キャニング

ぽむ

キャニング(脚本)

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  閉じ込められた。
  
  ここはどこだ?
  真っ暗だ。
  明かり・・・になるものは・・・
  。
  スマホ。電波は届かないな。
  電池の容量があんまりないな。
  もって30分というところか。
  ここは銀色の金属で覆われてて、
  壁は湾曲している。
  円形の天井も同じ素材のようだし。
  扉らしいものも、なにもない。
  まるで金属の筒の中にいるみたいだ。
  持ってるものは・・・
  スマホとキーホルダー、靴と服。
  メガネ、ペンとメモ、くらい。
  とりあえず、
  金属のキーホルダーで
  壁を叩いてみた。
  カンカン
  叩いてもダメだな。なにもない。
  継ぎ目もない。
  どうやってここから出るのか・・・
  俺はどうしてこんなところにいるのか?
  なぜ閉じこめられているのか? 
  わからない。

  ふと見ると、
  スマホのメモには、
  書きかけの小説があった。
ハナヤマ「そういえば、俺、 ネタを考えて書き留めていたんだっけ」
  どうにかして、外に出ないと。
  というのも、
  コンテストの「締切」が
  近いからだ。
  俺はしがない小説家。だった。
  名のある賞もとり、もちろん華々しくデビューした。はずだった。
  しかし、その後は鳴かず飛ばず。
  次の作品で認められなければ、
  世間から放り出されるだろう。
ハナヤマ「とにかく、 俺はここから出ないと、いけないんだ!」
  日々のストレスから、暴飲暴食、
  酒びたり。最近は体調も悪い。
  それでも、俺は書くことをやめない。やめられない。
  ぐー
  腹が鳴った。腹減ったってーことだ。
  説明しなくてもわかるよな?
ハナヤマ「どうすりゃいいんだよ」
  ピリリリリラ
  
  (スマホが鳴った。圏外だろここ?)
  ピッ
ハナヤマ「もしもし?」
  「この電話は、自動音声でお繋ぎしております。
  音声ガイダンスに沿って、お問合せ内容をボタンの番号でお知らせください。」
  「このままオペレーターにお繋ぎしてよろしければ1を、もう一度、説明をお聞きする場合は2を、
  改めてオペレーターからの連絡をご希望される場合は3を、押してください。」
ハナヤマ「はぁ!?なにこれ!勝手に繋がった?」
  「音声ガイダンスに沿って、お問合せ内容をボタンの番号でお知らせください。」
ハナヤマ「なんだかわかんないけど、しょうがねぇな・・・」
  ポチ
  俺は仕方なく、
  「1」を押して見る。
  「オペレーターにお繋ぎいたしますので、そのまま電話を切らずにお待ちください。」
  プルルルル プルルルル
  「お待たせいたしました、ワタクシオペレーターの「カサイ」が、お受けいたします。」

  「では、ご確認のため、まずお客様のお名前と生年月日をお願いいたします。」
「えー、ハナヤマトシキ、1998年3月16日生まれです」
  「ありがとうございます、ではご質問をお受けします。今回はどのような内容のお問い合わせでしょうか?」
「どのようなって・・・いま、俺は閉じ込められていて、この電話に繋がったんですよ」
「ココから、どうしたら出られるのか、知ってるなら教えて欲しいです」
  「お客様は、ただいま、どちらにおられるのでしょうか?」
「それが分からないから聞いてるんですよ。金属の、円柱状の部屋にいるんです」
  「かしこまりました、
  ただいまお調べいたしますので、
  そのままお待ち下さい。」
  ピーロリロリー
  ピーロリロリー
「へんな音楽だな」
  ピーロリロリー
  ピーロリロリー
  「お待たせいたしました。」
  「お客様のデータをお調べしましたら、PH4.6の壁を超えておりました。その様にさせて、いただいた次第でございます。」
「PH4.6の壁?」
  「さようでございます。」
  「人間の体液濃度は、常にpH7.35~7.45の弱アルカリ性に保たれており、
  健康な皮膚表面のpHは4.5~6の弱酸性です。
  あなた様のPHを測定しましたところ、はPH1〜3なのでございます。強酸性!胃と同じ!なのでございます。
「はぁ? たしかに数週間前に健康診断を受けたような・・・」
  あなた様は不摂生により、通常のPH値を超えた、特殊な状態なのでございます。
  さらに火に強い、その特性も最高でございます。ですから、
「ですから?」
  「あなたは酸性に傾きすぎています。不摂生過ぎるのです!」
  「ということで、アナタ様は
  【缶詰(カンヅメ)】にするのに最適なのでございます!
「カンヅメ!?」
  「あなた様は、ダントツでトップで選ばれたのです!おめでとうございます!」
「何がおめでとうだ!ふざけるな!」
  「缶詰とは 食品を缶に詰めて密封したのち、過熱によって食品の腐敗の元となる微生物を加熱殺菌し、
  常温化での長期保存性を与えた食品。ということで殺菌処理をした後、【高級食材】として店頭に並ぶことになっております。」
「はぁ!?高級食材なんて嫌だよ! 早くオレをここから出してくれ!」
  「本日は、お問い合わせ、ありがとうございました!カサイがお受けしました!」
  プッ

