第21話 『暴かれた真実』(脚本)
〇屋上の隅
犬伏徹「須藤さん・・・!」
須藤清孝「来るな!」
犬伏徹「!」
須藤清孝「これで最後だ。アーちゃん」
佐川アリス「・・・・・・」
犬伏徹「須藤さん! バカな真似は止めてください!」
須藤清孝「犬伏。聞いてなかったのか? アーちゃんの演説を」
須藤清孝「世の中には許される悪がある。 それは、悪を裁くための悪だ」
犬伏徹「・・・・・・」
須藤清孝「俺が憧れたアーちゃんが戻ってきたんだよ」
犬伏徹「アリスさんは・・・市民の安全を守る、生活安全課の刑事です!」
須藤清孝「いい加減認めたらどうだ? こいつはシリアルキラー──」
犬伏徹「黙れ!」
須藤清孝「連続殺人鬼なんだよ!」
そう叫んだ瞬間、須藤はゴホゴホと咳き込んで膝をついてしまう。
その隙を狙い、犬伏は拳銃を取り出して須藤のこめかみに突き付けた。
犬伏徹「銃を捨てろ」
須藤清孝「・・・お前に、撃てるのか?」
犬伏徹「!」
犬伏が見ると、咳き込んだ須藤の口元には血の跡があった。
犬伏徹「須藤・・・さん?」
須藤清孝「俺はもう、長くない」
犬伏徹「あなたは──」
須藤清孝「半年前に、はっきり宣告されたよ。 余命はわずかだってな」
犬伏徹「・・・・・・」
須藤清孝「俺はたいした刑事じゃなかった」
須藤清孝「家族も恋人もいない、未練なんてなんもないって思ったんだが・・・ただずっと、アーちゃんのことだけが気がかりだった」
須藤清孝「日に日に刑事の顔になっていくアーちゃん」
須藤清孝「俺はその仮面を剥ぎ取るために、アーちゃんの模倣犯になると決めた」
犬伏徹「模倣犯・・・?」
佐川アリス「愚かだな、そんなことをしたところでお前には何の見返りもない」
須藤清孝「ハハっ。そんなものいるか。 俺はアーちゃんを愛してるんだから」
犬伏徹「いい加減にしてください! 一体なんの話をしているんですか!?」
須藤清孝「犬伏・・・わからないのか?」
須藤清孝「どうせ死ぬなら惚れた女に殺されて、花を添えたいって思うもんだろ?」
犬伏徹「そんなのわかってたまるか!」
須藤清孝「さあアーちゃん。俺を殺してくれ」
佐川アリス「・・・お前の罪は綾子を殺したことだ」
佐川アリス「お前はあたしの美学を汚した。 そんな奴の願いを、あたしは聞き入れない」
須藤清孝「・・・・・・」
佐川アリス「あたしに殺されることが望みと言うなら、あたしはお前を殺さない」
須藤清孝「・・・ハハ。それでこそアーちゃんだ」
須藤はフラフラと立ち上がると、拳銃を自分のこめかみに当て、屋上の縁に後ずさっていく。
犬伏徹「何を・・・!?」
須藤清孝「アーちゃん。 君に殺されなくても俺は満足だよ」
須藤清孝「あの時のアーちゃんが、ここにいる」
〇シックなリビング
佐川アリス「大丈夫だから」
〇屋上の隅
須藤清孝「同じ目で、俺を見つめている」
須藤清孝「きれいだよ、アーちゃん」
パァン!!
犬伏徹「須藤さん・・・!!」
佐川アリス「・・・・・・」
〇大きい交差点
ビルの周囲には何台ものパトカーが集まり、サイレンの音が響いている。
新井和樹「ずいぶん派手にやったな」
新井和樹「ま、お前にしては上出来か」
犬伏徹「・・・・・・」
武田静香「それにしても、須藤警部が狼男だったなんて」
犬伏徹「須藤さんの自宅は・・・?」
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