたし!」
アルベール「は?」
店主「先程も言いましたが、男爵様の実力では あの武器は扱えません」
店主「なのでここで模擬戦をして 男爵様の力を底上げさせます」
アルベール「つまり修行しろって事か?」
店主「まずは自分自身の力を理解するのが 大事ですから」
店主「思いっきりやっても大丈夫ですよー」
店主「私は男爵様よりかは強いですよ?」
アルベール「・・・言ったな?本気でやるぞ」
店主「いつでも構いませんよ」
アルベール「男爵家の名において、正々堂々戦おう」
エンブ「武器を先に落としたら負けですよ」
エンブ「いざ・・・」
「勝負!!」
〇森の中の小屋
店主「はっ!」
アルベール「!」
アルベール「せいっ!」
店主「はいっ!」
店主「私の一撃を受け止めるとはやりますね」
アルベール「候補生と云えど、訓練しているからな」
店主「では、これはどうですか?」
アルベール「・・・ッ!」
店主「剣を落としたので、勝負ありです!」
アルベール「・・・参りました」
アルベール「この俺が一撃も当てられないなんてな・・・」
店主「でも私の一撃を受け止められるのは 御立派ですよ?」
店主「大抵の人は、私の一撃で『骨折』しちゃいますから♪」
アルベール「・・・アンタ、一体何者なんだ?」
店主「しがない武器屋の店主ですよ?」
〇鍛冶屋
店主「話は戻しますが・・・」
店主「現在の男爵様の実力では この剣は扱えません」
店主「試しに持ってみて下さい」
アルベール「!?」
アルベール「なんだ!?この重さ!?」
アルベール「この剣、こんなに重かったのか!?」
店主「それが『真剣』と『模擬剣』の違いですね」
店主「あなたは騎士候補生ですから、今まで模擬剣で訓練されていたのでは?」
店主「真剣の素材は『鋼』や『鉄』なので 相当重いですよ」
店主「尤も本物の勇者の剣は、精霊の力が宿っているから軽いかもしれませんが」
店主「流石にこちらでも、剣の重さを再現するのは難しいですね」
アルベール「・・・武器屋視点から見て、俺はどれくらい修行すればいいんだ?」
店主「ざっと3年はかかりますね」
アルベール「それじゃ大会には、間に合わないな」
アルベール「せっかくここまで来たのに・・・」
店主「そこでお客様には、どちらかコースを選んでいただきます」
アルベール「えっ?」
店主「①先程の剣は諦めて、別の武器を買う」
店主「②武器の形はそのままにして、滅茶苦茶 性能を下げて軽い武器にする」
店主「③超短期間で修行して、武器を買う」
店主「どちらになさいます?」
アルベール「②の『性能を下げる』ってどういう事だ?」
店主「男爵様でも扱える武器に作り直すという 意味です」
店主「尤も、子供の玩具位まで下がりますが」
アルベール(勝負に負けた手前、反論できない・・・)
アルベール「③の『超短期間』というのは?」
店主「当武器屋が所有する特別な訓練所で 修行するというものです」
店主「通常1年かかる修行を一月に短縮できます」
アルベール「そんなことが可能なのか!?」
店主「はい! ここは『なんでも武器屋』ですから!」
店主「武器とは別料金で値が張りますが、 いかがいたします?」
アルベール「・・・・・・」
アルベール「俺は、勇者の末裔にして貴族でもある」
アルベール「その誇りにかけて、修行する!」
店主「まいどあり~」
店主「これからビシバシ鍛えますからね」
店主「『アルバ』さん!」
アルベール「『アルバ』?」
アルベール「俺の名前は『アルベール──」
店主「長いし、堅っ苦しいから『アルバ』で!」
店主「これからしばらく一緒にいるんだし!」
エンブ「私の事は『エンブ』と呼んで下さい!」
アルバ「『アルバ』か・・・ まぁ、悪くない響きだ」
アルバ「これからよろしく頼むぞ、エンブ!」
エンブ「・・・アルバさん、 口の聞き方に気をつけて下さい」
エンブ「ここでは私が『師匠』なので、 礼儀をわきまえて下さいね?」
アルバ「エンブさん、失礼しました・・・」
──かくして俺は、伝説の武器屋で
勇者の武具を手にする為に
エンブ『師匠』の元で修行する事となった。
〇黒
アルバ「俺は諦めねぇ・・・」
アルバ「絶対強くなってみせる!!」
こんにちは!
エンブ強くて可愛くて魅力的ですね!
どんな修行なので強くなっていくのか続きが楽しみです
魔法も使えるし武道も一流だし、エンブはタダ者じゃないですね。東洋と西洋のハイブリッドな雰囲気もいいなあ。修行を経てアルベールの腕がどれだけ上がるのか今から楽しみです。支払いの方は今から心配ですが…。