生きた棺桶(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
「道路の真ん中で突っ立ってんじゃねえよ!! 轢かれてえのかよ!!」
「聞こえてんのか、てめえ。 さっさと道を開けろって言ってんだよ!!」
通りすがりのドライバー「聞こえてんのか、てめえ!!」
通りすがりのドライバー「おいっ!!」
通りすがりのドライバー「なんだ、コイツ。俺、何もしてねえぞ」
通りすがりのドライバー「俺は何もしてねえんだからな」
「何なに──」
「もしかしてさっきの人、ひき逃げ!?」
「でもさあ、この人、何も傷ないよ・・・」
「生きてるよね・・・」
「でも・・・どうして動かないの!?」
XXXXXX(なんだ、体が動かない・・・ アイツら、欠陥品を寄こしやがったか)
XXXXXX(まあいい、こいつらが治してくれるだろ)
如月みずほ「はーい、皆さん、近づかないで── 緊急搬送しますので──」
如月みずほ(和也、早くしなさい)
XXXXXX(おいおい、こいつら何するきだ?)
如月和也(そう急かすなって、姉上)
XXXXXX(おいおい、待て── お前ら、何・・・やってんだ・・・)
如月みずほ(はい、ミッション、コンプリート。 和也、あとの報告、お願いね)
如月和也(はいはい)
容器23A-01、回収完了
〇貴族の応接間
ミヱ「ご主人様、ただいま、戻りました」
神月わたる「お帰り、ミヱ。で、どうだった?」
ミヱ「さすが、ご主人様。読み通りでございます」
神月わたる「だよねー 生きた棺桶できたか・・・」
ミヱ「生きた棺桶・・・」
神月わたる「生きたまま、体を動けなくして、タマシイを封じるつもりなのさ」
ミヱ「ご主人様、ひとつお伺いしても?」
神月わたる「いいよ」
ミヱ「今は封じ込めても、いずれ肉体が滅びれば、タマシイは離れられるのでは?」
ミヱ「そうすればこの仕打ちに逆上したタマシイが、再び狂暴化するのでは?それにこんなことがバレたら・・・」
神月わたる「流石、ミヱ。その通りだと思うよ」
神月わたる「だからこそ速攻で回収したんだろうね。それに、この仕打ちが現時点で、タマシイ側にはバレないと思うね」
ミヱ「それはどうして・・・」
神月わたる「タマシイが肉体を離れる条件は「死」。動けなければ死ねない」
神月わたる「そして肉体にあるうちは、彼らの通信手段は使えない。まあ、あの女のことだから、その辺は抜かりはないはず」
ミヱ「畏れ入りました」
神月わたる「それで終わると思うかい、ミヱ?」
ミヱ「えっ?」
神月わたる「それじゃ、いずれ容れものが足りなくなる。単に棺桶を増やすだけで満足する連中だと思うかい?あっ、正確にはあの女がだけど」
ミヱ「それはそうですが・・・」
神月わたる「いつの時代も、この世から憎しみが消えたことはないんだ」
神月わたる「だからといって、これだけ「彷徨えるタマシイ」が溢れた世の中も異常だ」
ミヱ「はい・・・」
神月わたる「鎮められないなら、封じ込める?間違っちゃいないけどね」
ミヱ「ご主人様、いったい・・・」
神月わたる「この世の中には、解決できない問題が山ほどある。正攻法に固執してたら何も解決できない・・・」
神月わたる「発想の転換だよ、ミヱ」
ミヱ「・・・」
神月わたる「鎮めるでも、封じ込めるでもない・・・」
利用するんだよ
奴らをね
〇近未来の開発室
如月和也「いやー上々の成果だね、姉上」
如月みずほ「何いってるの!? 喜ぶほどの事じゃないわ、こんなの」
如月和也「そうだけど、時限装置が計算通りに働いてくれたわけだし、喜んだっていいんじゃない?」
如月みずほ「アイツの発想に乗っかた結果でしょ」
如月和也「発想はアイツのものだとしても、それを現実のものにしたのは姉上。誰がどうみたって、姉上の功績でしょ」
如月みずほ「・・・」
XXXXXX(なんだ、ここはどこだ?)
(脊髄に仕込んだ麻酔薬を循環させて動きを止める。予定した日数で実行できるなんて、姉上にしかできない芸当だよ)
(予定通りじゃないわ。正確には4時間のズレよ)
(それくらい、誤差の範囲内だよ。末梢神経までの循環シュミレーションで、この精度。アイツの発想にもなかったことだよ)
XXXXXX(おいおい、コイツら、何の話をしてるんだ。早く動けるようにしろよ)
(まあ、いいわ。肝心なのはこれからよ。この実験体を使って、どれほどの成果を出せるか)
(そうだね)
XXXXXX(実験体ってなんだ!?)
如月みずほ「ここから先は、すべて私のシナリオ。そこにわたるは存在しない。ふふ」