職業、サンタクロース

ぺろしき

サンタの品格(脚本)

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ぺろしき

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〇東京全景
  20XX年 12月24日
  クリスマス・イブ・・・
  この日、子ども達は早く眠る。
  サンタさんからプレゼントを貰うために。
  かつて、サンタは当たり前ではなかった。
  多くの子どもの親が、サンタの代わりにプレゼントを用意していた。
  けど、今は違う
  今は、サンタクロースが国策として認められ、有資格者がプレゼントを配っている。
  でも、その正体を知る者はいない
  なぜなら”サンタクロース”だから。

〇クリスマスツリーのある広場
  この子、サンタクロースのひとり。
サンタ3776「夜分にすみません。 サンタクロースですっ!」
サンタ3776「・・・」
サンタ3776「何?」
サンタ3776「サンタは”おじいさん”だろって? ”トナカイ”に乗ってるんだろって? ”真っ赤なお鼻”なんだろって?」
サンタ3776「・・・ベタかっ!」
サンタ3776「あなたはマスコミに毒されている。 真実はもっと複雑で楽しいものなの。 創造力を放棄するのは、淋しくない?」
  サンタクロースは身バレしてはいけない。
  だから、彼女が本物かどうかもわからない。

〇クリスマス仕様の畳部屋
サンタ3776(潜入成功!)
サンタ3776(喜んでくれるかな・・・)
サンタ3776(ん?)
サンタ3776「お。サンタさんへのお手紙ってやつね。 なになに・・・」
  『私をサンタクロースに戻せ』
サンタ3776「なにこれ」
  すると、布団から人が飛び出す。
サンタ0001「来ましたね・・・ 現役のサンタクロース」
サンタ3776「え、どうして・・・」
サンタ3776「ここには女の子が寝ているはず・・・」
サンタ0001「政府のクラウドにアクセスし、顧客リストに手を加えました」
サンタ0001「あなたを誘き出す為にね」
サンタ3776「なんで、そんな手の込んだことを・・・」
サンタ0001「あなたから、サンタの資格を奪う為です」
サンタ0001「身バレした者はサンタの資格を失う」
サンタ3776「もしかしてあなた”初代サンタクロース”?」
サンタ0001「ほぅ・・・私をご存知ですか」
サンタ3776「もちろん」
サンタ3776「世間のサンタクロース像を”おじいさん”にした、A級戦犯だからね!」
サンタ0001「シャラープ!」
サンタ0001「私の作った道を当然のように歩くお前に何がわかる」
サンタ0001「いまだに私の印税で食ってるくせに、私を引退させるなんて、人でなし!」
サンタ3776「バブルの恩恵を受け、年金もしっかり貰っている。これ以上、何を求めるの?」
サンタ0001「名声だ。私は名声が欲しい」
サンタ0001「サンタクロースは私はひとりだったと、歴史に名を刻みたいんだ!!」
サンタ0001「教科書に載って、お札になりたいんだ!!」
サンタ3776「下らない・・・」
サンタ0001「なんだと!」
サンタ3776「”少子高齢化”、”8050問題”、”ヤングケアラー”・・・すぐ思いつくだけでも、私たち世代の抱える問題は山積み」
サンタ3776「もう昔とは違うの。 国民の働き方は変わってしまったの」
サンタ3776「もちろんサンタクロースも」
サンタ0001「サンタも?」
サンタ3776「ええ。 あなたの時代はクリスマス・イブ以外の日は何をしてた?」
サンタ0001「そりゃあ、休みさ。 364日休み」
サンタ0001「イブでさえ休みだ。 プレゼントを配るのは親だからな。 交際費でザギンやギロッポンで豪遊よ」
サンタ0001「今は違うのか?」
サンタ3776「今は、顧客管理から梱包などあらゆることをひとりでやってる」
サンタ3776「超激務のブラックな仕事よ」
サンタ0001「なんでも管理するからそうなるんだ。 やらなくていい仕事を自分達で増やしていく。客寄せパンダはパンダでいいのにな」
サンタ3776「理想はいいの。私は現実を生きてる。 私が人を幸せにできるのは今日だけ。 あとの364日は準備なの」
サンタ0001「君は、それでいいのか?」
サンタ3776「新人なんで、よくわかりません」
サンタ0001「そうだな。 じっくり考えたらいい」
サンタ3776「でもあなたに見つかったから、 あなたを消さないとサンタは続けられない」
サンタ3776「だから、消えてもらうね」
サンタ0001「え?」

〇断崖絶壁
  福井 東尋坊
サンタ0001「まさか、こんなことになるなんて」
サンタ3776「自分をさらけ出せる先輩に会えたのは、とても嬉しかった」
サンタ3776「けど、お別れだね」
サンタ0001「私は世間にとって存在しないも同じ」
サンタ0001「私の死体があがっても、 ただ”コスプレおやじ”ってだけ。 心置きなくやってくれ」
サンタ0001「メリークリスマス! 初代サンタクロースからのプレゼントだよ」
サンタ3776「まいど」
  愛を持って背中を押すと、男は海の藻屑と消えた。
サンタ3776「元サンタってのはラッキーだったわ。 ホントかどうかはわからないけど」
サンタ3776「あれ?」
サンタ3776「落とし物?」
  写真には──

〇劇場の舞台
  名探偵として売り出し中の男が写っていた。
サンタ3776「えっ? 何これ? 何の”フラグ”なの? もしかして、恋愛フラグ?」
  どことなく、初代サンタクロースに面影が似た男。彼女はそのことに気付いていない。

〇断崖絶壁
  クリスマス・イブの翌日──
  つまり、クリスマスの当日。
  海岸に一体の水死体が流れついた。
刑事A「あらあら、これはなんとも・・・」
刑事B「”サンタのコスプレ”ですね。 昨日、イブでしたもんね。 はめを外しちゃったんでしょうか・・・」
刑事A「事件性は無さそうだが、調べてみようか」
刑事B「はい」
???「クリスマス・イブに殺人なんて、まったく分かってない輩がいるもんだ」
???「あ・・・ 父さん・・・」
???「と、父さーん!!」
???「犯人は絶対に捕まえる!!」
???「サンタクロースの息子として!」

〇東京全景
サンタ3776「あーあ、結局朝になっちゃった。 でも、子ども達喜んでくれるだろな」
サンタ3776「あ、自分へのプレゼント忘れてた」
サンタ3776「仕事ばっかりはよくないね・・・」
  その時、ポケットの写真に手が触れた

〇劇場の舞台
サンタ3776「あ~いい男。 いつか出会えたらいいな」
  初代サンタクロースの最後のプレゼントは、彼女の元に届くのか!?
  それはまた、別のお話

コメント

  • 唐突に東尋坊が出てきて2時間サスペンス風になったところでお茶吹きました。クリスマスのイメージと最もかけ離れた場所を対決の場所にチョイスするセンスには脱帽です。

  • サンタクロースになるのも大変なんですね。
    正体を知られたら殺すっていうのもなかなかバイオレンスです。笑
    終盤に出てきた探偵さん(?)も気になります!

  • 職業がサンタ、大変な仕事ですよね(笑)登場人物の会話のやり取りやテンポがよくて、最後まで集中して読めました。この先が少し気になります。

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