〇古本屋
優杏「あーまいったー、夕立かー」
　　学校の帰り、短髪の女子高生は古本屋で雨宿りしていた。そこにはもう一人の男子高生もどうやら雨宿りのようだ。
夏里太「こまったな〜、これは······うわっ！」
　　ゴロゴロッ、ガゴンッと雷が鳴り雨も激しくなって２人は思わず店内へ避難した。

〇本屋
お婆さん「いらっしゃいまひ〜、なににいたしましょうか」
　　お年老いたおばあちゃん店長、
「いや、別に······ん？」
夏里太「あ、どうも」
優杏「え、こちらこそどうも」
　　言葉が重なりあい２人はつい互いを見る。すると男の子は、
夏里太「夕立って嫌ですよね」
優杏「うん、ホントッ、迷惑っていうか〜あハハッ」
　　苦笑い。話しかけてきた男の子としばらく待っていると夕立はおさまり２人は自宅へと帰っていった······。その次の日、

〇名門の学校
　　また学校の帰りに夕立が、昨日よりも２時間ばかり早く終わったというのにと愚痴をこぼす女子高生、
優杏「あ〜も〜最悪〜、あたし運ワルッ」

〇古本屋
　　家に帰って好きな事もしたいと古本屋を過ぎて走っていく。鞄を傘のようにして走るがほとんど意味がないほどに強く降ってくる雨風

〇街中の道路
　　そのせいか、キューグルルルルゥーッ、
　　ハッとしてとたんお腹が痛くなる。どうやらお腹を冷やしたようだ。
優杏「イヤー、どうしよどうしよどうしよぉぉーっ！」
　　頭にはトイレトイレトイレと連呼されたが、運よくコンビニに駆け込みトイレに俊足で入った。

〇コンビニの雑誌コーナー
優杏「――あ〜、体冷やしちゃダメって監督が言ってたっけ」
　　幸せそうな表情でお腹をスリスリしながらコンビニを出ようとして顔をあげると入口に高校生が、
優杏「あ、あの人たしか昨日の」
夏里太「今日も夕立、これだからこの季節は」
　　独り言を喋りながら右回りのコンビニのため右を向いたら、
夏里太「ん？　あ、君は昨日の」
優杏「ははっ、今日も雨宿りですか？」
夏里太「うん、ついてないですよね」
優杏「あ、うん、そうだね」
　　腹痛でコンビニに駆け込んだとは言えない。２人は仕方なくコンビニのイートインで待機することにした。

〇おしゃれなレストラン
　　――男子高生は外の雨風を窓越しで観ていた。だが女子校生は黙っているのが気まずいと、
優杏「あなた、西高でしょ」
　　声がして慌てて振り向く。
夏里太「う、うん、君は東高？」
　　そうそうと次の言葉がお互いに出ず、かえってなんとも言えない重い雰囲気になってしまう。このままではと男子高生は、
夏里太「き、君はとても、なんていうか、ボーイッシュな髪型だね」
優杏「え、髪型」
　　言いながら右手で髪の毛を触る。すると少したって、
優杏「ちょっとっ、それどういう意味よっ、女が短髪じゃ悪いわけっ！」
夏里太「ええー、いやそんなつもりで言ったんじゃあ〜」
優杏「これだから最近の男は！」
　　怒らせてしまったと思ったら、
優杏「あたしバスケやってんの、だから」
　　プイッと目を閉じて右に顔を向きながらちょっと恥ずかしそうに言う。
夏里太「バスケって、ハハッなっとく」
　　笑顔になる彼、しかしすかさず、
優杏「あんたはっ」
夏里太「え？」
優杏「『え？』じゃない、あんたの部活は？　なにしてんのよ」
夏里太「別に」
優杏「はあ？」
夏里太「なんの部活にも入ってないんだ、僕」
優杏「な〜んだつまんない、やると楽しいのに」
　　帰宅部の連中と同じかと思ったが、彼の目は何やら訳でもありそうと直感する。
優杏「なんかわけでも」
夏里太「あ、止んだみたいだよ」
　　さっきまでの勢いはどこへいったのかと言いたくなるくらいに外は晴れていく。

〇おしゃれなレストラン
優杏「じゃ、行こう」
夏里太「あ、うん」

〇街中の道路
　　２人がコンビニを出たとき彼から、
夏里太「そうだ君、名前なんて言うの？」
優杏「なまえ？　あたしは優杏（ゆあん）、君は？」
夏里太「僕は|里太（かりた）」
優杏「じゃあね、夏里太君」
夏里太「うん、じゃあね、優杏さん」
　　優杏はすぐ走りさるその背中はどんどん豆粒のように小さくなってあっという間に見えなくなる。
　　さすがバスケ部だと感心しながら彼女とは反対を向いて帰っていった······。
　　偶然が重なった２人、このあとも夕立になるたびにどうしてか再開することになっていく······。