悪魔のアリス

YO-SUKE

第20話 『覚醒するアリス』(脚本)

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〇屋上の隅
須藤清孝「あの時のアーちゃんは凄かったよ」
須藤清孝「親父さんを殺した後は、俺に死体を処理するように命令したんだ」
須藤清孝「事故に見せかけるようにってな」
佐川アリス「嘘だ・・・あたしのお父さんは・・・世界で一番・・・」
須藤清孝「アーちゃんならたくさん見てきただろ?」
須藤清孝「過酷な現実から目を逸らすために、偽りの自分を作る子どもを」
佐川アリス「私は・・・そんなことしない」
須藤清孝「記憶を美化したり、書き換えたりするのは立派な自己防衛だ」
須藤清孝「それだけアーちゃんは、頭が良かったんだ」
佐川アリス「違う・・・違う・・・」
須藤清孝「アーちゃん。君は・・・君の本性は・・・」
佐川アリス「うわあああああ!!」
佐川アリス「お前なんか死ね!!」
須藤清孝「そ、そうだ! 殺せ・・・!」
須藤清孝「殺せ・・・! 俺を殺してくれっ!!」
  そのとき、アリスと須藤を上空からスポットライトが照らした。
佐川アリス「!?」
  アリスと須藤が見上げると、一台のヘリが空から二人にスポットライトをあてていた。
須藤清孝「・・・警察かっ!」
犬伏徹「アリスさん! 何やってんですか!?」
佐川アリス「犬・・・伏・・・?」
犬伏徹「それ以上やったら、犯人が死んでしまいます!」
  我に返ったアリスは須藤の首から手を離す。
須藤清孝「なぜここがわかった?」
犬伏徹「あなたの部屋に行ったんです。 盗聴記録を聞きました」
犬伏徹「金井、金城、竹岡・・・ターゲットは三人に絞られた」
須藤清孝「そうじゃない、なぜ俺が金井を狙うとわかったのかと聞いている」
犬伏徹「わかったわけじゃないです」
須藤清孝「・・・?」
犬伏徹「ヘリは3台飛ばしてます」
犬伏徹「3人全員を、同じ数の警官で保護しているんです」
須藤清孝「ハハっ。 なるほどな、さすがは国家権力だけある」
須藤清孝「ここに来たのは、さしずめアーちゃんにGPSでも付けたか」
犬伏徹「・・・・・・」
須藤清孝「ふん。なかなか鼻が利く犬だ」
犬伏徹「でもまさか・・・あなたが、あなたが狼男だったなんて」
須藤清孝「犬伏、お前はアーちゃんが好きか?」
犬伏徹「・・・?」
須藤清孝「俺はな、ずっと前からアーちゃんが好きなんだ」
須藤清孝「だから、アーちゃんが、アーちゃんらしくないと傷つくんだよ」
犬伏徹「何を言ってるんだ・・・?」
須藤清孝「お前は女刑事のアーちゃんしか知らないからな、本当のアーちゃんを知らない」
犬伏徹「・・・本当の?」
  犬伏がアリスを見ると、アリスは放心状態で空を見上げていた。
須藤清孝「心当たりがあるんじゃないか?」
須藤清孝「こいつが何かに異様に怯えたり、何かを隠そうとしたことがたくさんあったはずだ」
犬伏徹「・・・!」

〇高級マンションの一室
  アリスを部屋まで運んできた犬伏が、ワインセラーを見つける。
犬伏徹「あれは・・・」
犬伏徹「・・・!?」

〇屋上の隅
犬伏徹「いや・・・まさか」
須藤清孝「おかしいと思わなかったのか?」
須藤清孝「なぜこいつの周りでだけ、次から次へと人が死ぬのか」
須藤清孝「こいつの家にはな──」
犬伏徹「やめろっ!!」
犬伏徹「アリスさん。なにか言ってください」
佐川アリス「・・・・・・」
犬伏徹「アリスさん!!」
  次の瞬間──アリスは犬伏を突き飛ばした。
犬伏徹「!?」
佐川アリス「ククっ・・・ハハハハハッ!」
犬伏徹「アリスさん?」
佐川アリス「長いこと眠っていたような気分だよ」
佐川アリス「本当のあたしは、もっとシンプルでまっすぐだった」
佐川アリス「弱いもののために悪を滅する、それだけで充分だったんだ」
犬伏徹「・・・何言ってるんですか? どうしちゃったんですか?」
佐川アリス「いつしか刑事でいる自分だけが、自分の支えになった」
犬伏徹「アリスさん!」
佐川アリス「黙れ!」

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