新人サンタの難儀な聖夜

眞石ユキヒロ

新米サンタと先輩サンタ、聖夜を駆ける(脚本)

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眞石ユキヒロ

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〇空
瀬戸 大河「クリスマス反対派が暴れる中でのクリスマスイヴ。 反対派と陽動偽サンタ部隊の交戦で地上が明るく見えますね・・・・・・」
沙汰 九郎「俺も九年サンタやってっけど、こんなのははじめてだぜ。 ったく、こっちは新人サンタのお守りをしなきゃいけねぇってのに」
瀬戸 大河「悪かったですね、新人のお荷物で・・・・・・! って、うわっ!」
  ビュンッ!
沙汰 九郎「っと、流れ弾か。魔法で透明になってるとはいえ気をつけねぇとな。 さて、最初にプレゼントを配る家はどこだ!?」
瀬戸 大河「すぐ近くですが直進すると交戦区域に入ってしまいます。 大きく迂回する必要がありますね」
沙汰 九郎「なら! トナカイ、速度と高度を大きく上げろ! もっと上に逃げて、交戦区域を過ぎたらジェットコースターみたいに下降するぞ!」
瀬戸 大河「なんて命令を!? あっ、うわっ! やめろぉぉぉぉぉ!!」
沙汰 九郎「ハハハ! 昇ってく瞬間ってのはやっぱりワクワクするよな!!」

〇ファンシーな部屋
瀬戸 大河「最低だ・・・・・・死ぬかと思った・・・・・・」
沙汰 九郎「さてさて、この子へのプレゼントは、っと・・・・・・」
瀬戸 大河「あんなむちゃくちゃ、もうやらないでくださいよ!!」
沙汰 九郎「お前、そんな大声出したらいくら透明になってても感受性の高い子供にはバレて・・・・・・!」
少女「ん、おじさんたち、誰・・・・・・?」
沙汰 九郎「魔法発動、スリープ」
少女「・・・・・・すぅ、すぅ」
沙汰 九郎「ちゃんと寝てくれたな。よし、プレゼントを靴下の中に・・・・・・。 っと、次行こうぜ」
瀬戸 大河「・・・・・・俺を怒らないんですか」
沙汰 九郎「オレだってさっきはお前を怒らせるようなことしたからな。簡単には怒れねぇよ。 さ、次行こ、次」
瀬戸 大河「沙汰さん・・・・・・」

〇空
瀬戸 大河「沙汰さんも初めての仕事の時に子供に気づかれたとか、あったんですか?」
沙汰 九郎「・・・・・・たくさんあったなぁ。 っていうか、気づかれない方が少なかったくらいだ」
瀬戸 大河「そうですか・・・・・・」
瀬戸 大河「・・・・・・俺も大勢の一人か」
沙汰 九郎「これ笑うところだろ! なんで悲しそうな顔すんだよ、変なヤツ」

〇学生の一人部屋
沙汰 九郎「これで最後、っと。 よし、帰って報告するか」
瀬戸 大河「待ってください、本部からメールが。 『クリスマス反対派の航空戦力が大量投入された。帰還の際は細心の注意を払え』とあります」
瀬戸 大河「反対派にはあきれてモノも言えません」
沙汰 九郎「ここは先輩サンタの腕の見せ所だな。 お前をちゃんと本部に連れ帰ってやるからな、安心しとけ?」
瀬戸 大河「・・・・・・俺も戦力です。いざとなれば魔法で応戦します。 多少危険でもかまいませんのでトナカイへの指示は任せましたよ」
沙汰 九郎「トナカイにあんな危なっかしい指示したオレに任せてくれんのか?」
瀬戸 大河「・・・・・・先輩サンタ、なんですから」
沙汰 九郎「やけに可愛いこと言うな、お前。 ・・・・・・さて、俺らも戦場へ行きますか」

〇空
沙汰 九郎「っひゃー、見渡す限り武装ヘリ! 用意すんのにどんだけマネーがかかってんだか!」
瀬戸 大河「!? 砲門がこちらを向いています!魔法発動、バリア!」
  ヘリの攻撃がバリアに着弾した途端、バリアは弾を包むように飲み込んで消えた。
  大河は急いでバリアを貼りなおす。
沙汰 九郎「っしゃ! 急上昇すっから覚悟しとけよ! 魔法発動、トナカイブースト! トナカイ、全速力で・・・・・・」
瀬戸 大河「待ってください! 全速力なんて出したら俺の気力が保たなくてバリアが・・・・・・」
  九郎は大河の震える手に、骨張った大きな手を重ねた。
沙汰 九郎「ほらよ、俺がこうして、お前の意識をしっかり捕まえといてやる。 これなら多少は安心できんだろ?」
瀬戸 大河「沙汰、さん・・・・・・。 わかりました、俺もサンタとして覚悟を決めます!」
沙汰 九郎「今度こそ行くぜ!! トナカイ、全速力で上昇しろ!!」
瀬戸 大河「おおおおお!!バリアァァァァァ!!」
  トナカイに牽かれたソリは、肉眼では捉えられぬ速度で天へと駆けていく。
  ヘリの砲如きでは追いつけない速度であったため、バリアは無意味になってしまったが。

〇幻想
瀬戸 大河「っはあぁぁぁぁぁ・・・・・・。死なずにすんだ・・・・・・」
沙汰 九郎「まさか雲の上まで来ることになるとはな。 これはサンタ人生初だわ。星が近い~」
瀬戸 大河「初、サンタ・・・・・・」
沙汰 九郎「お前もこんなのが初仕事になっちまって大変だったな。 安心しとけ、さすがにここまではヘリじゃ追いつけまいて」
瀬戸 大河「・・・・・・あの、死ぬかと思ったついでに、ひとつ告白をさせてください」
沙汰 九郎「何、急に改まって。 それって手を重ねたまま聞いた方がいい話なの?」
瀬戸 大河「そのままでお願いします。 ・・・・・・九年前、父が蒸発したからクリスマスプレゼントを買えないと母が嘆いていたんです」
瀬戸 大河「ところがその年のクリスマスイヴ、俺の部屋に現れたあなたと俺の目が合った。 俺は一目で理解した。この人は本物のサンタだって」
瀬戸 大河「まぁ、すぐに魔法で眠らされてしまったんですけどね。 本物のサンタが家に来てくれた。僕はそれを心の支えに寂しさを乗り越えた」
沙汰 九郎「それで俺に憧れてサンタ目指しちゃったとか?」
瀬戸 大河「あっさり言わないでください! こっちは言うか結構迷ったっていうのに、そんなあっさり・・・・・・」
沙汰 九郎「・・・・・・嬉しくない、わけじゃないぜ。 これからもよろしくな、可愛い後輩くん」
瀬戸 大河「・・・・・・はいっ、沙汰さん!」

コメント

  • 反クリスマスって、なぜそんな組織があるの!?とは思いましたが、あるものはあるんです。
    サンタさんのコンビよかったです!
    新米サンタがサンタになろうとしたきっかけとかすごくいいです。

  • 先輩と新人の関係がいい方向へ話が進んでいましたね。いい先輩が憧れの人で良かった。誰でも新人の時は失敗がつきものでしょう。先輩に追いつけ新人。

  • サンタクロースは魔法を使い、反クリスマス勢力は武装ヘリを使う。ハチャメチャな設定ですが楽しく読ませてもらいました。ラストも大好きです。

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