遥か時を

裂魔 罪証路

エピソード1(脚本)

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〇地下の部屋
  目が覚めると見覚えのない部屋、暗い・・・病室のような場所だった。
???「ここは・・・」
  まったく覚えがない、自分がなぜココに、こんな場所に居るのか、酷く目眩や頭痛・・・全身が痛みを覚えている。
「!?!?」
???「なっ!なん・・・」
  なんだこの・・・?
  
  こ・・・これは・・・
「か・・・鏡?」
???「これは・・・これが? 僕?」
  なんてことだ、自分の姿に驚いた上、まったく覚えがない姿、本当に僕なのか?いや、疑いようがない、洗面台の鏡に映る僕の姿だ。
???「冴えないな・・・しかし、一体どうして僕はこんな所で・・・」
(・・・・・・・・・)
???「んっ!?」
  まったく思い出せない!
  自分が誰なのかも、ここがどこで、自分の名前さえ・・・
  
  どうなってるんだ・・・。
???「・・・困ったなぁ・・・」
  ここに留まり、誰かを待つ?誰を?誰かが来るのか?僕は・・・いや、もう考えても仕方がない。
???(とりあえず、酷く喉が渇くな・・・ずっと眠ってたし、凄くお腹も空いてるみたいだし、洗面台からは水が出ないようだ)
  ここから出るべきだろう・・・扉、ここから出られるのか?。
???「鍵は・・・開いてるな・・・」
  先へ進むと、
  薄暗い廊下が続いていた・・・。

〇地下道
???「地下なのか? 窓が無い・・・病室かと思ったが、これではまるで・・・」
  研究所・・・そんな言葉が頭に過る、嫌な気分だ、僕は・・・何かされていたのだろうか。
???「なっ!?何だ!! 水が・・・」
  確かに喉は渇いていたが、まさか水が動き・・・歩いてる?。
スライムみたいな何か「わっ!アンタ部屋で寝てたバケモノじゃねーか!動くの?死んでると思ったのにさ!」
???「しゃ・・・喋ってる・・・ 水が・・・動いて喋ってる・・・」
スライムみたいな何か「テメェも殺る気か? ここに来てから頭の変な連中ばかりだ!急に襲って来やがってよーっ!」
???(なんか物凄く怒ってるぞ・・・何なんだコイツ・・・)
???「まっ・・・待て!僕は・・・」
スライムみたいな何か「消え失せろや!!」
???「わっ!うわぁー!!」
  凄まじい激流、まさに取り付く島もないくらいだ、あっという間に押し流されてしまった。

〇山奥のトンネル
???(ふう・・・酷い目にあったな、濡れてしまった・・・少し頂いてしまったが飲んでも大丈夫だったのかなぁ・・・)
  地下から押し流されて、外は明るい、雑木林が広がっていた。
???(・・・あの地下に、僕の事が分かるモノがあるかもしれないが、あのスライム?に遭遇したら今度こそ命が無いかもな・・・)
  喉は潤ったが、余計空腹になってしまったな・・・凄くペコペコだ。
顔色の悪い人「おや?コレはコレは・・・ また異世界から迷子の仔猫ちゃんがお出ましかい?」
???「あ!また変な奴!」
顔色の悪い人「随分とご挨拶だね、初対面の人間にさぁ、俺は田所・・・ 田所 陽一 (たどころ よういち) お前の名前は?」
???「お前に名乗る名は無い」
???(あれ?変な言い回しになっちゃったな・・・思い出せないだけなのに・・・)
田所 陽一「ん?何だ?記憶が無いのか?急激な肉体の変化に脳がダメージを負ってしまったのかな」
???「察してくれたっ!?結構良い人なの!?と言うか、僕みたいなのが他にも!?」
田所 陽一「この世界に墜ちた人間は、遅かれ早かれバケモノになっちまうのさ、俺もホラ、この通りゾンビみたいになぁ」
  田所は舌舐めずりしながらにじり寄って来る。
田所 陽一「腹が減って仕方ねぇよな 分かるぜ、俺もだ そんでお前は中々の肉付きなワケだ」
???「・・・そう」
  驚きは無かった
  
