第2章 第6巻(脚本)
〇幻想
二人はメッセージを何度も重ね、実際に会うことになった。
まるで中学生か高校生──。
どちらも自分の心情が相手にばれないように試行錯誤を繰り返しながら──
そして、ピュアな二人は青臭いデートを何度も繰り返して、山田にとって一生分の勇気を振り絞る日が訪れる。
山田 総一朗「こ、こ、こんな俺でよければ付き合ってほしいなー、なんてこと言ったら嫌だよね?絶対ダイエット頑張るから!!」
影野 華「うん!私の方こそ変わっているところいっぱいあるから嫌われないか心配だよ・・・」
山田 総一朗「華ちゃんはそのまんまがいいのさ! だから変わらなくて大丈夫だよ」
影野 華「じゃあ総ちゃんも変わらないでいて。 私クマさん大好きだから──」
誉め言葉か分からない疑問よりも、OKをもらえた喜びで頭の中がいっぱいになった。
こうして二人は結ばれたのだった──
〇明るいリビング
影野 華「はじめまして、影野 華と申します」
山田 真紀子「はじめまして。総一朗の母です」
山田 真紀子「しかし驚いたわ。”あの総一朗”が、こんなにも可愛くて素敵な子をどこで見つけてきたのかしら」
影野 華「総一朗さんとは、AIがお互いの性格などを総合的に判断し、出会いの場を提供するアプリケーションを介しまして──」
山田 総一朗「『あの総一朗が──』って、ひどいなぁ」
山田 真紀子「お母さんにはよく分からないけれど、二人が惹かれ合って結ばれたのならそれでいいわ」
山田 真紀子「そのAI(アイ)ちゃんって子には、感謝しなくちゃね」
山田 真紀子「華ちゃん、クマみたいにぽっちゃりしてて女性なんてほとんど知らない子だけど、どうぞよろしくお願いします──」
山田 総一朗(AIちゃんに感謝・・・か。 そうだな、いつまでも忘れないようにしないと──)
母に念願の彼女を見せることができた
。この喜びは『華ちゃん』がいなければ生涯叶わなかっただろう──
君と出会えて、よかった。
この瞬間をいつまでも忘れない──
そう、深く深く胸に刻み込んだ。
〇葬儀場
山田 園花「ママ・・・ママッ──!!」
山田 園花「ううっ・・・また美味しいご飯作ってよぅ・・・」
山田 園花「起きてよ・・・いなくなっちゃ嫌だ・・・ママぁぁぁー!!」
山田 総一朗「母さん・・・ どうして言ってくれなかったんだ・・・」
入退院を繰り返していた母は、いつも気丈に振る舞っていたので気付かなかったが、体中を病が蝕んでいた。
既に手遅れ──まさにそんな状況だったのだろう。あっという間に痩せ細り、寝たきりになった。
食事も喉を通らず、苦しかったはずなのに、最期は、安心した──そんな安らかな笑顔で旅立っていった。
山田 総一朗「母さん・・・今まで本当にありがとう。 必ず華ちゃんのこと、幸せにするからね」
影野 華「もっとお話がしたかったです・・・。 ぐすっ・・・ぐすっ・・・」
俺の大事な人のために、心の底から泣いてくれるこの子を大切にすることが、これからの俺の使命なんだ──
山田 総一朗「もっともっと強くなるからね。 どうか天国から暖かく見守っていてください」
母に誓いを立て、もう一度手を合わせた。