3枚目・私のドッペルゲンガーと俺のドッペルゲンガー①(脚本)
〇綺麗なダイニング
???「ニャー?」
春野 泉美「う、うーん」
春野 泉美「くすぐったいよ。ルーン」
顔にすり寄る感触に、泉美は寝ぼけまなこで飼い猫の名前を呼んだ。
春野 泉美「ん?・・・」
春野 泉美「ルーン!?」
驚きの声と共に、泉美は飛び起きた。
同時に顔の近くに居た猫は、足の方へ飛び退いた。
春野 泉美「・・・ルーンだ」
上半身を起こした泉美の太もも部分に、ちょこんと座る一匹の猫
一見黒猫に見えるほどの濃紺の毛に金色の瞳を持つ、子猫のように小柄な一匹の猫。
これが春野家の飼い猫【ルーン】である
泉美が1年ほど前に、段ボール入って川に流されているのを
瑞希と一緒に見つけ助けたオス猫で
名前のルーンは月を意味する【ムーン】に由来する
子猫に見えるがこれでも大人の猫らしい
また、普通の猫よりも長いしっぽを持っていて、そのしっぽの付け根に金色のリングが付いている
それが泉美の知っているルーン
〇黒背景
しかしここは異世界
ルーンは家族のだれにも懐かず
泉美と瑞希にしか懐いていなかった。
逆言えば、異世界であるこの世界のルーンは
彼女には懐かない・・・
はずだった。
〇綺麗なダイニング
春野 泉美「ルーン・・・」
春野 泉美「あなたも私を知らないんだね」
ルーン「ニャー?」
ルーンは不思議そうに鳴くと、泉美の顔に向かって前足を上げ、万歳するような姿勢で、二本足で立ち上がると
彼女の頬を舐めた。
春野 泉美「ルーン?あなた」
ルーン「ニャン!」
ルーンは二本足で立ったまま、今度は首元に顔を摺り寄せ、甘えてくる。
その姿はまるで「元気を出して」と言っているようだった。
春野 泉美「ルーン、ありがとう」
泉美は涙を流しながら、ルーンの頭を撫でてあげると
ルーンは嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
その姿を見て彼女はほほ笑んだ。
???「やっと笑ったな」
春野 泉美「あなたは・・・」
春野 泉美「イズミ」
突然声をかけられソファーの後ろを見た泉美は、彼を見て表情を強張らせた。
春野 泉水「無理に名前を呼ばなくていいよ」
春野 泉美「おか―――」
春野 泉美「あの3人は?」
春野 泉水「さあな?」
泉美の向かい側のソファーに移動しながら、泉水は肩をすくめる。
春野 泉水「母さんが2人に何か話しかけて、リビングを出て行っちまったよ」
春野 泉水「俺に君を任せてな」
春野 泉水「それより驚いただろ?」
春野 泉水「ルーンは誰にも懐かない、俺と瑞希以外には・・・」
春野 泉水「だけど君には懐いた」
春野 泉水「あの時は家族みんな驚いたよ」
〇黒背景
それは、泉美が起きる十分前ほど前にさかのぼる。
〇綺麗なダイニング
再び気絶してしまった泉美を前に
心を閉ざしてしまった彼女にどう接すればいいのか、家族みんなが途方に暮れていた。
その時【カリカリ】と窓をひっかく音に
大樹が気づいた。
春野 大樹「ルーンだ」
大樹が窓を開けると勢いよくルーンが入ってきた。
ルーン「ニャー」
春野 大樹「おいでルーン」
大樹に呼ばれたルーンだが
プイッと無視してリビングを進んでいく
春野 大樹「ああ・・・やっぱり無視」
ルーンはいつもの定位置であるソファーに上ろうと、ジャンプする体制に入った
だが、ソファーに誰かが寝ていると気づいて、その動きが止まった。