  ただ・・・残念だった。
田所 陽一「うおっ!?」
  何故かとても冷静だった、当然のように爪を滑らせた、出血をしたのは田所の方だった。
田所 陽一「戦い慣れてる?記憶が無いんじゃないのか?」
田所 陽一「おっと!? マジかよ・・・」
???「今、お腹が空いててさ 悪いけど」
  爪から滴り落ちる腐りかけた血液、それが舌の上を湿す、血の味が、とても甘くて。
???「見かけによらず親切で、とっても美味しい人 もっとお話出来たら良かったんだけど」
田所 陽一「肉は腐りかけたのが一番美味いんだぜっ!! そうだろっ!!」
田所 陽一「うぐっ・・・貴様・・・」
???「手を出してくれたから、口が出ちゃったよ」
  殴りかかってきた田所を喰らった、肉片が喉を過ぎると力が溢れる。
???「今度は、内臓を貰おうかな」
田所 陽一「俺より強いじゃねーか! ははっ!ルーキー!! こりゃヤバいな!!!」
???「っ!?何!!」
  出血と血飛沫がそのまま真っ赤な霧に、周囲を包み込んだ。
???「こんなもの・・・」
  払うと、そこにはもう誰もいない。
???(刃なんて出せたんだ僕・・・透明な日本刀の刃みたいだが・・・爪より鋭いけど、ちょっと疲れるな)
???「やれやれ・・・まあ少しは腹の足しにはなったが、今度見つけたらあのニヤケ面が挽肉になるまで引き裂いて・・・」
???「・・・アイツが落としたのか?鍵か・・・」
  道なりに門が見えた、鉄格子に囲まれた墓場のようだ。
???「ゾンビにお墓か、とりあえず調べてみるか」
  奴は地下の方に逃げたようだが、正直引き返してまで追いたくない、あの地下は嫌いだ。

〇墓石
  門が開くと、奇妙な霊園が広がっていた、墓石が密集していて、まるで迷宮のようになっていた。
???「ふん・・・鍵が合わないな・・・」
  霊園の中にまでは入れないようだ、力づくで開けようとしたが、不思議なほど丈夫でビクともしない。
???「どうなってるんだ?見えない壁が天空まで伸びてるようだ・・・」
???「ラッキー・・・じゃなくて、クッキーだ、お供えかな?道端に転がって──」
???「ティーポット?」
???「お茶がまだ温かい・・・それに」
???「ぬいぐるみねぇ・・・ 子供がお茶会ごっこでもしてたようだ」
ジャージ姿の…「は・・・は・・・」
???「っ!?」
  背後から、トンネルの方、人間?今ですれ違いもしなかった?後から追って来た?誰だコイツ・・・。
ジャージ姿の…「ハルカぁぁぁ!! 居たぁぁぁ!!!」
???「えっ?えっ? なに?」
  バケモノの、血の臭いがするカイブツ、ソレに恐れもせず、驚きもせず、親しげに抱きつくジャージ姿の。
ジャージ姿の…「ドコに行ってたんだよ!部屋で寝てたのに急に・・・気がついたら変な連中が彷徨いてるし誰かに喰われたかと・・・」
???「ま、まって・・・君は・・・ 誰なんだ、僕を知ってるのか?」
ジャージ姿の…「・・・・・・」
ジャージ姿の…「え?なんで記憶無くして、オレちゃんと・・・そんな・・・」
  ジャージは僕の身体を調べ始めた、僕はあまりの事に対応できずクッキーを抱えたまま固まっている。
ジャージ姿の…「えっ・・・あ・・・うん、ちょっとタイムタイム・・・」
  そのままいったん僕から離れたジャージ。
トキオ「あ、やー初めまして!オレ 青葉 時緒 (あおば トキオ) よろしくだぜ」
???「初対面みたいな事にしてる?」
トキオ「いったん初対面だぜ」
???「君は僕を知ってるんだよね?どういう事?なんなの?」
トキオ「いいんだよ、ぶっちゃけ初対面なのも間違いじゃないっぽいし、ハルカが記憶を無くしてる方が悪い」
???「僕のせい? と言うか、ハルカ? ソレが僕の名前?」
トキオ「ま、そういうこった お前は 風見 遙歌 (かざみ ハルカ) あの部屋でずーっと眠ってたみたいだぜ」
トキオ「治療は完ぺきだったんだけど、ちょっと頭の方に問題があって記憶を失っちまったみたいだぜ!」
ハルカ「そ、そう・・・ハルカ ソレが僕の名前・・・ 僕は一体何者なんだ? 君は・・・何か知ってるのか?」
トキオ「どうかなー? オレとハルカは親友だったんだけど、どっちが今のハルカか分からないしな」
ハルカ「どっち?」
トキオ「まー、細かい事は良いんだよ、マジでずーっと眠ってたから心配だったんだぜ?ようやく目が覚めて良かったんだぜ」
トキオ「そんな瓶詰めの焼き菓子如きで満足する事もあるまいし、休める所を・・・見つけたから、そっちに行こうぜ」
ハルカ「え?あ?うん・・・」
  なんなんだコイツ、しかし僕について知ってる、敵意もなさそうだけど・・・ついていくしかないか?。

