1-2.師弟の約束(脚本)
〇高速道路
フーーーンッ、フンフーーーン──
曹操「絶影、今日は絶好調だなっ」
フーーーンッ、フーーーンッ
曹操(まったく、袁紹のやつめ)
曹操(・・・ジジイ。 やっぱり、アイツとは うまくやれる気がしねぇーよ)
──数年前
日本映画界には、誰もが尊敬の念を抱かずにはいられない男がいた
〇おしゃれな居間
曹操「はぁっ!? ジジイ、てめー今、なんて言った?」
シロサワ「じゃから、ワシの後継者に──」
曹操「寝言は寝て言え、クソジジイ。 永眠させっぞ」
シロサワ「聞こえておるじゃん」
曹操「カッカッカッ 生きてっからなっ」
シロサワ「・・・本当にダメか」
曹操「オレはな、お年寄りから貰う施しは お年玉だけって決めてんだよ」
シロサワ「真面目な話なんじゃが」
曹操「ああ、やだね」
曹操「オレは映画界の歴史に名を刻みてえんだ」
曹操「ジジイの作品の踏襲するのもやだし、 大体、今も昔も二代目ってのは損な役回りなんだよ」
曹操「ジジイの後を継いだら、 オレらしさを出せずに死んじまう」
曹操「だから、オレは独立してテメエの実力だけでジジイを越す」
曹操「だから、諦めろ」
シロサワ「袁紹と一緒にか?」
曹操「バーカ、誰があんなおべっか野郎と組むか。 制作費と興行収入が全てじゃねーんだよ」
シロサワ「・・・映画は金がかかる それも大事なことじゃろ?」
曹操「だからって忙しいとか言って金ない奴の話を聞かないのはちげーだろっ」
シロサワ「お主の言うことも一理ある」
シロサワ「じゃが、弱き者ばかり見て、 強者のことを潰そうとする お主も偏り過ぎじゃ」
シロサワ「強者にも脆い部分がある」
シロサワ「救済は皆に必要である。 お主なら分かるな曹操?」
曹操「そんなの・・・。 分かったってなぁ、 色々気にしていたら何も創れなくなっちまう」
シロサワ「お主らが組めばワシなんて簡単に越せると思うがのう」
曹操「アイツの言うことなんて聞いてたら・・・ オレの個性がどっか行っちまう。それじゃあ、何も伝わらないし伝えられない」
シロサワ「・・・しかし、多くの人に 見てもらわなければただの自己満足じゃ」
シロサワ「まぁよい、いずれお主なら辿り着くはずじゃ」
曹操「いいや、オレはジジイの想像の遥か上を超えてやるぜ」
シロサワ「フォッフォッフォッ そりゃあ、楽しみじゃのう」
シロサワ「・・・ただ、それが見れぬのが残念じゃ」
曹操「・・・本当に死ぬのか ジジイ」
シロサワ「あぁ」
曹操「まだ、教わり足りねーぞ」
シロサワ「嘘をつけ。 お主ならワシのしたいこと、できることなんて朝飯前じゃろうて」
シロサワ「分かっておる・・・これはエゴじゃ」
シロサワ「お主の体を借りて、まだ映画界に居座りたいと思ったワシのな」
曹操「・・・」
シロサワ「後生の頼みじゃ、一つだけ頼まれてくれぬか?」
曹操「金なら貸さねーぞ」
曹操「まぁ、聞いてはやるよ──」
〇おしゃれな居間
曹操「てめーのケツくらいてめーで拭けよ」
シロサワ「・・・頼めるか?」
曹操「ったく、分かったよ」
曹操「ジジイには恩もあるからな」
シロサワ「おおそうか!! これで安心して死ねる」
曹操「まだ、後継ぎ問題が残ってんじゃねーのか?」
シロサワ「いいや、問題ない。 さっきも言ったが、アレはワシのエゴじゃ」
ポン
シロサワ「映画業界の未来は 頼まなくてもいいんじゃろ?」
曹操「へへっ、あったりめーだっ」
シロサワ「ならばよしっ。 会社はあくまでも 映画業界の一部でしかないのじゃから」
シロサワ「頼んじゃぞ」
「おっ、そうじゃ」
シロサワ「もう一つだけ」
曹操「ダメだ、頼みごとは一つだ」
シロサワ「ケチンボ・・・」
曹操「ああん? じゃあ、さっきのも聞かねーぞ」
シロサワ「冗談じゃ。 最後に一つアドバイスを」
シロサワ「コホン・・・っ」
シロサワ「曹操よ、己が龍を解き放て」
曹操「!?」
シロサワ「ホッホッホッ、じゃあな」
「愛弟子」
バタン
曹操「・・・師匠ありがとうございました」
曹操「──必ず、オレは」