「電話切れたし!まじかよ!ふざけんな!」
「履歴から、かけ直せるか?」
  ピリリリラ
  
  ピッ
「繋がった! もしもし・・・」
  「ただいま電話が混み合っております。
  お繋ぎできません。 ご了承ください。
  恐れ入りますが、しばらく経ってから、おかけ直しください。」
  ピーロリロリー
  ピーロリロリー
  
  プッ
「そっちから勝手にかかってきたんじゃないか!ちくしょう!」

  その瞬間!
  
  グラッ
  足元の地面が揺らいだ、と思ったら
  天井が壁になり、円柱が横になったような形で回転を始めたようだ。
  俺は筒の中で、ハムスターホイールのように転がされている?のだろうか。
  そんな感じで、身体がぐるぐる回りだす。
「わー助けてくれー!止まれー!」
  「音声ガイダンスに沿って、お問合せ内容をボタンの番号でお知らせください。」
「わかった!わかったよ! 1!1!ほら押したぞ!」
  ピタ
  突然にそれは止まり、
  俺は回る壁に身体を打ちつけて、
  止まった。
「いててて。ひでーな。 どうすりゃいいんだよ」
  「こちらは自動音声でお繋ぎしています。
  お電話にお出になれなかった場合や、自動音声のアナウンス中にお電話をお切りになられた場合は、
  お送りするショートメッセージに従い、ご連絡をお願いいたします。」
「ショートメッセージ?そういえば見てないな」
  俺はメッセージを、開いてみた
  「お調べいたしましたが、該当する物件が見当たりませんでした。申し訳ございません。またのご利用お待ちしています。」
「・・・もうダメだな」
  締切には、どう考えても、間に合わない。
  お金にはならないけど、好きなこと、
  書けばいいんだし。
  なんて、半ば諦めの気持ちになった。
「このまま、加熱処理されて、 出荷しちまうのか俺は」
「あぁ、この事を、書いてみるってのも面白いかもしれない。 いま、このカンヅメに閉じ込められた話をさ」
「それでも、俺は書くことを、やめない。 それしかできない。から」
「ココに一生閉じ込められたままなら、せめて、これだけでも、完成させてからあの世に行こうか」
「そしたら、異世界転生も、できるかもな。 ハハハ・・・」
  小一時間・・・
  
  ポチポチ
「できた。これで思い残すことも・・・」
  プシュウウウゥウゥ
「フタが・・・ 開いた?」
  そういえば、
  俺、編集に言われてたな。
  「良い作品が、できるまで、お前をカンヅメにしてやる」って。

  おしまい

コメント

  • この不思議なシュールな場面と、イライラ系日常の自動音声・コールセンターとの組み合わせが何とも言えない面白さが!秀逸なオチには感動です!

  • 「キャニング」というファンタジー小説、面白かった!主人公が閉じ込められた場所からの脱出を試みるストーリーだけど、その中で彼が持っているスマホに書きかけの小説があるというのが面白い要素。そして、オペレーターとのやり取りもあって、どうやって脱出するのか、というのが気になって仕方なかった。最後の回転するシーンもスリルがあって良かった。ジャンルはファンタジーだけど、現代的な要素もあって、読みやすいし楽しい作品だった。

  • おぉー!!!!!!!これはっ!!✨面白かったですー!!!!!!✨😍

    最初から最後まで不思議な話で引き込まれますし、最後のオチもめっちゃ綺麗にきまってますね!!✨👍

    楽しく読ませていただきました!!✨

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