〇病院の入口
聖奈「ハアッ・・・ハアッ・・・ 面会時間に間に合った」
聖奈「家族なのに面会に予約が必要なんて面倒だよね・・・ ま、このご時世しゃーないけどさ」

〇病室のベッド
優斗「絶対嫌だ！ 手術なんて受けない！」
聖奈「もう優斗ったら！ そんな我儘言わないの！ 看護師のお姉さんが困るでしょ！」
看護師「別に私は困りませんが・・・ 入院生活が長くなれば、病院的には儲かりますし」
聖奈「い、いや そうハッキリ言われても・・・」
優斗「俺のことなんかほっとけよ!!」
聖奈「優斗、もうすぐクリスマスでしょ!? プレゼント何が欲しい？」
優斗「フン。いらないよ!! どうせ俺のとこなんかにサンタ来るわけないし！」
優斗「お姉ちゃんは良いよな。 本物のサンタが来てくれたんだろ!!」
聖奈「う、うん・・・ まあね・・・」
優斗「お姉ちゃんは美人だし頭も良いし・・・ 健康だし・・・ だからサンタも来るんだよね・・・」
聖奈「優斗・・・」
優斗「もう良いよ！俺はお姉ちゃんとは違う！ 帰ってよ!!」

〇大きい病院の廊下
聖奈「ホント、あの子には困ったもんで・・・」
看護師「本物のサンタにお会いになったって本当ですか？」
聖奈「ハイ・・・10年前に・・・」
看護師「それは凄い強運でございますね。 裁判員より当たる確率が低いと言われてるのに・・・」
聖奈「はあ・・・まあ・・・ そんなことより優斗に手術受けさせるにはどうすれば・・・」
看護師「彼も本物のサンタに会いたいんじゃないですか？」
聖奈「やっぱそうですか・・・」
看護師「もちろん四の五の言わせずに無理矢理麻酔して手術しちゃう手もありますけど」
看護師「それだと成功率は０.01％です」
聖奈「さりげなく怖いこと言いますね・・・」
聖奈「うーん・・・」

〇可愛い部屋
聖奈「もしもし・・・ サンタ？」
サンタ「おっ！ その声は聖奈ちゃん！」
聖奈「なんですぐ分かるわけ？」
サンタ「そりゃあもう・・・この歳になると夕べ何食べたか忘れるけど、タイプの子の声は忘れんよ！」
聖奈「うわあっ！キモ！」
サンタ「ところでこのワシに何用じゃ？クリスマスディナーなら」
聖奈「じゃなくて!! コレコレシカジカで・・・ 弟のところに来てあげて欲しいの」
サンタ「いやいや、病院はまずい。 家族でさえ面会するのに予約が必要なんだろう？サンタなんか門前払いだよ」
聖奈「あっそう。 だったら、10年前にあたしの部屋に入ってきたときあんたが何をしようとしてたか」
聖奈「ＳＮＳで拡散しちゃうぞ!!」
サンタ「そ、それだけはご勘弁を・・・」
聖奈「だったら言うこと聞きなさい！」
サンタ「んー・・・ そうだ！良い方法がある！ 聖奈ちゃんがサンタになれば良い！」
聖奈「はあ!? あたしじゃただのコスプレでしょ」
サンタ「いや、本物のサンタになれば良いんだよ」
サンタ「一週間後にサンタグランプリが開かれるんだ。それに一般部門で参加して、金賞とれば暫定的にサンタとして認定される」
聖奈「あのね。 そんな簡単に・・・」
サンタ「サンタ協会が出している『サンタグランプリで金賞受賞するマニュアル』を買って」
サンタ「勉強すれば99.９％受賞出来るって話だ」
聖奈「そのマニュアルっていくらよ？」
サンタ「超短期集中コースだと49万円だったかな」
聖奈「高っ！ それって教材商法じゃん」
サンタ「このご時世、サンタ協会も大変なのよ。 どうする？」
聖奈「ふー・・・ 49万ね・・・ 弟の命を救えるなら、安いもんか・・・」

〇病室のベッド
優斗「・・・」
聖奈「メリークリスマス!!」
優斗「・・・ お姉ちゃん、コスプレパーティー抜け出してきたの？」
聖奈「フッフッフッ 今まで優斗には黙ってたけど、お姉ちゃん実は本物のサンタだったのさ！」
聖奈「信じてないなら、サンタ協会公認のサンタバッジを・・・」
優斗「いや、そんなのどうでも良いからさ。 プレゼントは？」
聖奈「ハイ」
優斗「何これ？スーパーで売ってる駄菓子セットじゃん。しかも半額シール張ってあるし・・・」
聖奈「本物のサンタに逢えたんだから満足でしょ？ これで手術受けられるよね」
優斗「はあ？俺がいつ本物のサンタに逢うこと臨んだよ？」
聖奈「エッ!?だってあんなにお姉ちゃんのこと羨ましがってたのに？」
優斗「だからさあ・・・」
聖奈「だから？」
優斗「俺はお姉ちゃんになりたいんだよ！」
聖奈「は・・・はあ？」
優斗「俺、お姉ちゃんみたいな美人で賢くて人気者で健康的な女の子に生まれたかった・・・」
聖奈「ああ・・・49万円無駄だった・・・」
聖奈「ふっー・・・」