ルーン「ニャー?・・・」
ルーン「ニャー!?」
春野 泉水「どうした?素っとん狂な声出して?」
春野 泉水「ああ、先客がいるからな」
泉水が話しかけながら近づくと、ルーンは改めて狙いを定めソファーに飛び乗った。
そして、そこに眠る少女の顔をまじまじと見つめ始めた。
春野 泉水「キレイな子だろ」
春野 泉水「異世界から俺が、こっちの世界に引きずり込んじまった子さ」
ルーン「ニャー」
春野 泉水「ルーン?」
ルーンは泉美の顔に近づくと、何かを確認するように匂いをかいだ。
そして、おなかの上に移り、ちょこんと座ると前足を体の下に仕舞い香箱座りをし
泉美の顔を見ながらゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
これには泉水だけでなく、母や父
大樹も驚きを隠せなかった。
猫がリラックスした姿である香箱座りをして、喉を鳴らしている。
それは完全に心を許している証拠であった。
春野 泉水「ルーンが懐いてる!?」
泉水が驚きの声を上げるのも無理はなかった。
今まで泉水と瑞希以外には、家族すらも懐いてくれない。
そんなルーンが懐いているのだから、その驚きも当然だった。
春野 泉水「動物にしか解らない、共通点が俺らにはあるって言うのか?」
春野 泉水「ルーン?」
ルーン「ニャー」
泉水が問いかけると、ルーンは彼を見てそうだと言わんばかりに鳴いた。
〇黒背景
時は再び、泉水がルーンの行動に驚いたことを、泉美に話して聞かせた時に戻る。
〇綺麗なダイニング
春野 泉水「俺たちは何かが、同じなんだと思う」
春野 泉水「だから、ルーンは君にも懐いた」
春野 泉水「確かにこの世界は、君が居た世界じゃない」
春野 泉水「だけど母さんも、父さんも同じだろ?」
春野 泉水「大樹も瑞希も」
春野 泉美「でも、私を知らない」
春野 泉水「確かに俺を含めこの世界の誰も君を知らないかもしれない、だけどみんな見た目は同じなんだろ?」
春野 泉水「だったら遺伝子レベルでは同じはずだろ?」
春野 泉水「だから君が見覚えのあるこの世界の人間を、君が知っている人間と同じと言っても問題ない」
春野 泉水「そうだろ?」
春野 泉美「・・・そう言っていいの?」
春野 泉美「私を知らない人たちを」
春野 泉美「お母さんって」
春野 泉美「お父さんって」
春野 泉美「大樹を弟って」
春野 泉美「瑞希を親友って呼んでも、いいの?」
泉美の言葉を聞いて、泉水は微笑んだ。
春野 泉水「それは、これから知ってもらえばいいんだよ」
春野 泉水「俺は泉水」
春野 泉水「泉に水と書いて【泉水】」
春野 泉水「アクセントはイを強く読んで、いずみ(↗→→)と呼んでくれ」
春野 泉水「桜門高校二年生で、Bクラス」
春野 泉水「大好物はチョコレートでダークチョコが大好き」
春野 泉水「ほら、こうやってな?」
突然自己紹介を始めた泉水に、泉美はキョトンとした顔になってしまっていたが
不意に吹き出すと笑いながら言った。
春野 泉美「フフフ・・・そうだね。 知らないんだったら、知ってもらえばいいんだよね」
春野 泉美「じゃあ、今度は私の番」
春野 泉美「私の名前は泉美」
春野 泉美「泉に美と書いて【泉美】」
春野 泉美「読み方のアクセントは水が湧く(わく)泉と同じで、いずみ(→→→)だよ」
春野 泉美「桜門高校二年生で、クラスは私もBクラス」
