最後のプレゼント

saburou.g

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〇黒
  わたしが初めてサンタに逢ったのは、今から10年ほど前の、クリスマスイヴの夜の事だ。
  当時6歳だったわたしは、サンタの姿をひと目見ようと、眠いのを我慢してずっと寝たふりを続けていたのだった。

〇女の子の部屋
佳奈(もう11時。サンタさん、まだ来ないのかなあ)
佳奈(もう寝ちゃおうかな?)
佳奈(ううん、だめ。 今年こそ、佳奈はサンタさんに逢うの)
佳奈(逢って、お話して。 それで、プレゼントのお礼を言うんだ)
佳奈「・・・・・・」
  ギイ・・・・・・
佳奈(来たっ!)
???「・・・・・・」
???「っ!!」
???「──寝たふりをしていたのか?」
佳奈「ご、ごめんなさい・・・・・・」
佳奈「あの、もしかして、サンタさん──なの?」
サンタ「ああ」
佳奈「すごい! ほんとに逢えた・・・・・・!」
佳奈「でも、なんか思ってたのと違うかも」
佳奈「サンタさんって、赤い服を来てて、白いひげがはえてるんじゃないんだ」
サンタ「それは『大サンタ』だ。 言うなら、俺たちのリーダーみたいなものだな」
佳奈「だいサンタ?」
サンタ「そう。 大サンタはすごい方なんだけどな、でも一晩で世界中の子ども達にひとりでプレゼントを配りきるのは、さすがに無理なんだ」
サンタ「だから、実はサンタは世界中にいる。 そして俺も、そのひとりって事だな」
サンタ「がっかりしたか? ひげがはえてなくて」
佳奈「ううん、ぜんぜん」
佳奈「あのね。佳奈、サンタさんに逢って、ずっとお礼が言いたかったの」
佳奈「昨年も、その前も。プレゼントをありがとうって」
佳奈「うれしかった気持ちを、ずっと伝えたくて。 それで、起きてたの」
サンタ「子どもがそんな事を気にするな」
サンタ「子どもは受け取ったプレゼントに対して、素直に喜ぶ。 それだけでいいんだ」
佳奈「・・・・・・」
サンタ「でも。 そんなふうに思ってくれて、うれしいよ」
サンタ「ありがとう」
佳奈「・・・・・・」
サンタ「けど、良い子はもう寝る時間だ。 悪い子にプレゼントはあげられない」
佳奈「佳奈、悪い子?」
サンタ「いや──はあ。 そんな顔するな。ほら」
佳奈「わあ──」
サンタ「今年だけは特別だ。 でも、来年からはちゃんと寝てるんだぞ」
佳奈「うんっ! ありがとう、サンタさん!」

〇黒
  でも、わたしは嘘をついた。
  その次の年も、わたしは起きてサンタを待っていた

〇女の子の部屋
サンタ「おい。昨年言ったはずだろ。 なんで今年も起きてるんだ」
佳奈「えへー。ごめんなさい」

〇黒
  次の年も。

〇女の子の部屋
サンタ「おい、おまえ、また・・・・・・」
佳奈「えへへ。いらっしゃい、サンタさん」
サンタ「まったく・・・・・・」

〇黒
  次の年も。その次の年も。
  わたしは起きて、彼の事を待った。
  そして、今年のクリスマスイヴも。
  わたしは彼の事を待っている。

〇女の子の部屋
佳奈「メリークリスマス!」
サンタ「おい。 今更『ちゃんと寝てろ』なんて文句を言うつもりはないが、そこまで堂々と起きているのは、さすがにどうかと思うぞ」
サンタ「おまえ、サンタの事を・・・・・・というか、俺の事をなめてるだろ」
佳奈「あはは、そんな事ないって」
佳奈「それよりどうよ、この部屋! この制服! わたしももう高校1年生だよ!」
佳奈「祝、第一志望の高校入学! 祝、憧れのひとり暮らし!」
佳奈「大人びた佳奈様を見て、心がときめいたでしょ」
サンタ「え?」
佳奈「ほらそこ! 困った顔しない!」
サンタ「なあ、今日は本当にどうしたんだ?」
サンタ「様子がおかしいけど、何か悪いものでも食べたのか?」
佳奈「そ、そんな事ないよ!」
佳奈「それより! 近くにすごく奇麗なイルミネーションがあるらしいの!」
佳奈「サンタも見てみたい? 一緒に行く? はい決定! よし行こう!」
佳奈「じゃあ、すぐ着替えるから、ちょっと外で待っててね! ほらっ、ほらっ!」
サンタ「おっ、おいっ!」

〇黒
  ・・・・・・

〇イルミネーションのある通り
佳奈「わあ・・・・・・! 見て、すっごく綺麗」
佳奈「やば、感動して泣きそう」
サンタ「おい、佳奈」
サンタ「さっきから、いったいなんなんだ。 おまえがヘンなのは昔からだが、今日はその比じゃないぞ」
佳奈「・・・・・・」
佳奈「いつまで来てくれるの?」
サンタ「え?」
佳奈「わたし、高校生になって、またひとつ歳をとって。 大人にまた1歩近づいて。正直、今年は来てくれないと思ってた」
佳奈「でも。来てくれた。それが、すごくうれしくて。 でも。いつまで来てくれるの?」
佳奈「来年は? 再来年は?」
佳奈「もう逢えないの?」
サンタ「佳奈・・・・・・」
佳奈「・・・・・・」
サンタ「・・・・・・俺に、か?」
佳奈「うん。あげる」
佳奈「・・・・・・。 駄目だね、わたし」
佳奈「サンタに、これからもずっと来て欲しくて。ずっと逢いに来て欲しくて。 ずっとずっと、小さな子どもでいたいって思ってた」
佳奈「でも、もう一方的にプレゼントをもらって、素直に喜べる歳じゃなくなっちゃった」
佳奈「誰かの事を想ったり。好きになったり。 ──そのヒトにプレゼントをあげたいって思ったり」
佳奈「そういう歳になっちゃったんだよ──」
サンタ「大人に、なったんだな」
サンタ「じゃあ、これが最後のプレゼントだ。 受け取ってくれるか?」
佳奈「うん。ありがとう」
佳奈「これで、サンタとはお別れだね──」
サンタ「ああ。来年はもうサンタは来ない」
サンタ「・・・・・・」
サンタ「だから、来年は――『俺』が行くよ」
佳奈「え・・・・・・?」
サンタ「サンタとしてではなくて。 俺が俺として、佳奈に逢いにいく」
サンタ「忙しいから、今まで通り1年に1度しか逢えないけど。でも佳奈が待っていてくれる限り、ずっと、逢いにいくよ」
佳奈「ずっと?」
サンタ「ああ」
佳奈「ずっとずっと?」
サンタ「ああ」
佳奈「・・・・・・」
佳奈「じゃあ、待ってる。 ずっと、待ってる」
佳奈「また、プレゼント用意しておく」
サンタ「それなら、俺もプレゼントを持っていくよ」
サンタ「・・・・・・今度はサンタとしてじゃなくて」
サンタ「俺からのプレゼントを、佳奈に贈るよ」

コメント

  • 彼女が彼に恋心を持ったのはいつ頃なんでしょう。
    その頃から彼が来なくなる日が怖かったと思うんです。
    でも、ずっと来てくれることになってよかったです。
    甘いハッピーエンドでした。

  • 大人になる課程で変化していく少女の心情が切なくグッときました

  • もうサンタさんと会えないのかと思っていたら、「来年からは俺が行く」でうおおおお!! となりました。サンタさんにしかできない告白にキュンとしました!

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