〇野営地
  霊園から道なりに進むと、キャンプ場が広がっていた。
トキオ「他の生存者が用意してたみたいなんだぜ、食料も備蓄してあるし簡易トイレから風呂まであるとか、至れり尽くせりだぜ」
ハルカ「その人たちは?」
トキオ「死んだんじゃないのー?」
ハルカ「そう・・・」
トキオ「コレ、確か食べ物なんだろ?喰ったら元気になるんじゃね?」
ハルカ「おにぎり・・・でもカチカチ・・・ 用意して随分経ってるな」
トキオ「なんだよ、食べれないの? 他に良いモンないかな?」
トキオ「血と肉が詰まってるみたいだぜ!コレも誰かが用意してたのぜ?」
ハルカ「食べ物としてはクッキーの方がマシな件について・・・まあ僕なら問題ないかもだが」
トキオ「そ、そうだな! どーしよ、食べ物ってあまり詳しく無いんだよ必要無かったし」
ハルカ「大丈夫?君はお腹減ってないの?」
トキオ「主食には苦痛と絶望を少々、この世界に閉じ込められてからは魔力の補充にも困らないし、最近は何も食べてないなー」
ハルカ「なんか食欲なくなってきたよ・・・」
トキオ「おっ、コレなら食えるよな確か?」
ハルカ「リンゴか、ちょうど果物が欲しかったかも、さっきのつまみ食いの口直しっと」
トキオ「ようやく気に入ってくれて良かったんだぜ」
トキオ「よし、オレたちの目的は、この世界から脱出することだ、できれば地球に行きたい、その為にイケニ・・・」
トキオ「他に生存者!生存者だな!生存者を一人でも多く救出、だな!出来れば10人は必要なんだぜ!」
ハルカ「一人でも多く出来れば10人?」
トキオ「細かい事はいーの! とりあえず人手不足なのぜ、生き残りや、この世界に落とされた人間が要るのぜ」
トキオ「暫定人助け的な何かと言う事で、冒険しながら人狩り行こうぜ!」
ハルカ「別にいいけど、他の人間も僕みたいにおかしくなってるんじゃないの?田所さんもそう言ってたが」
トキオ「え・・・あー、オレが何とかするから心配しなくていいぜ、バケモノになりかけなら人間に戻せるし」
ハルカ「人間に・・・戻せる? 僕も?」
トキオ「え?ハルカはそっちの方が便利じゃん、身体も丈夫だし、強いから」
トキオ「人間の姿のまま強く出来たら良かったんだけど、あの時は準備も悪かったし・・・今後を考えたらと思って・・・」
トキオ「ん・・・・・・・・・」
トキオ「何考えておった!あの時の我めがっ!いやあの時は・・・あの時だったし・・・」
トキオ「ま、まあ準備さえ整えば、人間の姿にバッチリ戻せるのぜ、失敗は成功の素なのぜ!」
ハルカ「ひとりでブツブツと、まあ後々人間の姿にしてくれるってのなら、僕からはもう何も無いよ、確かに怪物と戦うなら強くないとだしな」
トキオ「流石はハルカなんだぜ! とりあえず今日はゆっくりして、明日から近場の廃村を調べてみようぜ、人間の気配がするし」
ハルカ「テントの中は調べたのか? 誰かが隠れてるかも」
顔色の悪い人「いえ・・・私以外は誰も・・・」
トキオ「人間は居ないぜ? お前はとっとと消え失せろ」
顔色の悪い人「酷いです、あのオラついたゾンビから隠れてたのに・・・」
顔色の悪い人「これ、お近付きの・・・粗品です」
ハルカ「あ、ご丁寧にどうも・・・」
顔色の悪い人「私には、もう必要も無いモノだから・・・では・・・」
トキオ「サッサとクタバレよー」
トキオ「非常食にもならん雑魚めが、なんか役に立つモノでもくれたのぜ?」
ハルカ「スマートフォンだな ん・・・どうやら・・・」
  コレは、トキオのだ。
  トキオのスマートフォンだ・・・。
  待ち受け画面に、トキオと、ハルカが居た。
  