春野 泉美「私も大好物はチョコレートだよ、ダークよりもミルクが好きだけどね」
春野 泉美「よろしく、もう1人の私」
ようやく自分に普通に笑ってくれた泉美を見て、ほっとすると同時に
泉水は彼女の言葉について考えていた。
春野 泉水「もう1人の私か・・・」
春野 泉水「まるでドッペルゲンガーだな」
春野 泉美「ドッペルゲンガー?」
春野 泉美「フフ、確かにそうかも」
春野 泉美「じゃあ、改めてよろしく、私のドッペルゲンガーさん」
春野 泉水「ああ、よろしく、俺のドッペルゲンガー」
泉水が右手を差し出すと、泉美も右手を差し出し、2人はしっかりと握手した。
春野 泉水「そうだ、泉美に謝らないと、いけないことがあったんだ」
春野 泉美「えっ?何を?」
春野 泉水「この世界に引きずり込んじまったことをさ」
春野 泉水「謝って済む問題じゃないけど・・・」
春野 泉美「この世界に引きずり込んだ?」
泉水の言葉に、泉美は首を傾げる。
春野 泉水「腕を掴まれたからって、とっさに引っ張っちまったからな」
春野 泉美「えっ?掴まれたって・・・」
春野 泉美「ああ!!もしかして、光の中に手を突っ込んじゃった時、掴んだのって泉水の腕!?」
春野 泉水「ああ、正確には手首だけど」
春野 泉水「突然、光の中から手が現れて、俺の腕をガシッ、とな」
〇黒背景
あの時、桜門神社で何があったのか
すべてを語るには、こちらの世界の時間をさかのぼらなければならない。
〇特別教室
神野原 マリア「以上で、投票結果が出ました」
神野原 マリア「結果、大差をつけて主人公の【長二】は春野さんで決まりました」
神野原 マリア「はい、拍手!」
春野 泉水「えー!!」
こちらの世界でも、泉水の担任で顧問でもあるマリア先生の声に、部室内がわぁーっと盛り上がる。
そんな中、やはりこちらの泉水も頭を抱え机に突っ伏した。
春野 泉水「嘘だろ!? なんでこんなことに!?」
泉水はテンションが下がりまくった声で、ますます頭を抱える。
神野原 マリア「じゃあ、これで主人公は春野さん、ヒロインは神条さんで決定ね」
マリア先生の言葉に、再び部室内は盛り上がり、拍手に包まれた。
神野原 マリア「じゃあ、今日はこれで終わり」
神野原 マリア「はい、解散!」
その言葉で一気に部室内は私語に包まれた。
解散と言われたが、みんな部室に残り、以前もらっていた台本を読み直したり、仲間の役同士集まり読み合わせしたりした。
一方、泉水はいまだ放心状態で立ち直れずにいた。
そんな彼の元へ1人の少女が近づいてきた。
神条 舞「これで主人公も決まったな。 これからよろしく【長二《ちょうじ》】」
春野 泉水「はぁー・・・よろしくお願いします。ヒロインの【珀《はく》】さん」
差し伸べられた手を握り、2人は握手をした。
珀と呼ばれたのは、泉美の世界では主人公の長二を演じる舞だった。
神条 舞「それにしても、なぜ頭を抱えているのだ?」
春野 泉水「そりゃそうですよ。俺この部活に入って、たったの3ヶ月ですよ!?」
春野 泉水「それなのにいきなり主人公とか、みんな頭おかしいんじゃないですか!?」
神条 舞「頭がおかしくはないだろう?」
神条 舞「君は美男子だし、台詞覚えもいい。 発声練習も誰よりも、皆に追いつこうと必死に練習して、かなり上達した」
神条 舞「この前の練習で行った、小演劇でも鬼気迫る犯人役だったぞ」
春野 泉水「お世辞は良いですよ。全部、舞先輩の方が上だし、何より美人だし」
