彷徨えるタマシイ(脚本)
〇仮想空間
この世の中に、人の眼にはみえない
それでも確かに存在するものがある
その肉体が消滅しても、無念の思いを背負い、いまもなお彷徨い続ける存在
それが・・・
タマシイ
〇荒廃した街
その命を暴力的に奪われた者・・・
〇渋谷のスクランブル交差点
騙され、すべてを失い、絶望の果てに自ら命を絶った者・・・
〇宇宙空間
無念の思いで遂げられた死の数だけ、タマシイは吐き出され、彷徨い、いつの日か、荒れ狂っていった
荒れ狂ったタマシイは、新たな暴力、憎しみ、裏切りを増長し、勢いを増すばかり
もはやヒトの手ではその勢いを鎮めることができないほどになっていった
タマシイによって吐き出された憎しみが、無念の死を生み、そして新たな彷徨えるタマシイが誕生する
ヒトはその無限ループに恐れ、慄き、絶望の淵に立たされていた・・・
そんな世の中を救うべき、ある職人集団が現れた。彼らが提案したのは、荒れ狂うタマシイを鎮めるのではなく
新しい生きた要れるモノを提供すること
それを作れる職人集団
それが・・・
容れモノ師
〇貴族の応接間
ミヱ「ご主人様、ただいま戻りました」
神月わたる「ご苦労だったな、ミヱ」
ミヱ「とんでもございません。役目を果たしたまで」
神月わたる「調査の結果は?」
ミヱ「まだ増加傾向にはあるものの、要れモノには満足頂いているようで、狂暴化の度合いはおさまりつつあるようです」
神月わたる「そうか、案外、与しやすい連中だったな。あまり賢くなかったというべきか」
ミヱ「ご主人様。畏れながら、そのような発言はいまは控えるべきかと。裏があることを奴らに勘繰られるのは得策じゃないかと」
神月わたる「わかってるよ、ミヱ。案ずるな」
ミヱ「スミマセン、出過ぎたマネを」
神月わたる「いや、お前がいてくれて助かるよ」
ミヱ「ありがたき、お言葉」
神月わたる「まだタマシイは増加傾向にあるんだったよね?要れモノは足りてるの?」
ミヱ「ご主人様を追放した影響がモロに出ているようで数も不足、さらにはクオリティに不平を漏らすモノも出つつあるようです」
神月わたる「だと思った」
神月わたる「ミヱ、お前ならどう思う?奴らはどんな手を打ってくると?」
ミヱ「奴らというのは、この場合、どちらを指しているのでしょう?」
神月わたる「両方だね。タマシイと、容れモノ師の連中さ」
ミヱ「クオリティ面で不満を抱いているモノを鎮めるため、ご主人様にそのうち泣きついてくるのではと・・・」
神月わたる「じゃあ、タマシイのほうは?」
ミヱ「そこです。私にはご主人様の意図がまだわかり兼ねますゆえ・・・」
神月わたる「ふふ。ミヱ、お前は賢いな」
ミヱ「これまたありがたき、お言葉」
神月わたる「とりあえず連中が泣きついてきた場合に備えて、準備しておかないとな」
ミヱ「ご主人様、もしよろしければ作成中のものを、お見せいただけないでしょうか。芸術の域に達したご主人様が創った要れモノを」
神月わたる「いいよ。これだ」
ミヱ「これはまた、美しい・・・」
ミヱ「さすがの腕前でございます」
神月わたる「さっきの話だけど」
ミヱ「さっきというのは・・・」
神月わたる「要れモノ師の連中が泣きついてくるんじゃないかって話。あの女はそれを許さないだろうなと思ってさ」
ミヱ「あー。あれはプライドが高いですから。ご主人様に張り合おうなどと・・・」
神月わたる「まあ、いいんじゃない。正直、あっちがどう出てくるか、楽しみではある。才能ある女ではあるからね」
とても興味をそそられる世界観と物語設定ですね!さらには、容れモノ師間での対立(?)もあるようで、これからどんなストーリー展開になるのか楽しみな第1話ですね!
棺という意味も持つ言葉である「容れ物」に無念のタマシイを入れるという発想にまず驚きました。生きた容れ物とはまさか…と思っていたらやはり人型なんですね。だから物じゃなくてモノなのか…。この容れモノがどんな存在として描かれるのか、2話以降が楽しみです。