エピソード10 -エピローグ-(脚本)
〇ジャズバー
カイト
「君と話したい。」
俺「俺もだ。
カイト、なぜ裏切った?」
カイト「裏切ってない。」
カイト
「僕達エースは、無作為ではなく、
最初から選ばれた。」
俺「選ばれた?」
カイト
「これを見ろ。」
バサッ
カイト
「家で見つけた、アルバムだ。
名前が書いてあるだろ?
カイト
「君の家族、僕の家族、カズミの家族、
もう一家族、写っている。」
カイト
「それらは絵札のカード。
つまり貴族の写真。」
カイト
「僕の親父は
正確に言うと「元貴族」だ。
カイト
「エースに選ばれたのは、
元クイーンと元キングの子ども。
つまり反乱貴族の子息、息女だ。
俺
「俺の父は役所の職員だぞ。」
カイト
「君はこのアルバムに写真がない。
この家族では「ない」のだろう。」
そういえば俺・・・
旅行の写真はあっても
それ以前の記憶も写真もない。
カイト
「もう一組の家族、
この子どもに見覚えはないか?」
俺
「見覚えのある顔と白い腕、
妹ユリの友人ナオちゃんだ。
俺
「確かに家族ぐるみで仲が良く
今回のゲームに妹を誘ったのは
ナオちゃんだ
カズミ
「その子はアナタのお母さんと一緒に
ゲートを出たわ。」
俺「カズミ!」
カズミ
「二人を連れて行くのに
時間がかかったの。」
カズミ
「残っているのは
もう「アナタ」だけ、ユキト。」
俺
「カズミはゲートを出ないのか?」
カズミ
「カイトはワタシとゲートを出るわ。」
犬「ワン!」
カズミ
「アナタはわかっているの、賢いね。」
カズミはペコを撫でた。
ペコにカードを咥えさせた。
カズミ
「これを持ってワンちゃんと
一緒にゲートを出るのよ。
アナタ達なら出られるから。」
カズミ
「それが、お母様や妹さんの
望みなのよ。」
俺「母さんの?」
カズミ「ええ、さよなら」
パタン
〇闇カジノ
優勝賞金!
影の声
「ゲームは楽しかった?」
影の声
「副賞は、好きな望みをひとつ。」
影の声
「って、
もうココには、誰もいないか。」
「市民が全員ゲートを通過したからね。」
「ただ、貴族とJokerを除いては。」
〇豪華な社長室
女「乾杯。」
女「任務完了。
おつかれさま『赤のJoker』
女「あぁ、名前があったわね
ユリちゃん。
ユリ「クイーン」
女
「そうアナタは
ワタシの対となるQ。
そして黒のJoker。」
市民を残らず消す運命。
黒のJoker。
女
「でもそれで
本当に良かったの?
志願してJokerになるなんて。」
ユリ「兄を逃すために」
女「このプロジェクトの真の目的は、
『赤のJoker、ユキトを排除』よ」
ユリ「えっ?」
女
「これは市民浄化の国家プロジェクト。
総背番号制で管理下に
人口抑制プロジェクトの一環、
貴族=機械人間、市民=人間 の戦い。
人間の脳及び身体データ等を収集し、
問題のある部分を消去し補完し人工化する。
選ばれし者だけが住める街。
世界のお金持ちに対する
その宣伝も兼ねたプロジェクトだったわ。
世界の富がこの街に集まるの、永遠に。
肉体を機械化したモノと密かに入替
病気も寿命も痛みも苦しみもなく、
若く美貌の永遠の姿。
ここは理想郷になるはずだった。
しかし秘密裏に進めた実験は失敗
混在したデータは保存され
人間は誰もいなくなった。
唯一、ユキトくんを除いてはね。
マザーAIは
『ニンゲンは、全て曖昧かつ
悪意を持つ排除すべきもの』
と判断されたの。
女「彼だけは脳データが抽出できず、
堅固なセキュリティに守られた。
なぜかしら?」
抽出の重要データに残る
僅かな反乱分子を検索できなかった
女
「原因が分からずデータ群は
そのまま人工身体に移して
街を運用してたの。」
ユリ(母が言ってた話だわ)
女
「そこで今回の開催に合わせ、
再度全データ抽出を試みた。」
ユキトは、完全オリジナルの人間。
コピーの存在しない『Joker』
本来ならJokerはゲートを通れない
対になるカードが『無い』から
でも、彼はゲートを通ることが可能。
どうして?