神条 舞「そちらこそお世辞は止せ、私はそんなに美しくない」
春野 泉水「いやいや、舞先輩は女子にモテる女性で、美人なんです」
春野 泉水「だから、みんな舞先輩をヒロインに選んだんですから」
力説してくる泉水に、舞は苦笑しながら、ほほを人差し指で掻いた。
神条 舞「女子に好かれても困るのだが」
神条 舞「美人とほめてもらえたのは素直にうれしいな」
神条 舞「だが、春野君が男前なのは事実だろう」
神条 舞「だからみんな君を選んだのだから、何より私の記録など軽く超え、最短記録で演劇部の花形になれるかもしれないのだぞ?」
神条 舞「誇らしいことじゃないか!」
春野 泉水「それが嫌なんです」
神条 舞「どういうことだ?」
春野 泉水「ただでさえ最近、剣術の稽古が疎かになっているって、お爺様に怒られているのに」
春野 泉水「主人公とか、ましてや演劇部のスターになって持ち上げられたら、さらに稽古量が減る」
再び頭を抱える泉水を見て、舞は納得したようだ。
神条 舞「なるほど。 君は剣術で有名な、水輝一族の血を引いているのだったな」
春野 泉水「はい、しかも本家がこの町にあるから、プレッシャーが・・・」
神条 舞「ぷれっしゃー・・・圧力か」
春野 泉水「ああ、舞先輩ってカタカナ語が・・・」
神条 舞「ああ、苦手だ」
神条 舞「厳格な祖父母に育てられたためか、この若さで恥ずかしい限りなのだが」
神条 舞「それより稽古不足か・・・」
舞は右手を頬に添え、その場でクルクルと回りながら、試案を始めた。
神条 舞「では、どうだろう? 放課後、練習が終わったら、私と手合わせをするのは?」
春野 泉水「舞先輩と?」
神条 舞「うむ、君を剣道部との兼任で、演劇部に在籍するようにと、誘ったのは私だからな」
神条 舞「私も剣道部の主将を兼任しているものとして、少々腕が鈍ってしまって困っていた所だ」
神条 舞「これぞ一石二鳥」
神条 舞「共に剣道部で相手が居なくて困っていた同士だ。 良い考えだとは思ないか?」
春野 泉水「確かにいい考えですけど、帰りが遅くなるな」
春野 泉水「両親に許可を取ってからでいいですか?」
神条 舞「無論だ」
そこへ黒板に書いた正の字の投票結果を拭き終わった、マリア先生が近づいてくる。
神野原 マリア「ナニナニ、楽しそうね」
神条 舞「これは先生。 なに、たいしたことではないのですが」
神条 舞「私が剣道部だけに在籍していた時に、先生が『暇なら、演劇部と兼任しない?』と誘ってきたことがきっかけで」
神条 舞「剣道部の主力である2人が引き抜かれた、剣道部が可哀そうだという話を」
神野原 マリア「えっ・・・ワタシそんな悪いことしたの!? だったら剣道部のみんなに謝らなきゃ」
険しい顔で答えるマリア先生に、泉水は半笑いで答えた
春野 泉水「違います違います。 俺たち先生には感謝してますし、剣道部のみんなも納得してますよ」
神野原 マリア「本当?」
春野 泉水「本当です! 先輩も先生をからかうのは止めてください!」
神条 舞「フフフ、すまない、つい魔が差してしまって」
春野 泉水「はぁー、まったく」
神野原 マリア「そっか、迷惑かけてないなら良かった」
舞の言葉に呆れ顔になりながら、泉水はマリア先生の方を見た。
春野 泉水(うっ・・・かわいいかも・・・って何考えてるんだ俺は!?)
春野 泉水(と、とにかく話を戻そう・・・うん!)
