半死神のトリアージ~命の選別~

渡邊OZ

第一夜 神威(しんい)の森(脚本)

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〇田舎の駅
  まだ、人出が少ない駅の構内。
  森久弥、大富豪と噂の父に会いに、駅のホームにたたずんでいる。
  線路に猫が降りていて、
  踏切の甲高い音が鳴り響いている。
森 久弥「アブねぇ、あとミリずれていたら、黒猫が・・・」
森 久弥「何だって!!対向する線路の中にも、もう一匹の白猫が・・・」
森 久弥「間に合わねぇ!!」
森 久弥「うっ・・・意識が・・・」

〇森の中の沼
森 久弥(あぁ、早く新聞配達に行かないと・・・)
森 久弥(寝坊しちまったのか、俺!?)
???「目覚めた、か」
森 久弥「うん・・・!?そういえば、俺は白猫を助けて・・・」
森 久弥「うっ、頭痛が!」
???「彼の意識少し、混濁。でも、任務遂行に問題、ない」
森 久弥「待て待て待て!状況がまるでわからねぇ」
森 久弥「あんたは何者だ!ここはどこだ?」
森 久弥「あと、声がもの凄く小さい!顔ぐらいまともに見せてくれ」
トキコ「死神のトキコだ。これで満足、か」
森 久弥「はい!?」
トキコ「おまえを死神にしようと、思った。でも、まだ『半死神』だ」
「おい、しもべ、あとは任せた、ぞ」
死神の従者「トキちゃんは無愛想だけど、これでもかなり好意的な死神だZE」
森 久弥「どこがだ!結局、ここがどこかもわからないし・・・」
死神の従者「ちなみにオレは死神じゃあねぇが、自分の心配ぐらいした方がいいんじゃNE?」
森 久弥「あっ!!親父に買っていたプリン、つぶれていないかな?」
死神の従者「心配するポイント、そこじゃあねぇだRO。白髪ズタボロ野RO!」
森 久弥「うっ、何かここは胸をしめつけられるような、陰気ったい場所だな」
  こうして、俺たちは別の場所へ歩を進めた。

〇湖畔
森 久弥「ここは明るいわけでもないのに、水面がキラキラしている。何か嫌な感じだ」
死神の従者「そりゃあそうDA。ここは『常若の国』に近いからNA」
森 久弥「どういうことだ?」
死神の従者「今にわかるSA。『黄泉の国』側の存在のおまえならNA」
森 久弥「あっ!俺たち以外に、水面に反射した白髪の男がいる!!」
死神の従者「だから、それ、今のおまえだかRA!!」
森 久弥「俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ!」
森 久弥「そう、俺と母を捨てた、実の父親に会うまでは!」
死神の従者「お前の父親も、現世からこの『神威の森』に迷い込んでいるからNA」
森 久弥「なっ!?本当か?」
「夜が明けきるまでに、おまえに父親を探せるかNA?『森 久弥』YO!」
森 久弥「うん!?あいつ、今、何か落としていったぞ」
森 久弥「これは、何かの役に立つかもしれないな」
  俺は、実の父を探すために『神威の森』を
  探索することになった。

〇けもの道
森 久弥「はぁ、はぁ・・・」
森 久弥(俺の実の父親は、病弱な母と幼かった俺を残し、家を出た)
森 久弥「息が切れる!」
  夜のけもの道を駆ける!
森 久弥(俺は、父親から捨てられ、何年もずっと一日を生き抜くことだけを考えていた)
森 久弥「はぁ、はぁ!」
  足を取られそうになりながら、夜のけもの道を駆ける。
森 久弥(生き残ることだけが、父親への最大の仕返しになるとおもっていた)
森 久弥「息が持たない!!」
森 久弥(母は、俺が働ける年齢になった時に、亡くなった。父を恨むなと言い残して・・・)
森 久弥(そんな折、父親から隠し子である俺への遺産相続の連絡がきた)
森 久弥「俺は遺産なんていらない。ただ、俺たちを捨てた『理由』を知りたいだけなんだ!」
森 久弥「闇雲に、この森を探してもダメだ。父のいる場所には、必然性があるはずだ!」
森 久弥「そうだ、さっきの死神もどきが、落とした 地図!」
森 久弥「そうだ、『黄泉の国』と『常若の国』の位置関係だ!」
森 久弥「この二つの国の境界線上のどこかにいるはずだ!」
森 久弥「さらに、『黄泉の国』と『常若の国』を横断するように川が流れている」
森 久弥「この二つの線が交わるところに、親父がいる!!」