  ハルカの妹のサクラも・・・。
トキオ「ソレ、手鏡か何か?」
ハルカ「・・・」
  トキオはスマートフォンにまったく見覚えがなさそうだけど・・・。
ハルカ「あー、まあそんなモノ」
  そのまま、自然にポケットにしまった、今の目の前のトキオに返したらダメな気がして。

〇荒廃した街
  キャンプから離れた場所、寂れた廃村が、まるで中世の町並みだが。
顔色の悪い人「アハハッ! めっちゃウケる! 死んじゃってるじゃん私!」
ハルカ「さっきからこんな人ばかりだけど 本当に人間が居るの?」
トキオ「いるいる! 廃村の奥が怪しいのぜ!」
顔色の悪い人「あら?キャンプに生き残り?と言うかー 二人とも人間じゃなくない?あんたらもバケモノなの?」
ハルカ「まあ見ての通りだが」
トキオ「オレは回復術師なんだぜ どんな怪我も、死んじゃってる人も回復できるのぜ」
顔色の悪い人「マジ?アタシも生き返れる?」
トキオ「お前はもう別の存在だから無理なんだぜ、死体を人間に戻せるけど、ゾンビを人間には戻せないんだぜ」
顔色の悪い人「そーねー まあゾンビでも困らないし・・・ 別にいいんだけど」
顔色の悪い人「見てよコレ 剣を投げてくる高校生がね、さっきから暴れてるのよ、超迷惑」
  見事に身体に刺さってる、他にも剣はそこら中に転がっていた。
トキオ「魔力を感じるぜ! 人間の!きっと生存者なんだぜ! 能力に目覚めて、バケモノになりかかってるぜ!」
ハルカ「能力?」
トキオ「この世界は魔力に満ちてて、魔力の無い地球人が来ると、魔力が被爆して身体が変異しちまうんだぜ」
トキオ「魔力が臨界点を超えると、完全なバケモノ、魔物になっちまうんだぜ」
顔色の悪い人「なるほど!私も魔物になっちゃったのねー! 死んじゃった後から 臨界点にイッちゃったのか」
トキオ「生存者は魔物でない人間じゃないとダメなんだぜ、腐る前に収穫しないと勿体無いぜ」
顔色の悪い人「さながら私はワインになりそこなったデラウェアってワケね」
顔色の悪い人「あ、そう言えばコレ、キャンプにあった食料なんだけど、もう要らないからあげるねー」
トキオ「なにこれ? 食べ物なのぜ?」
顔色の悪い人「そ・・・そうよ、お湯無いけど」
トキオ「お湯がないと、何か問題があるのぜ?」
顔色の悪い人「あ、改めて説明すると・・・ちょっと面倒くさいわね、そっちのゴツゴツ君にあーげるっ、カップ麺知ってるっぽいし」
ハルカ「はい ありがとうございます」
顔色の悪い人「お姉さんみたいに死んじゃダメよっ」
ハルカ「なんか生き生きしてるゾンビだったな、敵意が無いなら始末はしないけど」
トキオ「先に進もうぜー」
  廃村を進むと、瓦礫から。
見るからにゴブリン「がぎゃあっ!」
トキオ「なんだゴブリンか 跪いて命乞いでもしたらどうだ」
見るからにゴブリン「ぎゃ!ぎゃ!」
トキオ「ふむ・・・」
ハルカ「えっ・・・」
  トキオはぶっ飛ばされた。
見るからにゴブリン「ががぎゃ!ぎゃぎゃ!」
ハルカ「お前・・・」
見るからにゴブリン「・・・ぁ・・・・・・・・・」
  ゴブリンっぽい人型をした怪物は血を撒き散らし、動かなくなった。
ハルカ「おい!大丈夫かい!? トキオ!!」
トキオ「回復したのぜ!」
ハルカ「す・・・凄い・・・かすり傷一つも残ってない・・・」
トキオ「うっかりしてたぜ 今のオレは・・・」
トキオ「あんまり弱そう、だったから!油断したの! 分かる!?」
ハルカ「え?まあ・・・そうなの? 気をつけてくれ」
トキオ「応っ!! まあどんな怪我も毒も病も、呪いだって消してやるから!そっちは頼りにしてくれだぜ!!」
ハルカ「ソレが、トキオの能力なの?」
トキオ「ん?」
トキオ「そ、そうなのぜ! 戦いになったら石でも投げて援護するのぜ!」
トキオ「回復術師は身体の構造を把握しやすいから、弱点を狙えば投石でも威力は十分なのぜ」
ハルカ「いや別に隠れてても良いよ 僕が始末すれば良いだけだし」
トキオ「それもそうなんだけどよ なんか気分悪いじゃん あんな雑魚相手に・・・」
トキオ「・・・だけど、そうだな ちょっと任せるぜ」
  魔物と戦い慣れてるようで、まるで危機感がない素人のような動き。
  
