読切(脚本)
〇荒れた競技場
レイラー隊長「お前ら、よく聞け!」
レイラー隊長「これから我々は、エイの国の同盟国であるイービへ向かう」
テラ「ほんとですか!?レイラー隊長! やったぁ~!!」
レイラー隊長「うるさいぞテラ!! それに、我々は遠足に行くのではないのだからな」
レイラー隊長「イービでは、お前らと同じように兵士として戦うヤツらがたくさんいる。 少なくとも、お前らより強いだろうな」
テラ「大丈夫ですよ、隊長! 私、誰とでもすぐ仲良くなれますから!」
レイラー隊長「そういう問題ではない! とにかく、お前たちにはイービの兵士と共に合同訓練を行ってもらうからな」
テラ「わ~い! 楽しみ~!!」
レイラー隊長「話を聞け、テラ!!」
〇武術の訓練場
レイラー隊長「この度は、どうもよろしくお願いいたします」
イービの隊長「いえいえ、こちらこそ。 同盟国同士、仲良くしましょう」
レイラー隊長「はい。 では、訓練は子ども達にまかせて、我々はこれからのことについてでも話しましょうか」
イービの隊長「そうしましょうか。 お前たち、エイ国の兵士と訓練をしておけ」
〇武術の訓練場
テラ「わぁ~楽しみだなぁ~!!」
テラ「ん?」
テラ「(あ、今あの子と目があった!)」
テラ「へへっ。(手を振る)」
ラド「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
テラ「ガーン!!無視された~!!」
テラ「なんで!?」
テラ「う~ん・・・・・・・・・そうだ!」
テラ「話し掛けに行ってみようっと! きっと、仲良くなれるはず!」
〇武術の訓練場
テラ「ねぇねぇ、そこの君! 私と一緒に訓練しない?」
ラド「ゲッ!!お前はさっきの・・・・・・・・・・・・」
テラ「わぁ!嬉しい!!覚えててくれたんだ!!」
テラ「ねぇねぇ、名前なんていうの?」
ラド「うるせーな・・・・・・ 話しかけんじゃねぇよ・・・・・・」
テラ「私の名前はテラ! よろしくね!」
ラド「勝手に話進めんなっ!」
テラ「イービの兵士は、みんな強そうだね!」
ラド「全然話聴かねぇな、コイツ・・・・・・」
テラ「ねぇ、名前なんて言うの? 教えてよ~!」
ラド「ハァ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ラド「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラド」
テラ「ラドくんかぁ~!! かっこいい名前だねぇ!」
ラド「お前、ほんとうるさいな・・・・・・」
テラ「ラドくんって、何歳なの?」
ラド「そんでもって話聞かねぇし・・・・・・ んで、何だっけ?年齢? 確か・・・・・・今年で、14・・・だった気がする」
テラ「すごーい!! 私も同い年!!14歳だよ!」
ラド「だから何だってんだよ・・・・・・・・・」
テラ「ラドくんはすっごく大人っぽいね! 同い年には見えないよ!」
ラド「お前が子供っぽすぎるだけだろ」
テラ「えへへ~。 ありがと~!」
ラド「誉めてねぇ!」
テラ「それに、ラドくんってとっても強そう!」
ラド「まぁ、これでも、次期隊長として任命されてるしな」
テラ「えぇ~!!!! それってとってもすごいじゃん!」
テラ「さすがラドくんだねっ!!」
ラド「それに比べて、お前はずいぶん弱っちそうだな」
テラ「そ、そんなことないよ! 私、これでも足の速さは、隊員の中でも一番なんだから!」
ラド「じゃあ、それ以外はダメってことだな。 逃げ足だけ早くても、戦場じゃやってけねぇよ」
テラ「うぐっ! そ、それは・・・・・・」
ラド「見たところ、射撃とか対人とかも絶対苦手だろ」
テラ「ええっ!? なんで分かったの!!??」
ラド「見りゃわかんだろ。 顔に書いてあるわ、顔に」
テラ「へぇ~!! すごいねぇ、ラドくんは! 顔見ただけでわかるなんて!」
ラド「コイツ、イヤミが通じねぇ・・・・・・」
テラ「私達・・・・・・さ、敵同士だったら、どうなってたんだろうね」
ラド「さあ。知らね」
ラド「少なくとも、俺はお前を一発で殺してたな」
テラ「んなっ!! 私、そんなすぐにはやられないもん!」
テラ「・・・・・・・・・・・・・・・きっとさ、これは奇跡なんだよ。 神様が、私達を味方同士にしてくれた、奇跡」
ラド「悪いけど俺、奇跡とかそういうの信じないタイプだから」
