あたし天狗やめました

なし

特別になるって決めたんだけどナ(脚本)

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〇店の入口
  代官山・カフェ
天狗「シクシク」
有休即消化系OL「ここ、クチコミ評価高いから期待──」
カリスマ☆美容師「きも」
天狗「ニッ」
有休即消化系OL「行こ・・・」
天狗「困った」
カフェ店主「困ってんのはこっち 店前に居座られてさ」
カフェ店主「金やるから消えて?」
天狗「坂はどこカナ?」
カフェ店主「そろそろどっか行ってくんないと──痛い目見るよ?」
カフェ店主「空のミキサーでも果物詰めると威力出そうだよね」
我智ヶ咲 蓮「嗚呼有名人になりたいな〜♪っと ──えっ」
我智ヶ咲 蓮「暴力? 絶対だめですよ!」
カフェ店主「この人がいるせいで商売あがったりなんだ」
我智ヶ咲 蓮(人じゃないでしょこれ)
天狗「坂に行きたいヨ」
カフェ店主「昨日からずっとこう」
カフェ店主「君、どっか連れてってよ」
我智ヶ咲 蓮「わ、わかったから暴力だけはやめてよ」
カフェ店主「こういうのがいると景観が乱れてブランドが傷付く。まったく」
我智ヶ咲 蓮「夜通しここにいたの?」
天狗「ニッ」
我智ヶ咲 蓮「そっか、それは、寒かったね」
天狗「は? 余裕ヨ? 天狗なめてる?」
我智ヶ咲 蓮「イラッ」
我智ヶ咲 蓮「一体、何があったの?」
天狗「聞いてくれる?」
我智ヶ咲 蓮「あたしは冷たい渋谷人とはちょっと違うから」
天狗「普通そうに見えていい人だネ」
我智ヶ咲 蓮「ムッ、これでも昔は」
我智ヶ咲 蓮「いいや。教えて」
天狗「実は──」

〇店の入口
我智ヶ咲 蓮「霊山だと思って来たら代官山で、帰り道がわからない──!?」
我智ヶ咲 蓮「だけでなく、ショックで子どもを108体も解き放った──!?」
天狗「そうなのヨ」
我智ヶ咲 蓮「貴様どうしてくれる」
天狗「坂まで行けば、丸く収まるけどネ」
我智ヶ咲 蓮「なぜ余裕たっぷり?」
我智ヶ咲 蓮「今渋谷には、オジサンも合わせて109体の化け物が蠢いているよ?」
天狗「化け物と言っても、まだ子ども。そう、バケモノのk──」
我智ヶ咲 蓮「ストップ。舞台が渋谷でそれはまずいぜ」
天狗「オジサンが帰れば、子も一緒に帰還するから大丈夫! 折角だし観光したいナ」
我智ヶ咲 蓮「大丈夫じゃない。一刻も早く帰ってよ」
天狗「いい坂があればナ〜」
我智ヶ咲 蓮「坂ならなんでもいいんだね? 代官山駅から、東急東横線に乗ろう! ナウ!」

〇改札口
我智ヶ咲 蓮「待って。オジサン、マスクしてない」
天狗「その口の布、流行モノ?」
我智ヶ咲 蓮「流行というか、流行モノに勝つためというか・・・ はいこれ」
天狗「似合う?」
我智ヶ咲 蓮「鼻マスク! ──天狗の鼻、長すぎ」
我智ヶ咲 蓮「公共交通機関は諦めよう」
天狗「えー、電車乗ってみたいナ!」
我智ヶ咲 蓮「うるせえ歩くぞ!!!!」
天狗「怖あ」
我智ヶ咲 蓮「この作品はねぇ、東急様にまつわるあらゆるものに迷惑をかけたら”終わり”だよ」
天狗「作者からの、圧力──」

〇空
我智ヶ咲 蓮「降ろせ! なぜ空にいる」
天狗「飛べば速いかなと」
我智ヶ咲 蓮「高所恐怖症なのに〜」
我智ヶ咲 蓮「大体、どうやって飛んでるわけ!?」
天狗「この扇をあおぐと飛べちゃうんだヨ」
我智ヶ咲 蓮「えっ、激バズりアイテムじゃん!!」
天狗「えっへん」
我智ヶ咲 蓮「それがあれば名を上げられるかも! 譲ってくれたりは?」
天狗「いくら恩人でもあげられないんだ 帰るのに使うし」
我智ヶ咲 蓮「そっかあ。まあ仕方ないよね」
天狗「ごめんネ ちなみに、どうして有名になりたいノ?」
我智ヶ咲 蓮「──あっあれ、デンマーク大使館 あっちはウガンダ大使館」
天狗「大使館がいっぱい」
我智ヶ咲 蓮「大使館を辿って高速道路の向こうに降りれば、オジサンの帰る坂──道玄坂に着くよ」