  トキオは、本当に何者なのだろうか。
ハルカ(とは言う僕も、本当にハルカと言う人間だったのだろうか・・・)
  このスマートフォンに映る、過去の自分の姿・・・。
  
  まるで他人のようだ。
トキオ「ん?血の臭いを嗅ぎつけたか?」
  獣の足音、何か来る。
ブラッド・サッカー「あ、どうも冒険者サン ブラッド・サッカーです」
ハルカ「これはご丁寧に ハルカです、こっちはトキオ」
トキオ「腐れ吸血鬼のなりそこないがなんのようだ、ソコに転がってるゴブリンのケツでも舐めに来たのか?」
ブラッド・サッカー「そんなモン舐めるかボケ! テメェの血は美味そうだがな!コッチまで匂って来たぞ!ご馳走の匂いがなぁ!」
トキオ(オレが呼んじまったのか・・・)
ブラッド・サッカー「が、しかしだ! そっちのゴツゴツした兄ちゃんは敵に回したくねぇ だから俺はー!お前らをー!罠にハメる事にするぜー!」
ハルカ「え?どんな罠?」
ブラッド・サッカー「実は廃墟の中が異界重化してて、あ!異界重化ってのは、異界にさらなる異界が重なり多重構造となる現象な!」
ブラッド・サッカー「俺の住み家だった屋敷に、どこかの旧校舎が融合して!もうめちゃくちゃ!」
  旧校舎・・・学校の校舎ごと?コッチの世界に?そんな事が可能なのだろうか・・・。
トキオ「あー、取り壊された旧校舎の影が実体化して降ってきたのか、まあ良くあることだ」
トキオ「数多異世界から棄てられた物が鎮められる夢の島、封印の坩堝、大いなる神々の最後の余地が、今ではゴミ捨て場なんてな」
ブラッド・サッカー「魔王様みたいな事を言うんだな人間のクセに、最近は姿をお見せにならないので四天王様も心配してたが・・・」
トキオ「ふーん」
ハルカ「ソレが罠とどう繋がるんだ?」
ブラッド・サッカー「異世界から棄てられるモノに、その世界の人間が手に負えない良くないモノも混ざってんだ、ソイツをお前らにぶつけてやんだよ」
ブラッド・サッカー「いくら強そうなゴツゴツでも無事じゃあ済まない!この鍵をプレゼントして分からせてやるのさ!」
ハルカ「へー、じゃあその鍵でしか開かない扉に気をつければ大丈夫なの?」
ブラッド・サッカー「なんでソコまで口にしちまったんだろ俺ェ・・・」
トキオ「はいはい、お疲れ様 お土産にゴブリンの死体でも持ち帰れよ」
ブラッド・サッカー「そうする・・・」
ハルカ「変な人だったね」
トキオ「だから万年落ちこぼれなんだよアイツ、それより行こうぜ、その鍵で開かない扉を進めば安全だ」
  廃村を進むと道を塞ぐような屋敷が見えてきた。

