根暗なアルファと根明なオメガ ~オフィスで見つける運命の恋~

あいざわあつこ

第二話 『期待のエース? なオメガ』 (脚本)

根暗なアルファと根明なオメガ ~オフィスで見つける運命の恋~

あいざわあつこ

今すぐ読む

根暗なアルファと根明なオメガ ~オフィスで見つける運命の恋~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇オフィスのフロア
菅野薫「俺の名前は菅野薫(かんのかおる) 言います!」
菅野薫「関西支店からこっちにお勉強して来い! 言われてやってきたんス!」
菅野薫「期待のルーキーっちゅう感じで、 よろしくおなしゃす!」
羽島哉人「あ、あああ・・・」
須崎部長「わはは、元気いっぱいだな!」
須崎部長「でも、こういうときは、 俺じゃなくて私か、僕って言おうな! 菅野君!」
菅野薫「うぃっす!」
羽島哉人(悪夢だ)
羽島哉人(悪夢でしか無い。 まさか、あのときの陽キャが・・・!)
須崎部長「あっ、羽島君! そんな端っこいないで こっちおいでって〜」
羽島哉人「ひっ、いや、僕はそんな」
須崎部長「彼が教育係だから、色々教わってね!」
菅野薫「うっす、先輩よろっす!」
羽島哉人「うあ・・・あ、はい」
  みんなの視線がこちらに向いて、
  くすくすと笑い声が聞こえる。
  明るく人懐っこそうな菅野君と
  僕のコンビは、よほどおかしな
  取り合わせに見えたのだろう。
羽島哉人(悲しい)
羽島哉人(でも期待のルーキーってことは、 もしかして僕と同じ、 アルファだったりするのかな・・・)
羽島哉人(やだな、 余計比べられるようになったりしたら)
  一般的にアルファはほかの性より、
  優れている、と言われている。
  僕のような例外もいるにはいる
  みたいだけれど。
  ・・・そんなことを考えているうちに
  落ち込んで、思わずうつむいてしまう。
  と、ふいに菅野君が声をあげた。
菅野薫「あっ、大事なこと忘れとった!」
須崎部長「?」
菅野薫「俺、オメガなんでよろしくおなしゃす!」
「!?」
羽島哉人「え」
須崎部長「かっ、菅野君!? それは別に言わなくてもっ」
菅野薫「いや、言っとかんとあかんやろー」
菅野薫「抑制剤は飲んどるけど、アルファの人の ためにも伝えとったほうが、お互い快適 やろしな!」
菅野薫「ほんじゃ、そんなかんじでよろっす!」
  ペコっと頭を下げる菅野君。
  その姿は、堂々としたものだ。
羽島哉人(わざわざ、性別の告知はしなくても)
羽島哉人(し、しかも・・・ オメガは何かと軽んじられやすいから)
羽島哉人(デメリットのほうが大きそう、 なのに・・・)
  菅野君はなんてことない顔で、
  まわりに挨拶をしている。
  その堂々とした姿に、
  思わず目を奪われた。
羽島哉人(すごいな)
  彼の百万分の一でも、自信があれば
  そう、一瞬思うが・・・。
羽島哉人(いや、僕には無理だよ)
  すぐに現実に、引き戻されてしまう。
羽島哉人(僕には、無理だ)

〇オフィスのフロア
  ――数日後
羽島哉人「・・・えーっと」
菅野薫「どや! 俺の渾身のパワポ資料は!!」
羽島哉人「・・・んえぇ、っと」
菅野薫「なんやねん、はっきり言ってくれたほうがいいんすけど!」
羽島哉人「・・・ぜ、全然ダメです」
菅野薫「うがあ! なんでやあああ!!」
  菅野君の絶叫がフロアにこだまする。
  僕たちの属する営業部は、その名の通り
  代理店さんを中心に、誰かに商品を
  売り込むというのがメイン事業だ。
  しかも、化粧品を扱うということで
  先方さんもセンスがいい人が多く、
  自分たちにもある程度の
  色彩感覚などが求められてくる。
  ということで、見やすくキレイな資料制作は割と必須スキルなのだが・・・。
羽島哉人(赤と、黄色と黒の文字が入り乱れていて カオス)
須崎部長「おお、おお・・・これはまた。 ねえ、菅野君って、関西では資料制作は」
菅野薫「してへん!」
須崎部長「ですよね、うん。そんな気がしました」
  何故か胸を張る菅野君に、
  須崎部長は笑ってしまう。
  その後ろで、コソコソと同僚数人が
  噂話をしているのが聞こえてきた。
同僚1「菅野君って、色々やばいよね。 敬語も使えないし」
同僚2「わかる。この間も、 電話で取引先にタメ口聞いてた」
同僚2「それにパワポ、さっきちらっと見たけど 逆に天才的なレベルで見づらかったぞ」
羽島哉人(・・・言い返したいけど、でも資料は ・・・あ、うん、って感じだし)
羽島哉人(だけど・・・ でも、そういう悪口は・・・)
羽島哉人「あ、あの──」
菅野薫「わっはっは! 逆に天才的って褒めてんすよね!?」
菅野薫「ええで、どうやったら ああなるのか教えたる!」
同僚1「ええっ!? いや、ちがっ」
同僚2「ちょっ! いいっていいって!」
菅野薫「遠慮せんと、先輩方! 伝授したるで〜!」
  屈託なく笑う菅野君に、嫌味を言っていた同僚たちもつられてしまう。
須崎部長「なるほど、期待のエースって感じだよね」
  こそっと僕に話しかける須崎部長に、
  僕は小さくうなずいた。
羽島哉人「そう・・・ですね。 コミュ力、すごい、です」
羽島哉人(僕とは真反対だ。 菅野君が笑えばみんな笑う)
羽島哉人(人懐っこさだけで、のし上がれるタイプ)
羽島哉人(・・・おじいちゃん、好きそうだな。 こういう子)
  みんなの笑顔の中心に立てる人。
  それは、
  僕のあこがれを固めたような姿だ。
須崎部長「羽島君にも、いい影響があるといいね」
羽島哉人「・・・それは、どう、でしょうか」

〇街中の道路
  はじめての、外回りの日。
  大口の代理店を数店回った後、
  僕らは帰路についた。
菅野薫「っか〜、疲れた疲れた!」
羽島哉人「お、お疲れ様、たいへん、だった?」
菅野薫「うい。まあ、ぼちぼちっすね〜」
菅野薫「でもようやっと東京ん街も 歩き慣れてきたで」
菅野薫「もともと、俺、 足で稼ぐタイプの営業なんすよ」
菅野薫「やから、今までの研修みたいなん 逆にしんどかった〜」
羽島哉人「そう・・・でしょうね」
  先程の、客先での出来事を思い返す。

〇大きいデパート

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第三話 『家族を作ったる』

成分キーワード

ページTOPへ