夕立と黒雲(脚本)
〇大樹の下
寝坊した優杏(ゆあん)が学校に向かっていると途中の夕立に仕方なく木の下で雨宿っているときに夏里太(かりた)に出会ったり、
〇体育館裏
体育館でバスケをしているとき外が急に夕立になると気になって外を開けると走っている彼を目撃したりと、
2人は自然と夕立と自分たちの関係に薄々と気がついていく······。
〇カウンター席
そんな日が続きいつの間にか友だちに、
優杏「んでさ、今度試合があんだけど」
夏里太「気合入ってるね」
優杏「もちろんっ、今年最後のインターハイ、優勝してやるんだからっ」
2人は夕立ついでにカフェで雨宿り。コーヒーを飲みながら聞く夏里太に対し、
シュートのポーズや勢い余ってテーブルを叩いたりと騒がせながら楽しそうに説明する優杏。
優杏「それがあたしの······そうだお母さんの様子は、どお?」
夏里太「優杏の言葉に下を向くとコーヒーカップを|カップを置く受け皿《ソーサー》にそっと置き両手で包むように触れると、」
夏里太「······5日後、手術なんだ」
不安そうな彼の目、
優杏「成功率って、そんなに低いの?」
夏里太「成功率は70%って言われてて、でも」
優杏「よかったじゃん、70%ならもう成功したようなもんよ」
夏里太「簡単に言わないでよ」
優杏「あ、ごめん」
たとえ70%といえど100%でない以上は楽観視できない。自分の母親ならなおさら心配である。
夏里太「もし、失敗したら······」
不安な彼、しかし生きているのにもうお母さんは死んでしまったかのように話すのを
黙って聞いていると出てくる言葉はネガティブなことばかりで内心イライラしていた優杏は目を細め、
優杏「そんなんじゃ良くないと思うけど」
夏里太「え、なんだよ」
優杏「夏里太も辛いだろうけど、お母さんはもっと辛いよ」
おもわず夏里太は優杏の目を合わせ睨む、
優杏「一緒に不安に思ってたら、お母さんもっと不安になると思うけど」
するとたまらず立ち上がる。
夏里太「君に何がわかるんだよ、君にっ!」
優杏「夏里太、あたしはただ」
「もう、帰るよ」
優杏「ちょ、ちょっと」
そう言って夏里太はカフェを抜け出し走り去っていった。
〇店の入口
優杏「······あたしはただ」
彼が元気になればお母さんもと思うも、この日を境に2人は自ら会わなくなる······。