〇古い洋館
  ただならぬ雰囲気、重苦しい空気、何かが居る。
ハルカ「まあ目の前にも居るんですけどねっと」
クモ「・・・キキ・・・」
ハルカ「まったく・・・切りがない」
ハルカ「トキオ、大丈夫かい?」
トキオ「目障りな連中だよまったく」
クモ「ギギィ・・・」
  クモ型の怪物の急所を投石により一撃、一瞬で動かなくなった。、
トキオ「あの割れた窓から入るぞ、玄関は諦めようぜ」
  まったく視界にも入れず、容易くクモを投石により射抜く、凄まじい投擲力だ。
ハルカ「凄い腕だね、そんなに強いとは思わなかったよ」
トキオ「別に、死ぬトコロに弾いてるだけだし」
トキオ「クモ如きに手間暇かけてられん、本来なら屋敷ごと焼き払ってしまいたいくらいだよ」
トキオ「しかし、このクモの巣はどこから・・・ブラッド・サッカーはコイツらのこと何も・・・」
ハルカ「考えるのは後にしよう、跳ぶぞ」
トキオ「ガッテンなのぜ!」
  窓めがけ走り、そして跳んだ。

〇廃墟の廊下
  あのクモは、屋敷まで入ってこないようだ、廊下が続いてる。
ハルカ「クモの巣は・・・屋敷の中ではないのか?」
トキオ「そうみたいだなー 村の周辺の森かどこかにって感じなのぜ 何かが原因で村まで降りてきたのかな?」
トキオ「その原因が、例の旧校舎か、それとも魔力に狂った生存者か・・・知らないがな」
ハルカ「魔力に狂う?」
トキオ「そりゃ身体が変異するくらいの影響、精神にも響くもんだろうぜ、魔力に耐えられず発狂した人間ばかりさ」
ハルカ「僕や・・・あの田所さんも?」
  魔力でおかしくなってるのだろうか、いや・・・身体が変わってるんだし・・・。
トキオ「その田所って奴は知らないがな、ハルカの精神は大丈夫だったハズなんだ」
トキオ(それなのに、記憶を失っちまった・・・つまり、そういう事なんだよなハルカ・・・お前は・・・)
ハルカ「ん?なに?」
トキオ「酷い奴だ、この裏切り者め」
ハルカ「裏切っ!? 僕が!?」
トキオ「ハルカのそういう所が大好きなんだけどな、オレの完ぺきな術に泥を塗るような真似をしたのは許せんな」
トキオ「やっちまったモンは仕方ない、オレは根には持つものの、今ハルカと一緒に居れて楽しいし、大目に見てやるんだぜ」
トキオ「お前じゃ無かったら生きたまま皮を剥いでやりたい気分だがな」
ハルカ「怒ってるような笑ってるような・・・」
トキオ「どちらにしろ遅かれ早かれ、オレはハルカと地球に行くんだ、ソレが一番大事なのぜ」
ハルカ「その為に、生存者が必要なの?」
トキオ「そうそう、二人だけじゃなく、皆も一緒の方が良いのぜ良いのぜー!」
ハルカ「魔力に狂ってても助けれる?」
トキオ「生き返らせるのも出来るし、ぶっ殺して死体でも構わないぜ、ゾンビとかになる前に生き返らせるのでもアリだが・・・」
トキオ(我が手を付けたソレで、連中が満足しない可能性もある、か・・・面倒だな)
トキオ「やっぱり殺すのはナシ、生け捕りオンリーで頼むのぜ」
ハルカ「相手にもよるけど・・・」
  相手の能力によっては手加減なんて出来ない、始末せねば殺られるのは僕らだ。

