第22話 『完全包囲』(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
人々が行き交う渋谷の交差点。
ビルの大型液晶ビジョンでは、ニュース番組が報道されていた。
三子玉署生活安全課の元刑事・佐川アリス容疑者は依然足取りが掴めておらず、警視庁は全力で行方を追っております
液晶ビジョンを眺める人々の中には、物陰から見上げているアリスの姿もあった。
佐川アリス「・・・・・・」
アリス容疑者は、金井さん、金城さん、竹岡さんを連続して殺害し、自宅からも切り取られた男性の腕が大量に発見されております
警視庁は全国指名手配として──
佐川アリス(もうあたしは、刑事でもなんでもない)
佐川アリス(ただの殺人鬼だ)
〇警察署の入口
警察署の前は沢山の報道陣が詰めかけていた。
阿部美香子「犬伏刑事、あなたが佐川アリス容疑者と組んでいたんですよね?」
阿部美香子「ずっと近くにいて、まったく気づかなかったのでしょうか?」
犬伏徹「・・・っ!」
〇警察署のロビー
少女「あの!」
犬伏徹「・・・君は?」
犬伏徹「これは・・・?」
少女「お姉ちゃんに渡して」
犬伏徹「?」
少女「お姉ちゃん、前に言ったの。 あたしが助けてやるって。だから──」
母親「うちの子が、突然すみません」
犬伏徹「いえ」
母親「以前、家族のDVに悩み、窓口に相談に行ったことがあって・・・そのとき、佐川刑事に」
犬伏徹「あなたたちは?」
母親「殺された竹岡の・・・家族です」
犬伏徹「・・・・・・」
母親「こんなこと言うのは、間違っているのかもしれません」
母親「ですが、あの方がいなかったら、私たちは──」
犬伏徹「お帰りください」
母親「・・・・・・」
犬伏徹「彼女は、犯罪者です」
母親と少女は小さく頭を下げて立ち去った。
犬伏徹「・・・・・・」
〇大会議室
刑事「佐川アリス容疑者に関することは徹底的に調べました、彼女がかつて在籍していた山梨の養護施設も」
刑事「ですが、全く足取りが掴めておりません」
新井和樹「くそっ。どこにいる・・・!」
武田静香「・・・・・・」
刑事「随分遅い出勤だな。 佐川アリスとデートでもしていたか?」
犬伏徹「・・・遅くなり、すみません」
刑事「ふん。案外お前が匿ってたりしてな」
犬伏徹「・・・っ!」
バンっ!
新井和樹「やめろ」
刑事「・・・失礼しました」
犬伏徹「・・・・・・」
武田静香「犬伏刑事。あなたはどう思う?」
武田静香「佐川アリスはどこに潜伏していると思う?」
犬伏徹「・・・実は一つだけ、思い当たる場所があります」
〇古い倉庫
海沿いに連なる倉庫の前で、アリスは海を眺めていた。
佐川アリス(綾子は──こんなあたしの前でもいつも笑顔だった)
〇更衣室
亀井綾子「ちなみにアリスさんは、上司にしたいランキングで男女共に1位です!」
〇古い倉庫
佐川アリス(あたしに関わらなければ、綾子はあんなことにはならなかった──)
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