高校生の娘がまだサンタを信じている

白川嘘一郎

高校生の娘がまだサンタを信じている(脚本)

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白川嘘一郎

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〇クリスマスツリーのある広場
  暦が12月に切り替われば、あとはずっと
  長い長いクリスマスイブのようなものだ

〇綺麗なダイニング
  林 孝雄、42歳──
  愛する妻と娘とともに
  幸せな毎日を送っている
孝雄「おはよう、真奈美」
真奈美「・・・ん」
  娘の真奈美も、もう高校生
  年頃になり、多少よそよそしくなった
  ちょっと寂しくはあるが、
  それも成長だと思えば微笑ましい
ママ「ポチに朝ごはん あげてくれた?」
真奈美「うん」
  真奈美は、純粋な良い子に育ってくれた
  ただひとつ、問題があるとすれば──

〇綺麗なダイニング
孝雄「真奈美・・・今年のクリスマスは 何が欲しいんだい?」
真奈美「はぁ? ウザっ! アタシもう高校生だよ?」
真奈美「そんなこと、 親になんか教えるわけないじゃん」
真奈美「サンタさんへのお願いなんだし!」
  ──良い子すぎる真奈美は、
  サンタクロースの存在を疑うことなく
  ここまで純粋に育ってしまったのだ
孝雄「そ、そう言わずに ちょっと教えてくれたって・・・」
真奈美「やだ! それでサンタさん来てくれなかったら 責任取ってくれんの?」
  どっちにしろ責任は私な気がするが・・・
  しかしもう、クリスマスイブは今夜だ
ママ「新しいコート? それともタブレットかな?」
真奈美「ママにも教えないってば!」
真奈美「・・・わっ、もうこんな時間! 遅刻するとか良い子じゃねーし!」
  何とかして、真奈美の欲しいものを
  聞き出さなくては・・・

〇可愛い部屋
真奈美「きゃっ!?」
真奈美「ちょっと! 着替えてんだから出てけよ!」

〇綺麗なダイニング
孝雄「「もちねこ」グッズはもう卒業かなと 思ったが、あの部屋の様子じゃまだ、 可能性は捨てきれないな・・・」
ママ「もう、パパ 女の子の部屋にいきなり入っちゃダメよ」
真奈美「そんじゃ、学校行くわ」
ママ「あら、まだそんなに 急ぐ時間じゃないんじゃないの?」
真奈美「車に気をつけて信号守って 交通安全で登校しなくちゃだし」
孝雄「弱ったな・・・ 真奈美はいったい何が欲しいんだ」
ママ「案外、「素敵な彼氏が欲しい」 とかだったりして?」
孝雄「なっ・・・!? 彼氏なんて、まだ早いだろ」
ママ「あら・・・ 自分の高校時代を思い出してみたら?」

〇学園内のベンチ
孝雄「おれ、君にプレゼントを届ける サンタクロースになる!」

〇綺麗なダイニング
孝雄「うっ・・・そんな昔のこと いま思い出さなくてもいいじゃないか」
ママ「ふふっ。 あなたは、やると言ったことは 必ずやる人だったものね」
孝雄「・・・こうなったら仕方ない」
孝雄「真奈美の学校に行って 探りを入れてみるしかないな」
ママ「えっ、今日は夜勤でしょ? 休んでおかなくていいの?」
孝雄「娘の欲しいものもわからずに この仕事はつとまらんよ」

〇学校の校舎
  こうして私は、
  真奈美の通う高校にやってきた
  ──職業柄、潜入はお手のものだ

〇学校の廊下
桜「でさー」
真奈美「まじー? うけるー!」
  ・・・いた、真奈美だ
  一緒にいるのは、幼稚園のころから
  親友の桜ちゃんだな
孝雄「桜ちゃん、 ちょっと聞きたいんだが・・・」
桜「うわあぁっ!?」
桜「って、真奈美んとこの親父さんじゃん! なんで窓から!?」
孝雄「緊急の用件なものでね 単刀直入に聞くが、 真奈美が何が欲しいか知らないかな?」
桜「あー・・・真奈美ってば まだサンタ信じてんだっけ 親父さんも大変だね・・・」
桜「でも、今年はなんか 別にプレゼントいらないとか そんなコトしか聞いてないなぁ」
孝雄「そうか・・・ありがとう 驚かせてすまなかったね」

〇綺麗なダイニング
  ──こうして
  手掛かりもないまま夜になってしまった

〇綺麗なダイニング
孝雄「真奈美はもう寝たか・・・ 夜更かししてると、 サンタが来ないと信じてるからな」
孝雄「それじゃあ、今年も行ってくるよ」
ママ「ええ お仕事がんばってきてね・・・ サンタさん」
  林 孝雄
  サンタクロース日本支部
  さいたま営業所 配送課課長(42)
ママ「真奈美のことは私にまかせて」
ママ「用意してた「もちねこ」特大ぬいぐるみで 何とかごまかしてみるわ」
「──その必要はないっすよ」
ポチ「ども、おつかれっす!」
  ポチ
  同所 トナカイ係(新卒)
ポチ「本社のほうに手紙が届いたらしいんすよ 課長の娘さんから」
孝雄「真奈美から・・・?」

〇星
真奈美「──サンタさんへ うちのパパはこの時期になると 毎年とても忙しそうです」
真奈美「クリスマスイブも、夜勤だ引き継ぎだ 報告書のまとめだとか言って、 次の日の夜遅くまで帰ってきません」
真奈美「・・・たまには家族3人そろって のんびりケーキとか食べて クリスマスを過ごしたいです」
真奈美「だからお願いします、サンタさん 今夜はパパにお休みを プレゼントしてあげてください」

〇綺麗なダイニング
ポチ「規約では『10歳以下の純粋な良い子』が 対象なんすけどね。ま、特例ってコトで」
ポチ「ってワケで、 あとは俺らで何とかするんで 課長はゆっくり休んでください」
ポチ「いや、それとも今夜は奥さんと 恋人気分に戻って・・・?」
孝雄「う、うるさいっ! 行くなら早く行きたまえ!」
孝雄「そうか・・・ 真奈美がそんなことを・・・」
孝雄「まだ子供のようでも ちゃんと成長してるんだな・・・」
ママ「あなたの分のケーキ用意してなかったから 明日は朝から3人でケーキ作りね」
孝雄「──それは、サンタの仕事より 責任重大かもしれないな」

〇クリスマスツリーのある広場
  Merry Xmas!

コメント

  • 高校生になってもサンタクロースを信じてる純粋な子…って、本当にサンタさんいたんですね!
    トナカイも普通に話せるすごいトナカイ!
    娘さん、言葉遣いは今どきっぽいですが、普段の行動もすごく真面目で純粋ですよね。かわいいです!

  • 高校生になってサンタクロース信じていたら、そりゃあ両親には言わないだろうなぁ…。
    それでも探りをいれるご両親笑
    でもなんだかんだで心はみんな子供なんだなぁと思いました!

  • ピュアすぎる娘の真奈美の挙動を軸とした物語に、笑いながら心優しくなる感じになりました。とても素敵なハートフルコメディですね。

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