春野 泉水「はい、稽古不足になって困ったって、話で―――」
神野原 マリア「やっぱり私のせいで!」
春野 泉水「その解決方法を話し合ってたんすよ!」
再び泣きそうになる先生に、泉水は再び苦笑いで答える。
春野 泉水「舞先輩と練習の後、放課後に手合わせをしようって話し合ってたんです」
神野原 マリア「手合わせ? ああ、練習試合ね」
神条 舞「左様です。 お互いに剣道部では強すぎて、相手が居なかった同士、実力は拮抗しております」
神条 舞「ただ互い手の内は知り尽くしているため、技を磨くには少々物足りませんが、このまま鈍らせていくよりはましだと思いまして」
舞の答えを聴いたマリア先生はニッコリと笑い、ある提案をしてきた。
神野原 マリア「だったらワタシがご両親に話を付けるわ」
神条 舞「いいですか?」
神野原 マリア「ええ、もちろん 神条さんはお爺様と、お婆様だったわね」
神条 舞「はい」
春野 泉水「でも、本当にいいんですか?」
神野原 マリア「いいのいいの、これも先生の仕事」
マリア先生はパチッとウインクしてみせた
神野原 マリア「別に稽古不足になった責任を取りたいとか、剣道部に迷惑だったんじゃないかとか、考えているわけじゃないからね?」
春野 泉水「あぁ・・・はい」
春野 泉水(理由が駄々漏れっすよ。先生・・・)
神野原 マリア「もちろん体育館の使用許可も取っておくから」
春野 泉水「そんな、そこまでは・・・」
神条 舞「場所さえあれば体育館裏でもよいと、考えていたのですが」
神野原 マリア「どうせ近いうちに演劇の練習で体育館は使用するし、それに剣道って裸足でやるんでしょ?」
神野原 マリア「だったら床がないと、ねっ?」
パチッとウインクしてみせるマリア先生に、舞は一瞬ためらった表情をしたが、すぐに小さく息を吐いた。
神条 舞「・・・分かりました。 お気遣い痛み入ります」
深々と頭を下げ、舞は感謝を言った。
神野原 マリア「それで今日から練習していく?」
春野 泉水「いえ、さすがにもう体育館の使用許可は下りないでしょうし、両親の許可ももらわないといけないので」
神条 舞「私も自分の家で、自主練習をすることとします」
神野原 マリア「そう。 じゃあ、明日以降の体育館の使用許可取っておくわね」
春野 泉水「お願いします」
神条 舞「重ね重ねありがとうございます」
神野原 マリア「それじゃあ、台本ちゃんと読んでおいてね。 今までは役が決まってなかったから、ざっと読んだくらいだっただろうけど」
神野原 マリア「役が決まったんだからしっかりとセリフは覚えておいてもらわないと」
春野 泉水「はい」
神条 舞「了解しました」
神野原 マリア「うん、よろしい」
2人の返事を聴いたマリア先生はニッコリと笑い
用事があるからと言って部室を出ていった。
マリア先生に続き2人も、部室を出て
一緒に帰宅することにした。
〇黒背景
帰路に就いてしばらくして、舞はあることに気づいた。
〇住宅街
神条 舞「春野君、君の家は先ほどの道を、左ではなかったか?」
春野 泉水「ええ、でも帰る前に桜門神社で、学園祭で演劇の公演がうまくいきますようにと、祈願しておこうと思いまして」
神条 舞「うちの神社の御利益は、縁結びや厄除けが主なのだが・・・」
神条 舞「まぁ、神に祈ることは悪いことではないからな」
それから、しばらく2人はそれぞれの役に付いて語り合った。
〇神社の石段
神条 舞「おっと、もうこんな所まで来てしまったか」
気が付くと2人は、神社へ続く石段の前まで来ていた。
神条 舞「では、私はここで失礼する。 大丈夫だとは思うが、暗くならないうちに帰るように」
春野 泉水「はい、明日からよろしくお願いします」
春野 泉水「じゃあ、さよなら」
神条 舞「ああ、さようなら」
〇平屋の一戸建て
泉水が石段を登り始めると、隣の日本家屋の門から舞の帰宅の声が聞こえてきた。
神条 舞「ただいま戻りました」
〇神社の石段
春野 泉水(ただいまの言い方まで、古風な人だな)
そんなことを思いながら、泉水は急いで石段を登っていった。