~小さな島に来た人魚と少年の恋物語~

ヒムネ

1話 ゴミ拾い(脚本)

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ヒムネ

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〇海辺
海田 風浜「いつも聴こえる波の音」
海田 風浜「僕は海辺でゴミを拾っている。どこの海でもそうだけど、ここ石浦でもペットボトルやビンなどのゴミが流れ着いてくる」
海田 風浜「でも、島の人達やボランティアの皆が一致団結して定期的に清掃しているからここはまだ綺麗な方だ」
海田 風浜「そんな小笠原が僕も大好きで、学校の帰り自転車で1人石浦に定期的に清掃しに来ていた」
海田 風浜「まったくゴミってやつは」
海田 風浜「ゴミにため息を付き不満をこぼしながら1時間くらい拾い続け、」

〇海辺
海田 風浜「ふ~、今日はこれくらいでいいだろう」
海田 風浜「コンビニの袋いっぱいに詰めた」
海田 風浜「自転車じゃあこれが精一杯で、それでも『細き流れも大河となる』だ」
海田 風浜「······綺麗だ······」
海田 風浜「海を眺めるとそこには儚くも奥行きのある茜色の黄昏が」
海田 風浜「僕はこれを観るためにもゴミを拾うのかもしれない」
海田 風浜「何処までも行けそうな空、それも日が沈む」
海田 風浜「行くかな······」
海田 風浜「今日のゴミ拾いに満足して帰りの方に振り向き歩いて砂の上を2歩、3歩、」
「ポチャンッ、」
海田 風浜「ん?」
海田 風浜「海の方から潜るような音、さらに、」
「カランッ、」
海田 風浜「足に何かあたったので見ると、」
海田 風浜「これは、琉球葵貝(リュウキュウアオイガイ)始めてみた」
海田 風浜「しかも拾った貝はハート型で大きさは10センチ位」
海田 風浜「確か大きさは半分くらいだったはず······」
海田 風浜「気になって海の方に顔を向けると沈んだ日の見える方に人影が。それも上半身だけでこちらを見ている」
海田 風浜「キミ、そこでなにしてる」
海田 風浜「声を掛けてみると、」
「それーっ、あたしのなの~」
海田 風浜(女の子の声、しかもこんな時間に)
海田 風浜「とりあえず返事が来たので、」
海田 風浜「もう家に帰った方がいいから上がってきなー」
「無理ーっ、だからあなたからきてー」
海田 風浜「えー······はぁ~っ、しょうがないな~」
海田 風浜「仕方なく砂浜を歩き靴が波で濡れない程度に近づくと、女性の姿が見えてピンクの髪に貝の水着というおかしな格好」
海田 風浜「ここまできたんだから、ホラッ、自分でこっちまできなよ」
マリッサ「無理だよ、地上には出れないもん」
海田 風浜「はあ? 地上って······」
マリッサ「だってあたし、人魚だから」
海田 風浜「はあっ?」
海田 風浜「ケロッとした顔で何を言ってるんだと思っていたら、」
マリッサ「ホラッ」
海田 風浜「尾びれが見え、」
海田 風浜「にっ、ににに、人魚ぉぉぉーっ!」
海田 風浜(人魚、人魚と言えば、伝説の生き物で不老不死とか不吉な者とか、あーあとセイレーンとか、まさかっ、僕は呪われたりするのか、)
マリッサ「ちょっと~」
海田 風浜(いやいや、まさか······食べる、とか、)
海田 風浜「など僕の頭の中はパニック状態」
マリッサ「ちょっとっ!」
海田 風浜「はっ」
マリッサ「それ返して」
海田 風浜「指差すのはさっきの貝で、そうなのかと手に持っていた貝を優しく投げ渡す」
マリッサ「アハッ、ありがとう」
海田 風浜(人魚は頭のつむじの左辺りに貝を付けたけど、どうやら髪飾りらしいな)
海田 風浜「僕は必死に気持ちを落ち着かせ、」
海田 風浜「に、人魚さんが、どうしてここ石浦に?」
マリッサ「へ~、ここって石浦って言うんだ~」
海田 風浜「髪飾りを付け終えた人魚、笑顔で喋る姿は悪い人魚とは思えないが」
マリッサ「たまたま来ただけ」
海田 風浜「え、たまたま?」
マリッサ「そっ」
海田 風浜「······そ、そうか」
マリッサ「フフッ······あっ、ちょっとっ」
海田 風浜「見なかったことにしようとその場を去ろうとした僕に、」
マリッサ「行っちゃうの?」
海田 風浜「もうこんな時間だから帰るんだよ」
マリッサ「え~そんな~」
海田 風浜「······他の人間に見つからずに帰りなよ」
マリッサ「ちょ、ちょっと、あ、そうだ、名前はっ?」
海田 風浜「海田 風浜」
マリッサ「カイタ フウマ?」
海田 風浜「······一応聞くけど、君は?」
マリッサ「あたしはマリッサ」
海田 風浜「気を付けて帰りなよマリッサ」
マリッサ「ああっ、フウマ君」
海田 風浜「僕は自転車に乗り帰った······」

〇本棚のある部屋
海田 風浜「家に着き、食事とお風呂を済まして自分の部屋の机で今日の出来事を考えていたんだ」
海田 風浜「······マリッサ、人魚······どうかしちゃったかな~」
海田 風浜「一応頬をつねってはみたが、」
海田 風浜「夢、なわけないか、はぁー」
海田 風浜「やっぱり痛いし夢じゃないのかと天井の方に顔を向け、」
海田 風浜「これじゃ勉強に身が入らないよ」
海田 風浜「頭に残る人魚マリッサに愚痴をこぼして勉強をする······」

コメント

  • 風浜くんは見た目も行動も好青年でいい感じ。これからマリッサが人間に変身する展開はあるんでしょうか。童話の「人魚姫」は悲恋に終わりましたが、二人の恋は素敵な形に発展してほしいなあ。

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