読切(脚本)
〇黒
〈この物語はフィクションです。実在の人物・事件とは一切関係ありません。〉
〈また、恐怖を与える表現が含まれています。苦手な方はタップをお控えください。〉
〇白
───クリスマスの夜
〇汚い一人部屋
男「はぁ・・・今年も一人のクリスマスか・・・」
男「遊ぶ相手も彼女もいないし・・・」
男「退屈だなあ・・・」
男「今ごろ、街のデートスポットなんかではカップルどもがイチャイチャしてんだろうなあ」
男「イチャイチャイチャイチャ・・・」
男「はーあ・・・」
男「ムカつくなあ・・・」
男「はあ・・・」
男「・・・」
男「そうだ、ストレス発散に・・・」
男「カップルが爆発するタップノベルでも作ろうかな」
男「ちょっとはスカっとするだろ」
カタカタカタカタ・・・
男「登場人物は・・・そうだな、適当に『ゆい』とかでいいか」
男「えーと、『クリスマスの夜、一組のカップルが待ち合わせをしていた』と・・・」
カタカタカタカタ・・・
〇クリスマスツリーのある広場
クリスマスの夜、一組のカップルが待ち合わせをしていた
ゆい「はあ・・・ゆうくんまだかなー・・・」
そろり・・・そろり・・・
ゆうくん「わっ!!」
ゆい「わっ!!」
ゆうくん「おまたせ、待った?」
ゆい「もー!びっくりさせないでよ!」
ゆうくん「ごめんごめん」
ゆい「もー・・・まあいいけど・・・」
ゆうくん「遅れてごめん、電車乗り間違えちゃってさ」
ゆうくん「それじゃいこっか」
ゆい「うん」
ゆうくん「今日は楽しもうね」
ゆうくん「俺らが付き合ってから初めてのクリスマスなんだし」
ゆい「うん・・・」
突然、激しい地響きが響いた
ゴゴゴゴ・・・
ドカーン!!
突然地中のとてつもなく大きな火山が噴火して何もかも爆散した
広場にいたカップルは皆地獄に落ち、ゆいは死後も無限の苦しみのなかで己の存在の無意味さを悟ったのだった
おしまい
〇汚い一人部屋
男「『・・・無限の苦しみのなかで己の存在の無意味さを悟ったのだった』」
男「『おしまい』っと・・・」
男「ふう・・・」
男「・・・」
男「ふふ・・・」
男「ふふ、あははははは!」
男「爆発してやったぞ!突然!」
男「地獄に落としてやった!」
男「あははははは!」
男「ははは・・・」
男「は・・・」
男「・・・・・・」
男「・・・なにやってんだ、俺」
男「くだらない・・・」
男「はあ・・・」
男「・・・」
男「もう寝るか・・・」
〇白
〇白
〇黒
〇黒
・・・
・・・
・・・
苦しい・・・
痛い・・・
ここは・・・どこ・・・?
わから・・・ない・・・
・・・
私・・・
さっきまで・・・ゆうくんと・・・
広場に・・・いたはずなのに・・・
突然・・・
大きな・・・音が・・・
聞こえて・・・
そしたら・・・
私・・・
・・・
私、死んだの?
〇黒
・・・
・・・
痛い・・・
苦しい・・・
どうして・・・
こんなに・・・苦しいの・・・?
『広場にいたカップルは皆地獄に落ち』
なに・・・?
『死後も無限の苦しみのなかで』
なにかが・・・私に・・・
『己の存在の無意味さを悟ったのだった』
流れ込んでくる・・・!
『己の存在の無意味さを悟ったのだった』
あああああああ!!!!!!
『己の存在の無意味さを』『無限の苦しみのなかで』『何もかも爆散した』『ドカーン!』『激しい地響きが響いた』
『噴火して』『クリスマスの夜』『響いた』『突然地中の』『待ち合わせをしていた』『なにもかも』『地獄に落ち』
『無意味』『火山』『地獄』『クリスマス』『地響き』『突然』『カップル』『存在』『苦しみ』『広場』『無限』
『縺薙?隧ア縺ッ蜈ィ驛ィ譛ャ蠖薙↓繝輔ぅ繧ッ繧キ繝ァ繝ウ縺?縺九i諤悶¥縺ェ縺?h』
男「もう寝るか・・・」
なに・・・?
男「・・・なにやってんだ、俺」
誰・・・この人・・・?
男「あははははは!」
男「地獄に落としてやった!」
何を・・・言ってるの・・・?
男「登場人物は・・・そうだな、適当に『ゆい』とかでいいか」
私の・・・名前・・・?
男「そうだ、ストレス発散に・・・」
男「カップルが爆発するタップノベルでも作るか」
・・・
どういう・・・こと・・・?
この人が・・・私を・・・
私たちを・・・生み出して・・・
殺した・・・?
・・・
私のこれまでの人生は・・・
全部嘘だったの?
『ストレス発散』のために生み出されて・・・
殺された・・・
私の存在は無意味だったの・・・?
そんな・・・
・・・
・・・許せない
許せない許せない許せない許せない許せない
この男・・・絶対に・・・絶対に・・・
───2020年12月25日の夜
また何か・・・入ってくる
〈この物語はフィクションです。実在の人物・事件とは一切関係ありません。〉
〈また、恐怖を与える表現が含まれています。苦手な方はタップをお控えください。〉
フィクション・・・タップ・・・?
・・・
この男も物語の登場人物ってこと・・・?
じゃあいるんだ
この物語を進めている人間が
娯楽として見ている人間が
タップしている人間が
タイトル『この物語はフィクションです。』
「TapNovel - ゲーム小説アプリ」
IPアドレス
157.43.291.236
あ・・・
〇黒
見つけた
そんな目をしていたんだ
そんな目で、私が死ぬのを見てたんだ
そんな指で、私を地獄に落としたんだ
ゆい「許さない」
許さない
許さない
許さない
許さない
私が・・・あなたのノベルを作ってあげる
今度は私がタップする番
書き始めの一文はもう決めたよ
〇黒
〈この物語はフィクションです。実在の人物・事件とは一切関係ありません。〉
作者さん、ストレス発散のためにタップノベルをこんなふうに使うのは潔くて新しい。すみませんタップしてしまいました。許してください。気づかないうちに誘導されて、強制的に読者として参加していました。
興味深く読めました。
ストレス発散に作り出されたキャラクターからすれば、たしかにたまったものじゃありませんよね。
この負の連鎖はどこまで続くのかと思いました。
ストーリーに読み手を引き込む力が凄いので、このメタフィクションなホラーの恐怖感が増大しますね。短編とは思えない濃密さに参りました。