7月6日のスタンド・バイ・ミー

YO-SUKE

エピソード4(脚本)

7月6日のスタンド・バイ・ミー

YO-SUKE

今すぐ読む

7月6日のスタンド・バイ・ミー
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇混雑した高速道路

〇タクシーの後部座席
男性「運転手さん。あんたこっちの人?」
伊藤正樹「いえ、僕は数年前に子供連れて函館に来たんですよ」
伊藤正樹「お客さんは地元の人ですか?」
男性「そうなんだよ。母が具合悪いってうるさくてね。今日は東京から」
伊藤正樹「そうなんですね」
男性「どう? 函館。住めば都だなんて言うけど、なんもないとこでしょ?」
伊藤正樹「いや、そんなことは」
男性「ここをよく言うのは観光客だけ。地元の人間は愚痴ばっかだよ」
伊藤正樹「あっ、でもうちの息子はそうでもないみたいです。今ではすっかり、ここの子ですね」
男性「お子さん、いくつなの?」
伊藤正樹「12歳です、小学六年生」
伊藤正樹「妻を失くしてからはやたらと反抗的でして。 この間も進路のことでちょっと・・・」
男性「あんたも苦労してんだな」
伊藤正樹「いえいえ。息子は友達とつるんで、バカなことばかりしてるみたいなんです」
伊藤正樹「妻がいれば厳しく教育もできるんでしょうけどねえ」
男性「いいじゃない。 若いうちにしか語れない友情もあるもんだ」
伊藤正樹「そういうもんですかねえ」
  苦笑して、正樹(まさき)は眼鏡をクイっと上げる。

〇田園風景
  眼鏡をクイっと上げながら歩く伸生。
秋山裕介「伸生。お前、歩くの早えから」
伊藤伸生「ボクは普通。 お前たちが遅すぎるんだ」
秋山裕介「学と一緒にすんな。 俺は路面電車と追いかけっこしたんだぞ」
伊藤伸生「まさか追いつくとはな。 火事場の馬鹿力ってやつか」
秋山裕介「なんだと! お前が自信満々に追いつくって言ったんじゃねえか!」
井戸端学「っ!」
伊藤伸生「時に人間の力は限界を超える。 勉強になった」
秋山裕介「うっせえ!」
秋山裕介「・・・ちょっと待て!」
秋山裕介「・・・学!?」
井戸端学「っ・・・」
秋山裕介「おい、どうしたんだよ!?」
井戸端学「は、腹が・・・」
秋山裕介「腹?」
井戸端学「・・・トイレ」
伊藤伸生「アイスの食べ過ぎだな」
秋山裕介「そんなに食ってないだろ」
伊藤伸生「裕介が帰ってくる前に、すでに2つは食べていた」
秋山裕介「アホか!」
井戸端学「ト、トイレに・・・」
秋山裕介「いや、無理。トイレない」
井戸端学「へ?」
秋山裕介「もう市街地終わったじゃん。 店だってないし、その先からは山だから」
井戸端学「じゃあどうすんのさ!」
秋山裕介「耐えろ! もしくは川に流せ!」
井戸端学「そんなの無理!」
伊藤伸生「・・・川か。自然の水洗トイレだな」
井戸端学「伸生も真顔で言わないでよ!」
秋山裕介「このまま漏らすよりいいだろ。 その林の奥にある川でしてこいよ」
井戸端学「ああっ! もう!」
「・・・・・・」

〇田園風景
「・・・・・・」
秋山裕介「遅せえ。 あいつ川に流されたんじゃねえのか?」
伊藤伸生「大いにありうるな」
「うわーーー! 助けてくれ!」
秋山裕介「なんだ!? 今の!?」
伊藤伸生「まさか、学か!?」

〇山中の川
秋山裕介「何やってんだ! お前」
「トイレしてたら、足滑らせた!」
秋山裕介「アホか! お前自身が流されてどうする!?」
「た、助けて! 俺、泳げないんだよ!」
秋山裕介「知ってるよ、バカ!」
伊藤伸生「どうする?」
秋山裕介「どうするも何も、俺らで助けなきゃしょうがねえだろ!」
伊藤伸生「でも川に入ったら、あいつのうんこと一緒に泳ぐ可能性がある」
秋山裕介「そんなこと言ってる場合か!」
「裕介! 早く! なんか川の流れが早くなってきた!」
伊藤伸生「待てよ。もしかして・・・」
  スマホで地図情報を確認する伸生。
伊藤伸生「やっぱり。この先は滝だな」

〇山中の滝
「落差およそ120M・・・」
「山形県白糸の滝に次いで、全国で16位だそうだ」
「・・・落ちたら200%死ぬだろう」

〇山中の川
秋山裕介「冷静に言ってる場合か!」
「裕介〜!!!」
秋山裕介「ざけんな! なんで毎回俺が! 俺はお前の保護者じゃねぇ!」
伊藤伸生「ボクの計算だとあと3分20——」
秋山裕介「あー! わかったよ! なんなんだよ、お前らはよ!」
秋山裕介「いつかぜってー、二百倍にして返してもらうからな」
「うわああああ!!」
秋山裕介「暴れんな! バカ!」
伊藤伸生「急げ。時間がない」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:エピソード5

成分キーワード

ページTOPへ