鍵は犬のペコ。
生体反応があり
街のドア全て抜けられる存在。
彼こそがユキトのJoker、
対になる存在だからよ。
飼い犬が
飼い主に似るって言うじゃない?
ふふふ。
姿は犬、
頭脳こそが彼のコピーで対の存在。
意思疎通や賢いのは、そのせいかもね。
ユキトくんと対になる権利を貴女が
犬に譲ると知っていた。
Joker同士は本来、相手方に潜伏するから
対になることはない。
その法則を破ったのよ。
アナタがユキトくんを
ゲートから逃した時点で、
ワタシたちの勝ち。
あのゲートは本来『データ抽出機』なの。
ユリ「なんですって!」
それは貴女もご両親も、知らなかったのね。
「外と繋がるゲート」と思ったのでしょう?
ゲートは肉体処理し
データのみ抽出される。
ユキトは無事データになり、
街は、貴族の楽園に、なった。
ということね。
ユリ
「思う通りには、させないわ。
私がココに残った理由は
ただひとつ。」
ユリ「街を壊して
ゲームを終了させるためよ。」
女「どうやって?
ユキトは、もういないし
アナタも貴族。
永遠の命を手に入れたじゃない。」
女
「この街が壊れたら
アナタも含む全て消えてしまうのよ。」
ユリ
「私が『黒のJoker』になることで
お兄ちゃんとペコを、
ゲートから逃したかった。」
ユリ
「私はデータだけの存在。
お兄ちゃんが助からないなら、
意味がない。
全てなくなればいい。」
俺「ユリ、俺はここにいるよ。」
ユリ
「お兄ちゃん!どうしてココにいるの!」
ユキト
「迎えに来たんだ。ユリ。」
俺
「カズミの言葉に
『カイトは赤のJokerに狙われている』って
俺「赤のJokerって
『貴族を狙う市民』のはずだろ?
なぜ市民側のカイトが、
それを言うのだろうって疑問だった」
俺
「カイト本人から直接、聞いたんだ。
それで理解した。
俺は最初から赤のJokerだ。」
俺にはカードが
なかったのだから。
〇豪華な社長室
俺
「ジジ抜きって
ゲームのルール知ってる?
俺「
ババ抜き(Joker負け)と違い
予め引かれたカードを伏せ置き
対にならないモノをJokerとする。
ユリがクイーンでJokerなら、
対になるクイーンもJoker
今回のゲー厶は
Jokerを倒したら即勝ちだったよな!?
クイーン「まさか!
俺「ゲートを通らずとも!
お前を倒したら勝ちなんだよ!」
うぉりゃぁああああ!!!
〇黒背景
勝利者には副賞が、
もとに戻してくれ。
家族と楽しく過ごした日々。
了解
ピピッ
ピピッ
ピピピピピ
〇男の子の一人部屋
ピピピピピ
目覚ましがウルサイ。
カチッ
ユリ「お兄ちゃん!散歩いくよ!」
俺「俺の部屋に勝手に入るな」
ユリ「いいじゃん、行くよ!」
〇おしゃれなリビングダイニング
俺「おはよ。」
父さん母さん「おはよう」
俺「父さん、今日は早くない?」
父さん「会合があるんだ。」
俺「ふーん、散歩行ってくる。」
母さん「いってらっしゃい」
ユリ「待ってお兄ちゃん!」
バタバタ
〇川沿いの道
犬「ワン!」
俺「ペコ!よしよし!」
ユリ「あれ!・・・ペコが、
何か咥えているよ!」
〇黒背景
ピピッ
再度ゲームに参加しますか?
パス◁
はい
パスはできません。
(残り回数0)
アナタのデータが
完全に抽出されるまで
ゲームは繰り返されます。
参加しますか?
パス
はい◁
ピッ
読みかけがあったので、イッキ読みさせてもらいました。ユキトの奇妙な冒険の全容が分かると、おお…と驚きます。デスゲーム✖SF仕立てだったんですね。
最後は明るくジ・エンドかと思いきや、やはりデータの世界でリセットされないのもニクイ。ラストの強制的に参加させられる仕掛け、怖くて良いですね。
遅ればせながら、完結お疲れ様でした✨