1-3.ブラックホール(脚本)
〇国際会議場
バッ──
曹操「ハァ、ハァ、ハァ──」
荀彧「曹操様っ」
袁紹「曹操・・・」
董卓「誰や、そいつは」
荀彧「すいません・・・」
曹操「泣くな、イク」
曹操「なんとかする」
曹操「お初にお目にかかります。 曹操と申します」
董卓「ああ、青星のペンのやつか」
曹操(なっ)
曹操(董卓の胸ポケットには、 もう緑星のペンが・・・)
ギロッ
袁紹「?」
曹操(こうなってしまえば ・・・・・・やむなし)
董卓「ガハハ、よろしくな」
曹操「ええ、よろしくお願いします」
董卓「じゃあ、オレ様は撮影があるから これで失礼するわ」
董卓「ガハハッ、まぁ、任せておけ! オレ様に任せれば映画業界の未来は明るい!」
袁紹「ええ、期待してますよ、董卓さん」
曹操「ハハハッ──」
曹操「ハァ──」
曹操「バカ袁紹!」
袁紹「ふっ、負け惜しみかい、曹操。 だが、そもそもこの重要な円卓会議に」
曹操「・・・何も見えてない ・・・何も聞いてない」
曹操「・・・袁紹、どうして董卓を招待した?」
袁紹「ん?」
袁紹「バーで知り合った知的な女性の紹介さ」
曹操「その上、意見まで他人任せで、 その言葉に自分の意見もない」
曹操「まったく、空っぽな男だな!! 袁紹!!!!」
袁紹「なっ」
袁紹「空っぽなのはキミだろ? 曹操」
袁紹「キミはボクと違ってこの会議で役に立ったことなんて一度もないじゃ・・・」
曹操「うるせー、バーカっ。 映画業界の足を引っ張ったお荷物、 いや、疫病神に言われたかねーよ、だ!!」
袁紹「疫病神っ!? このボクが!!!?」
曹操「ああ、そうだよ。 この疫病神」
袁紹「キミの話はいつも支離滅裂で困る。 どこをどう見たらこのボクが疫病神になるんだか」
曹操「じゃー聞くぜ? 董卓の作品はお前のココを動かしたか?」
ドンっ
袁紹(胸・・・?)
袁紹(あぁ、心って意味か)
袁紹「いや、忙しくて彼の作品をまだ見れて・・・」
曹操「なら見ろ・・・ それで、何も感じねえならオレはお前と 金輪際、口を聞きたくねえ」
袁紹「彼の作品はそんなにひどいのかい!?」
曹操「逆だ・・・バカ」
曹操「この中で『今』最も凄え作品を作れる男だよ、奴は・・・」
曹操「他の奴も董卓の作品を見て対策でも考えとけ」
曹操「でないと、食い潰されるぞ」
「・・・」
袁紹「董卓さんは約束してくれたんだ!!」
袁紹「シロサワ監督亡き後、 衰退したこの映画業界を一緒に 再興しようって・・・」
曹操「袁紹。脚本家を名乗るなら覚えとけ」
曹操「行間はお前にとって、 都合よく働くわけじゃねぇ」
曹操「それと、」
曹操「漫画と違げえんだ。 善人はずーっと善人だと言う先入観を捨てろ」
曹操「人なんて、善人で悪人なんだよ」
袁紹「?」
曹操「ふっ」
曹操(何でお前は純粋なのに、 光に照らされた人間しか見えないんだろうな)
曹操(お前がちゃんと日陰にいる奴も 見れる男だったら・・・)
曹操(いや、それができないから コイツは自分が綺麗な心の持ち主だと思えるんだろうよ)
曹操「行くか、イク」
荀彧「はっ、はい!!」
曹操(ジジイ。 やっぱり、てめぇが死んだら 映画業界はこの有様だ)
曹操(株式会社シロサメは ジジイの作品の劣化版を出涸らしの茶みてぇに、何度と薄めて提供し、)
曹操(こんなものに高い金を払いたくないと、 客足は遠のいた)
曹操(映画がつまらなくなったことに、 さらに追い討ちをかけるように、ファスト映画や違法アップロードが流行っちまった)
曹操(でも、衰退期ももう終わりだ)
曹操(時代が動く)
曹操「さぁ、映画業界の真暗黒時代の始まりだぜ」