友人の危機(脚本)
〇昔ながらの一軒家
俺は、もんじろう。
日課の散歩をして、金太郎の家を通りかかった。
もんじろう「あ、金太郎の家だ」
もんじろう「なんか、いいにおいがするなあ」
ちょうどいい具合に火が上がり、黒い塊は炭だろうか。でかいな。
もんじろう「バーベキューかな?」
いや、そんな大きな網あるのかな。
そう思った矢先。
炎が、庭中に広がる。
もんじろう「これ、もしかして、火事!?」
もんじろう「金太郎ー!!」
もんじろう「無事かー!!」
金太郎の安否を確認するため、チャイムを鳴らした。
〇炎
もんじろう「金太郎・・・!」
無事でいてくれ、と思いながらいると・・・
金太郎「あれ、もんじろう? どうした?」
もんじろう「よかった、金太郎!」
もんじろう「家、燃え上がってるよ! ここから出よう!」
金太郎「いやー、ちょうどよかった」
もんじろう「何言ってるの! 逃げなきゃ!」
焦るのは俺だけで、金太郎はごうごうと燃え盛る炎の中でもなぜか、落ち着いている。
金太郎「もんじろう、これ・・・」
金太郎「バーベキューだぜ?」
もんじろう「・・・へっ?」
金太郎「あれ、最近チックタックで流行ってるじゃん」
金太郎「家ごとバーベキューするやつ!」
やってみたかったんだよ〜と、朗らかに笑う金太郎。
もんじろう「なーんだ。って、いや!」
もんじろう「家、燃やしてもいいの!?」
金太郎「ああ・・・」
金太郎「妻にも、息子にも付き合いきれない!って先月出てかれてよ・・・」
金太郎「俺は、家もったいないなって思って住んでたはいいけど・・・」
金太郎「もう、どうでもいいやって思って」
金太郎「A5ランクのいい肉、気づいたら買っちまって・・・」
金太郎「食い損ねる前に、焼いちまおうってな・・・」
もんじろう「金太郎・・・」
もんじろう「いや、家の処分の仕方豪快すぎるよ!」
金太郎「そーかな? もう金にならないし、肉食べようぜ」
こりゃ、妻と息子に見放されても仕方ないな、と思えた。
金太郎「もんじろう、これ、肉」
朝から一生懸命切って、串に刺したぜ!
と言う金太郎。
〇一軒家の庭
火は・・・鎮火させた。
すぐに、消防車呼んだ。
めちゃくちゃ、怒られた。
そりゃそうだよな・・・
もんじろう「庭先で、たのしもう?」
金太郎「そうだな・・・ 俺も、早計だった」
もんじろう「野菜もしっかり食べよう?」
金太郎「ああ・・・」
〇一軒家の庭
金太郎「もんじろう・・・その・・・」
金太郎「ありがとな・・・」
もんじろう「いや、いいよ」
もんじろう「離婚したのは聞いてたけど、どうしてこんな早まったことを・・・」
金太郎「・・・」
金太郎「妻は、料理もうまくて家事もこなして、よく・・・やってくれた」
金太郎「生まれた息子が、俺の手を一生懸命・・・ 握って・・・」
金太郎「頑張ろう、って思えたんだ」
いい頃合いの肉串をとって、かぶりつきながらぽつぽつと、話す。
金太郎「だが、会社の受付嬢に言い寄られてさ」
金太郎「断っていたが、金の話をされて・・・」
金太郎「乗っちまったんだよ・・・」
力なく持っていた串を、皿に置く金太郎。
もんじろう「・・・バーロー・・・」
金太郎「えっ?」
もんじろう「バーロー!!」
金太郎「あ・・・まあ、そうだよな」
もんじろう「確かにそれもあるが、俺が言いたいのはな・・・」
もんじろう「過去は変えられない」
もんじろう「お前がやってしまったことは、消えない。 許す者も、少ないだろうな」
もんじろう「だが・・・」
もんじろう「これからは、未来ならなんとかできる! かえられる!」
もんじろう「諦めて、家ごとバーベキューすな!」
金太郎「もんじろう・・・」
金太郎「おれ・・・」
金太郎「悔しいよ・・・ 過去の自分をぶん殴りてぇよ・・・!」
もんじろう「ああ、野菜も食え!」
金太郎「ううっ(もぐもぐ)・・・」
金太郎「うめえな・・・」
金太郎「みんなと、食いたかったなあ・・・」
もんじろう「今度、近所のみんな呼ぼうか」
金太郎「おう、もうこんな馬鹿なマネはしねぇ・・・!」
もんじろう「まあ、まず住むところだな」
〇アパートの玄関前
それから。
あいつは、仕事に真面目に打ち込んで。
諸々の諸費用が貯まるまで、俺の部屋に住まわせ色々折半して生活をしている。
そして俺は、日課の散歩中だったが・・・
道に迷って、たどり着いたのは・・・
〇立派な洋館
立派な屋敷!?
次回、もんじろう死す!
もんじろう「いや、死なないよ!」
もんじろう「勝手に殺さないでよ、もう!」
to be continue・・・
タイトルがやっぱり逆なような印象を受けました。バーベキューってなんだか楽しい雰囲気のイメージがあるけど、金太郎の心は火事のような惨事だったんだろうなと。
金太郎は自分自身がバーベーキューになってたかも。そうなってたらいただけないし、食えない話でしたね。もんじろうが家の火も消してくれて、火の車だった家計も助けてあげて、まさに人生の救命士!彼の人柄に和みました。