テラ「もう~。 夢がないな~」
テラ「あ、ヤバい! 鐘鳴った! 戻らないと! じゃあね、ラドくん!」
ラド「ハァ・・・・・・・・・ほんと、アイツは終始せわしねぇな・・・・・・・・・」
〇基地の広場(瓦礫あり)
三日後
テラ「フンフンフフ~ン♪」
テラ「あれ?」
テラ「アレはもしや・・・・・・」
テラ「お~い!! ラドく~ん!!!」
ラド「うげっ! お前、こんな所までいるのかよ・・・・・・」
テラ「うん、気晴らしに!」
テラ「・・・・・・・・・・・・ラドくんの目って、夜空みたいで、とっても綺麗だね!」
ラド「そうか? んで、それがどうしたんだよ」
テラ「私、エイ国に戻っても、夜空見て、ラドくんのこと忘れないようにするね!」
ラド「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうかよ」
ラド「・・・・・・・・・・・・・・・明日、お前ら帰るんだってな」
テラ「うん。 合同訓練は、今日でおしまい」
テラ「でもさ、心配しなくても、私達、同盟国同士だし、いつかまたきっと会えるよ!」
ラド「うーん・・・・・・お前と会うの、嬉しいような、嬉しくないような・・・・・・」
テラ「でもさ、それってちょっと嬉しいってことだよね?」
ラド「はっ!? ち、ちげぇし! お前となんか、ずっと会いたくないわ!」
テラ「あはは、ラドくんは嘘が下手だなぁ~」
ラド「嘘じゃねぇよっ!」
レイラー隊長「おい、テラ! どこに行ってた! さっさと荷物を積めて、帰る準備をしろ!」
テラ「あっ!!! いっけない、忘れてた! またね、ラドくん!」
ラド「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ラド「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・またな」
〇荒れた競技場
一週間後
レイラー隊長「お前ら、よく聞け。 我々、エイ国は────」
レイラー隊長「─────イービ国と、戦争をすることになった」
テラ「・・・・・・・・・え」
テラ「な、なんでですか、隊長!!!! この間まで、仲良くやってたじゃないですか!!」
レイラー隊長「落ち着け、テラ」
レイラー隊長「どうやら、国同士の意見の違いが原因で争いが起こり、いつの間にか、俺たちが知らない間に戦争にまで発展していたらしい」
テラ「そんな・・・・・・・・・そんなの、あんまりだよ・・・・・・・・・」
レイラー隊長「とにかく、我々は、至急イービ国へ向かう。それから、今から呼ぶ者は────」
レイラー隊長「──────特攻隊に、任命する」
テラ「えっ・・・・・・・・・特攻隊って・・・・・・・・・もしかして・・・・・・」
レイラー隊長「あぁ。特攻隊になった者には、とにかく、命がけで最前線で戦ってもらう。そうでもしないと、イービ国には勝てない」
レイラー隊長「では、今から名前を呼ぶぞ。 リタ、────────」
テラ「(お願い、どうか、呼ばれないで・・・)」
レイラー隊長「────────ケイト、それから、テラ」
テラ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」
レイラー隊長「では、特攻隊に選ばれた者は、手榴弾を持ち、私の後に続け」
テラ「そんな・・・・・・・・・・・・」
テラ「こんな形で・・・・・・再開したくないよ・・・・・・・・・ラドくん・・・・・・・・・」
〇戦場
ラド「くそっ! なんでエイ国なんかと・・・・・・・・・」
ラド「こんなの、理不尽だ・・・・・・・・・!」
ラド「ん? あれは・・・・・・・・・・・・!!」
ラド「テラ!?!?」
ラド「な、なんで、最前線に・・・・・・・・・!」
ラド「もしかして、特攻隊・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
イービの隊長「お前ら! 特攻隊が近づいて来た。 撃て!!」
ラド「俺が・・・・・・・・・・・・リタを・・・・・・・・・」
ラド「そんなこと・・・・・・・・・できねぇよ・・・・・・・・・!!!!」
ラド「でも・・・・・・・・・・・・俺が・・・・・・・・・・・・やらなきゃ・・・・・・・・・」
ラド「あーくそっ!!!! もう、どうにでもなれ・・・・・・!!!!」
バンッッ!!!