〇宇宙空間
森 久弥「親父!!」
森 滋「誰だ、お前は!」
  タバコをふかしていた老齢の男性は振り返った。
森 久弥「あなたの子供の『森 久弥』だ。お土産のプリンはないけど・・・」
森 滋「何を意味の分からないことを言っている! わしにそんな名前の子供はいない!」
森 滋「さては、お前、わしの命を狙っているものだろう」
森 久弥「親父、一つだけ教えてくれ!何で、俺たちを捨てたんだ!!」
森 滋「早々に立ち去れ!この疫病神が!」
森 久弥「うぐっ・・・」
森 久弥「別にはっきりとした答えを聞きたいわけじゃない。ただ、俺は・・・」

〇湖畔
  親父に追い払われた俺は、助言を求めて、死神の従者がいるだろう場所に向かった。
森 久弥「やっぱりいたか」
森 久弥「俺は、親父に追い払われたんだ、どうすればいい?」
死神の従者「どうして、そんなことを俺に聞くんDA?」
森 久弥「おまえはおせっかいそうだからな」
死神の従者「まぁ、当たっているNA。俺は世話焼きの死神もどきDA」
森 久弥「『死神』についてもっと教えてほしい」
死神の従者「ほう、『死神』は基本的に命を奪うのが仕事DA」
森 久弥「それは知っている、『何で』奪うんだ?」
死神の従者「ふむ、それで、増えすぎた生命を減らしているだけなんだGA」
森 久弥「俺は死神になったのか?」
死神の従者「今は、人間でも死神でもない『半死神』DA」
死神の従者「まぁ、この辺が手一杯DA。 ただ一つ言えるのHA・・・」
死神の従者「おまえが夜明けまでに、父の命を奪わねば、死んで死神になるという現実DA」
森 久弥「分かった、ありがとう。また、親父に会いに行くよ」

〇宇宙空間
森 滋「また、来おったか。何度来ても同じことだ」
森 久弥「あなたの命を刈り取るために来た」
森 滋「ほう、いっぱしのセリフを吐きおって」
森 久弥「その前にあなたの魂を『断罪』する! あなたは、家族を愛していたか?」
森 滋「愛なんて、不確かなものが何の飯のタネになるのか」
森 久弥「苦労をかけた母に謝れ!」
森 滋「ぐあっ!!」
森 久弥「俺はあなたを許さない。『半死神』の俺の生命エネルギーを送り込む!」
  その時であった。父親の晩年のヴィジョン(記憶)が俺の脳内に流れ込んできた。
森 久弥「これは・・・。親父、取引先に裏切られて、再婚先の女にも捨てられ・・・」
森 滋「殺るなら、とっととやれ。人は最後の最後まで信用できない生き物だ」
森 滋「自分の命を削って、人を生かそうなどと、どこかのバカ息子みたいなことはするな!」
  よくみると、俺の父親はタバコを逆さまに吸っていた。
森 久弥「親父、目が見えていないのか!俺のことがわからな・・・、いや!」
森 久弥「それでも、俺は「命」を与える半死神でありたい!!」
森 久弥「あなたの真意を確かめられて、本当に良かった」

〇地球
森 滋「おまえの戻るべき場所はあそこだ。とっとと、行ってこい!」
森 滋「あと、プリンはさっき食べたよ」

〇荒地
  黄泉の国の近くの月の見える丘。佇む影が三つ。
死神の従者「命を与えようとするとHA、無茶な発想をする奴DA」
死神の従者「まぁ、結果的にお互いの残りの命を分かち合っただけだったGA」
死神の従者「まだ『半死神』のままとはまた半端なものを拾ったな、トキちゃんYO?」
トキコ「すべては死神の『月齢』を終わらせる、ため」
死神の従者「死神って、損な役回りだNA」
死神の従者「次のスーパームーンまで、死神になることから逃がられるKA」
トキコ「死神になるまで、私は待つ、わ」
十六夜 倫子「今は手を出さないでおくわ。でも、「月齢」十六夜、秩序を乱すものは許さないわ」
十六夜 倫子「私の『時間』になったら、存分に教育してあげる!」

コメント

  • こんばんは!世界観が作り込まれていて楽しかったです!
    死神の語尾も可愛いし、韻を踏んでるところもいいですね👍

  • 陽気な死神眷属良いですね、友達多そう😊トキコちゃんも可愛い。
    父親に酷い扱いをされていても、それを許すことのできる優しさと強さが主人公にあるのが良いですね。死神だと、職務遂行上辛い場面もありそうですが・・・チラ見せした美人さんは一体、何者なのか、、、ついつい後を惹かれてしまいました

  • あの世とこの世の狭間を揺蕩うような何とも言えない不思議な感覚に包まれるストーリーと語り口ですね。死神のトキコよりも眷属の方が死神っぽいのも面白い。

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