〇道玄坂
天狗「この道が道玄坂かあ」
我智ヶ咲 蓮「二度と空は飛びたくない うぷ、口の中にむ、虫が」
軟楢 一夏「蓮。事務所から逃げ出して・・・探したよ」
我智ヶ咲 蓮「口の中をなんとかするから3秒待て」
軟楢 一夏「はい」
我智ヶ咲 蓮「ふう。ごめん、でもあたし、一夏みたいに人に媚びられないから──」
軟楢 一夏「そんな・・・蓮は、ずっと私の純粋な──」
天狗「状況が飲み込めない」
軟楢 一夏「えっこれは何?」
我智ヶ咲 蓮「天狗・・・」
天狗「彼女誰?」
我智ヶ咲 蓮「顔面と声は天使」
軟楢 一夏「とにかく、今戻れば私の圧力で許されるかも」
子「アソボ」
若くして所得税33%「寄るなぁああ!!」
我智ヶ咲 蓮「ごめん。あたし、他にやることがある!」
天狗「なんだろナ」
我智ヶ咲 蓮「行くぞばか天狗!!」
軟楢 一夏「蓮、どうして変わっちゃったの? でも、今の蓮──」

〇渋谷のスクランブル交差点
天狗「ぜえぜえ よし、帰るゾ〜」
子「パパー」
子「パパー」
我智ヶ咲 蓮「子が天狗に乗っかって」
我智ヶ咲 蓮「山になって」
天狗「扇が、動かせない」
我智ヶ咲 蓮「もう! 世話の焼ける!」
天狗「ああそんな妖怪を踏みつけると、心の奥底を暴かれちゃうヨ」
我智ヶ咲 蓮「唐突に設定を増やすな!」
天狗「ほんとだヨ。だから天狗にはみんな辛辣なの」
我智ヶ咲 蓮「オジサンの態度次第だった気がするけど、なるほど」
我智ヶ咲 蓮「でも知るか! ここまできたら、あたしが帰してあげる!」
我智ヶ咲 蓮「ここの人達とは違う、特別になるって決めたんだ──」

〇バスの中
我智ヶ咲 蓮「2020年11月16日」
我智ヶ咲 蓮「いつも使ってる──今日もそこで乗って渋谷駅まで来た──バス停で、女の人が死んじゃったんだ」
我智ヶ咲 蓮「終バスから始発までの間、バス停の小っちゃなベンチで寝泊まりしてた女の人」
我智ヶ咲 蓮「加害者は、近所に住んでた人。追い払おうとして、ペットボトルに石詰めて殴ったって」
我智ヶ咲 蓮「ひどいよね」
我智ヶ咲 蓮「あたし、あたしね、たぶん亡くなった人、見たことあるんだ 深夜にコンビニ行ったとき」
我智ヶ咲 蓮「でもね、声、かけなかったの」
我智ヶ咲 蓮「あたしに何かできたかわからないけど、とにかくあたし、その人を思いやるようなこと、一切しなかった」
我智ヶ咲 蓮「──ひどいよね」
我智ヶ咲 蓮「街は変わらず輝いたまま」
我智ヶ咲 蓮「自分が情けなくなって、街が好きになれなくなって」
我智ヶ咲 蓮「せめて覚えていようと思った これを機に変わろうと思った」
我智ヶ咲 蓮「人を迫害しないくらい平凡に、 助けられるくらい、特別に──」
我智ヶ咲 蓮「いつかまた有名になって、あの事件のこと、投げかけてみたい」

〇空
我智ヶ咲 蓮「赤裸々に語っとる!!」
我智ヶ咲 蓮「大型ビジョンに映し出されるとか、聞いてない!!」
天狗「有名になれるかなと思って」
我智ヶ咲 蓮「最悪」
我智ヶ咲 蓮「でも」

〇渋谷の雑踏
かつて学生だった人「闘争か?」
講談師見習い「化け物から逃げる道に寝転がるたァどういう了見だ ホラ手を取りな」
カバンは山羊革派「おい君、何してる逃げるぞ!」
目黒大学院鼻腔学部M1「にゃにゃ、にゃにコレ」
有休即消化系OL「SNS見た感じ、地下は安全っぽい!」
カリスマ☆美容師「みんな、慌てないで!」
軟楢 一夏「ここの通路、まだ入れます!」

〇空
我智ヶ咲 蓮「思ってたより渋谷、いい人が多いね」
天狗「かもネ」
我智ヶ咲 蓮「俯瞰できずにこだわって」
我智ヶ咲 蓮「ある意味天狗になってた、ナ」

コメント

  • 作中で言及された事件は、私も強く印象に残っています。短い文字制限の中でモチーフとするのは難しい事件だと思いましたが、物語に無理なく織り込まれていて驚きました。キャラクターの紹介欄を使って作品を補足する手法などは、ただただ感心するばかりです。スポンサーを絡めたメタ表現など思わず笑ってしまいました。他の作品も拝見したく思います。

  • 街が大きいと、色んな関わり方や、思い出があるんだなあ。膨大な情報量の中に身を置くと、シンプルに何が自分の魂を揺さぶるのか、見えづらくなるのかもしれません。
    ます、登場人物の多さと、性格づけの丁寧さにびっくりしました。今回初めて読んだ作品でした。有難うございました。

  • 所々に笑いどころもあり、とてもスムーズに読み進めました😂
    「流行というか流行に勝つためというか」が本当にその通りですね🤔笑
    モブの名前も有休即消化系OLなど注目してみると笑いのネタがたくさん転がっていますね🙌

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