ラド「・・・・・・・・・・・・・・・ッ」
ラド「・・・・・・・・・・・・あ」
ずっと先には、血まみれになって横たわっていたテラがいた。
ラド「くそっ・・・・・・・・・。 俺は・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・・」
ラド「なんで・・・・・・・・・こんなことを・・・・・・・・・いや、どっちにしろ、リタは、誰かに撃たれていたかもしれない」
ラド「なら、俺がやった方が・・・・・・・・・」
ラド「でも・・・・・・・・・最期くらい、テラの声、聞きてぇよ・・・・・・・・・・・・」
テラ「ばぁっ!!」
ラド「うわぁっ!!! ・・・・・・・・・・・・え、テ、テラ・・・・・・・・・!?」
テラ「あははっ!! びっくりした~?」
ラド「いや、びっくりじゃなくて! お前、なんでこんな所にいるんだよ! 死んだはずじゃ・・・・・・。 それに、その服・・・・・・」
テラ「実はね~アレ、血のりなんだ! ラドくんに撃たれる前に地面に倒れて、血のりを出したの!」
テラ「そして、どさくさにまぎれて戦場の端に移動。 倒れていたイービ国の女の子の隊服と私の隊服を交換して、もぐりこんだってわけ!」
テラ「これぞ、テラのどさくさ大作戦であ~る!!」
ラド「ハァ・・・・・・・・・・・・・・・お前さぁ・・・・・・・・・・・・ほんっとに・・・・・・・・・」
ガバッ!!
テラ「うぇ!?ラ、ラドくん!? ど、どうしたの、急に抱きついて!」
ラド「よがっだぁ・・・・・・・・・!!!! 俺、ほんどに・・・・・・・・・!!」
テラ「あはは! 心配性だな~ラドくんは! 言ったでしょ! 私、足の速さは隊員の中で一番だって!」
ラド「ばかやろぉ~!!!」
ラド「と、とにかく。 まぁ、後は俺にまかせろ。 次期隊長としてなんとかしてやる」
テラ「わぁ~い!! さっすがラドくん!」
〇暖炉のある小屋
ラド「隊長! その、コイツ、新しい隊員として入れてやってくれませんか。 コイツ、力はそんなねぇけど、足の速さはピカイチです」
イービの隊長「うーん・・・・・・・・・あまり良いようには見えんが、ラドが見込んだ相手だ。 まぁ、良しとしよう」
ラド「ありがとうございます!!」
〇基地の広場(瓦礫あり)
テラ「すごかったよ~ラドくん!! 私、てっきりもっと怪しまれるかと思ってたのに!」
ラド「ま、これが次期隊長の力だ」
ラド「・・・・・・・・・それよりお前、本当に良かったのかよ」
テラ「え?何が?」
ラド「エイ国のこと」
テラ「あぁ~!」
結果は、エイ国は惨敗。
イービ国の圧倒的な勝利となった
テラ「だって私、ラドくんと一緒にいたいもん!」
ラド「はぁ!? お前っ、ほんっとさぁ~」
ラド「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺、一生、おまえのそばにいていいか?」
ラド「お前を・・・・・・・・・・・・・・・・絶対幸せにする」
テラ「?? うん!もちろんだよ! 私、ラドくんが隣にいるだけで嬉しいもん!」
ラド「だぁ~っ!!! 伝わってねぇ!! この鈍感野郎!! バーーカッ!!」
テラ「えぇっ!? な、なんでそうなるの!?」
ラド「いつかぜってぇ伝えるからな!! 覚悟しとけよ、鈍感野郎!!」
テラ「え~!? ちょ、ちょっと待ってよ~!! おいてかないで~!!」
若人の無邪気さと戦争の悲惨さという、相反する要素が詰め込まれていて、相互に引き立て合っていますね。不思議な感覚を楽しませてもらいました
テラの寝癖みたいなひょっこり跳ねた髪の毛がいかにもアホの子っぽいな、と思っていたら、アホの子どころかとんでもない切れ者の策士でしたね。いつの間にかラドのほうがテラに夢中になってるし、ちゃっかり勝利国の戦士になってるし。最後に生き残るのは自分の身を守る戦略に長けた彼女のような人間かもしれません。
国同士のいざこざが一般市民を巻き込んで戦うことになることは、悲しいかな繰り返し成されている状況で。せめてこの2人のようにそんな最中でも幸せをみつけることができたらいいですね。