〇廃ビル
  客室だろうか?、ホテルの廊下にも見える、元々は宿泊施設だったのかもしれない。
  ちらほら、学校の校舎で見かける物が・・・。
  スポーツに使う物まで廊下に散らばっている。
トキオ「荒らされてるみたいだな、ブラッド・サッカーの仕業かな?」
ハルカ「旧校舎になった住み家を調べていた・・・と言うワケかい?」
  鍵を差して回してみるが、どの扉にも合わないな。
トキオ「こ・・・これは・・・」
トキオ「や・・・野球?」
ハルカ「どうしたの?トキオ?」
トキオ「あ・・・いや、身体が勝手に反応しちゃったみたい、何も問題はないのぜ」
トキオ「野球・・・そうそう野球、オレは野球をしていたのぜ、野球ってのはボールを投げたり・・・投げたり・・・投げたり?」
ハルカ「バットでホームランしたり?」
トキオ「バントでホームランだぜ!」
ハルカ「しないよ! もしかして・・・トキオも記憶を失ってるの?」
トキオ「失ったと言うか・・・捨てちゃったみたいなもんかなぁ・・・」
ハルカ「捨てちゃったの!?」
トキオ「うん、その時は必要ないと思ってたし、まさかこんな結果になるなんて想定の範囲外なのだ」
トキオ「そうだなぁ・・・回復を覚えるのに、記憶が邪魔だった、て感じ?だから、消しても消えないような記憶と感情しか残ってないみたい」
ハルカ「なんかヤバい系の修行でもしてたのかい?」
トキオ「一般的な常識くらい、不要でも残しておくべきであったな、うっかりうっかり」
ハルカ「そっちの方は僕の方が覚えてるくらい、かもだね 食べ物とか」
トキオ「ほんとそれ! 頼りにしてるのぜ!相棒!」
ハルカ「まあ、いいけどさ」
  この周辺には、目ぼしい物は無いみたいだが。
顔色の悪い人「あー、なんだよもう・・・ 嫌になっちゃうよなぁ」
顔色の悪い人「目玉が無くなっちゃったぁ 嫌になっちゃうよなぁ」
ハルカ「また変なのが居るし・・・」
顔色の悪い人「あら?ブラッド・サッカー様の声じゃないわね?誰ぞ!誰ぞ居らぬか!誰ぞ!」
顔色の悪い人「やだ!誰も居ないじゃない・・・みんなクモにビックリして逃げちゃったのかしら」
顔色の悪い人「私ってば視力を失った上に不法侵入者にかち合っててもう絶体絶命って感じね、いやもう死んでるんだけど」
ハルカ「君が何もしないなら、僕からは何もしないよ、邪魔するなら始末させてもらうけど」
顔色の悪い人「あ、そう なら私ってば目玉を壊しちゃってるし、隅っこに座ってるね・・・えっと・・・隅っこって何処かしら?」
ハルカ「これは!気も利かずにすみません・・・廊下だとアレだし、何処か部屋に入れてあげるよ」
  ガチャり、持ち合わせた鍵で扉が開いてくれたぞ。
ハルカ「良かったー さあ手をかして、案内してあげるから」
顔色の悪い人「なんか申し訳ないわね お願いします」
トキオ「ああっと!? 普通に旧校舎に入っちゃったよ!? ハルカー!ダメー!!」

〇荒廃した教室
  おや?随分と雰囲気が違うが・・・。
ハルカ「あれれ?もしかして・・・」
顔色の悪い人「えっ!? この空気とカビの臭い!! まさか異界化した部屋に入っちゃったの!?でも鍵はブラッド・サッカー様が・・・」
ハルカ「そのまさかみたい」
顔色の悪い人「うそーん!? 今すぐ!!今すぐ直ちに速やかに戻るのよー!!」
ハルカ「扉がなんか君そっくりのポスターになってる・・・」
  閉じ込められてしまったようだ、トキオともはぐれてしまったな。
顔色の悪い人「ぐ・・・っ!? こうなってしまったら最後・・・ 私も覚悟を決めるわ!!」
顔色の悪い人「必殺ー!! 隅っこで死んだふり!!!」
ハルカ「えっ!?」
ハルカ「凄い、本当に死んでるみたい・・・」
「ゾンビですものっ」
  まあ、目的は果たしたワケだが・・・
  この始末どうしてくれようか。
ハルカ「出口が無いか調べるしか無いか・・・」
  周囲は非常に暗いが、僕の目ならそう不自由の無い暗闇だ。
幽霊「あ!知らない人が居るし! 誰だテメェ!!」
ハルカ「子供? 君、この学校の生徒?」
幽霊「小学108年生の 倉島 直実 (くらしま ナオミ) だよっー!」
ハルカ(僕よりきっと年上だ!)
幽霊「えへへ・・・兄ちゃん美味そうだなぁ・・・バケモノのお肉はどんなお味?どんなお味?」
ハルカ「ほら、カップ麺あげるよ」
幽霊「カップ麺だぁぁぁ!!」
幽霊「兄ちゃん美味そうだけど、カップ麺くれたからもういいやっ!わーいわーい!みんなにも自慢してやろー!」
ハルカ「消えてくれたか、幽霊でも殺せそうだけど、子供の姿を攻撃したくないな」
ハルカ「まあ100歳は越えてるだろうけども」
  旧校舎の中は酷く荒らされてる、ブラッド・サッカーの仕業に違いない。
ハルカ「なら、出口はあるだろうな」
  奴も旧校舎の中に入り、出ているのだからな、探索しつつ出口を目指そう。

