始まり(脚本)
〇殺風景な部屋
エリカ「なぁ、無理だよ・・・嫌だよ」
エリカのいる部屋には二つのボタン。
その目先には眠った仲間たちが入っている
箱と一人の女の子が入った箱が並んでいた。
「エーリ君。 ね、こっちきーて!」
女の子は声をかけた。
恐る恐るエリカは近づく。
一箇所だけ空いている穴から女の子は
手を伸ばした。
「髪触らして〜」と誘導するように手を頭に置いた。
「よしよーし、大丈夫大丈夫。 エリカ君ならできるよ」
エリカ「俺は千秋がいないと・・・」
千秋「エリカ君にうちは選べないよ」
エリカ「そんなこと・・・」
千秋「だってうちの彼氏は優しくて カッコいーからね」
エリカ「千秋・・・」
千秋「ほら、ちょっとボタンを押すだけ! 簡単でしょ」
エリカ「でも・・・」
千秋「頭のいいエリカ君だから 本当は、分かってるでしょ」
千秋「こっちは罠」
千秋「うちの方を押せば誰も助からない」
エリカ「くそが・・・」
エリカ「くそがよ!」
千秋はエリカの頬に手を当てる。
千秋「ほら、笑ってよ。 エリ君の可愛い笑顔が見たいなー」
エリカ「・・・」
エリカ「・・・ばーか」
エリカは貼り付けたような偽りだけど
作っていない・・・
精一杯のそんな笑顔を彼女に見せた。
エリカ「仕方ねーから、折れてやるよ」
千秋「へへー、ありがとー!」
エリカ「・・・愛してる」
千秋「・・・」
千秋「・・・えへ、うんー」
エリカ「・・・ひでぇやつ」
千秋「知らなかったー?」
エリカ「知ってたよ・・・バカ千秋」
エリカはさっきの部屋に戻るため
ゆっくり、ゆっくり足を進ませた。
その背中は後悔と苦しさに満ちていた。
千秋(これで、よかったんだ。 これが正解、なんだ)
千秋(うちはエリ君に今までたくさん、たくさん わがまま言ったんだ。 今ぐらいは我慢しないと──)
千秋(うちは、間違ってない・・・ だから泣かない、もん)
千秋「行かないで、なんて、言っちゃダメだもん」
千秋「・・・」
千秋「・・・ぐすっ」
千秋「こわいよ、さみしいよ、うぅ」
千秋「うちのこと置いてかないで・・・」
千秋「エリ君、行かないで・・・」
千秋「うちも、うちも”愛し”」
千秋サン。脱落デス。
〇地下の部屋
「──!!」
鬼灯「エリカ!! 大丈夫か!?」
エリカ「・・・俺はな」
鬼灯「どういう・・・」
エリカ「俺と、同じ部屋にいたのは、千秋だった」
鬼灯「──そうか、千秋さん、が」
鬼灯「・・・おつかれ」
ぎゅ
鬼灯はエリカを抱き寄せた。
いつもアホみたいな顔をしてる彼の身体は
微かにまだ震えていた。
エリカ「──俺は、俺は好きな女一人すら 守れねぇのかよ!!」
鬼灯「そんなこと!!」
エリカ「あんだよ!! 俺が、俺が千秋を!!」
フラッ
柳「エリカ兄さん!!」
鬼灯「・・・大丈夫だ。 ショックで倒れたんだな。 休ませてやろう」
柳「・・・はい」
柳「・・・なんでこんなことに」
鬼灯「んなの、俺も聞きてぇよ」
鬼灯サマ。
2番のお部屋にお入りクダサイ。
柳「鬼灯兄さん──!!」
鬼灯「・・・」
鬼灯「大丈夫。 安心しろ」
鬼灯「俺は無敵の鬼灯だ」
柳「・・・気をつけて」
柳「・・・他の人達はどうなってるんだろう」
〇殺風景な部屋
鬼灯「ここか、2番の部屋」
「鬼灯さん!?」
鬼灯「?」
マジック「やっぱり鬼灯さん!」
鬼灯「おぉ、マジックか!」
マジック「良かった・・・ まだ生きてたんだね」
鬼灯「あぁ、そっちも無事でよかった」
「2番・・・ここ?」
マジック「その声は」
鬼灯「小冬音!!」
小冬音「二人とも、同じ部屋、だったんだ」
マジック「そうみたいだね!」
鬼灯「よかったよかった」
小冬音「みんな無事、良かった」
・・・
鬼灯「待て、同じ部屋ってことは」
マジック「俺ら、もしかして」
小冬音「・・・殺し合い?」
・・・
マジック「俺には無理だよー!!!」
鬼灯「悪趣味にも程があるな・・・」
小冬音「・・・」
ソレデハ
ミッションを発表シマス。
この部屋カラは
二人しか出れません。
生贄を一人捧げてクダサイ。
鬼灯「くそっ!」
鬼灯「弄びやがって──!!」
マジック「いけ」
小冬音「にえ?」
鬼灯(・・・なんか、いまいち緊張感ってか なんか、うん、沸かねぇな)
鬼灯「と、とりあえず、 一人、死ぬ人を決めろってことだ」
小冬音「なるほど」
マジック「なるほど」
・・・
マジック「そんなのやだよーー!!!」
小冬音「僕も、嫌だ」
鬼灯「そ、そうだな、俺も嫌だよ」
鬼灯「・・・」
鬼灯「小冬音と、マジックで生き残ってくれよ」
マジック「そんなのダメだよ鬼灯さん! それだったら俺が!」
小冬音「やだ。 なら僕」
マジック「ダメ!! 冬さんは絶対にダメ!」
鬼灯「ああ。 小冬音はダメだ!」
小冬音「なんで」
マジック「だって俺は・・・」
マジック「・・・」
マジック「と、友達だから。 冬さんは大事な友達だから」
マジック「生きてて欲しい」
鬼灯「おう。 ほら、だから俺が死ねば丸く収まるだろ」
小冬音「だめ!!」
鬼灯「んな事言ってたら、一生出れないぞ」
小冬音「っ!」
マジック「・・・どうしよう」
小冬音「・・・」
鬼灯「・・・」
マジック「・・・」
マジック「あの頃に、戻りたいよ」
ソリッドシチュエーションスリラーが好きなので、この設定にはオッとなりました。冒頭からいきなりのクライマックスというのも思い切った構成ですね。エリカと仲間たちがどうなるのか…。今後の展開が楽しみです。