〇廃ビルのフロア
  しばらく歩き、開けた教室に、戸棚や勉強机などを撤去した教室のようだが。
赤いコートの女「あら? ソコに誰かいるの?」
ハルカ「お・・・オバケじゃあないよね?」
赤いコートの女「アンタの方がよっぽどバケモノでしょうが」
ハルカ「それもそうだね 僕はハルカ、この旧校舎から抜け出したいのだが、何か知ってる?」
赤いコートの女「アタシも出口をさがしてるの、この旧校舎ごと巻き込まれてしまったみたい、元の世界に戻りたいのだけれど」
赤いコートの女「万策尽きて途方に暮れてる所よ、良かったら協力しない?会話が出来るみたいだし」
赤いコートの女「普段は独りなんだけど 流石に心細くて」
カシマレイコ「神島 麗衣子 (かしま レイコ) よろしくね」
ハルカ「ああ、どうも こちらこそ 所で神島さんは なぜ、旧校舎に?」
カシマレイコ「取り壊す旧校舎の地鎮祭にね・・・アタシはフリーの霊能者なの、神社から悪霊祓いの仕事を請け負ってね」
カシマレイコ「まさか異世界に落とされるとは思いもしなかったけど、まあ経験がまったく無いわけじゃないわ」
カシマレイコ「アタシなんかより、君こそ・・・ どうして旧校舎に?」
ハルカ「それが、まったく記憶が無くて・・・トキオ、いや・・・友達とはぐれてしまったから、探さなくては」
カシマレイコ「他にも居るの? なら早く合流しないと この世界は危険よ、一刻を争うわ」
ハルカ「そうですね、先ずはどうしようか?出口とは言っても・・・」
カシマレイコ「アタシの霊感でも感知できないし・・・コレは巧妙に隠されてるに違いないわ」
カシマレイコ「一度、この旧校舎に来て、脱出した人が居るみたい・・・今度こそ逃がすものが、と言う強い念を感じるわ」
ハルカ(ブラッド・サッカーだな・・・)
カシマレイコ「もう、この旧校舎のヌシを倒さなくてはならない、ヌシを滅ぼさない限り、脱出は不可能でしょうね」
カシマレイコ「だからこそ・・・その為に、とっても強そうなアナタが必要ってワケなのよね」
ハルカ「僕が?」
カシマレイコ「アタシにも戦闘能力はあるけど、この力の波動を見るに、一人だと分が悪いからね」
カシマレイコ「出口は分からないけれど、そのヌシの居場所は分かる コッチよ」
ハルカ「へー、便利な能力だね」
  正体不明のフリー霊能者なんて胡散臭いにも程があるが、僕が言えた義理もない。
  独りだと心細い、確かにそうだ、トキオは大丈夫だろうか。

〇荒れた倉庫
  ここは・・・用務員室、兼倉庫と言ったところか。
旧校舎のヌシ「貴様ら・・・迷わずココを目指すとは・・・」
ハルカ「こんばんは、そろそろ死ぬには良い日だと思いませんか?」
カシマレイコ「悪いけど、アナタには消えてもらうわ」
旧校舎のヌシ「俺より悪役っぽい!? しかも手練れてそう!?こんな獲物!バケモノになってから初めてだぜ!!」
旧校舎のヌシ「だが俺だってヌシさ! この旧校舎のヌシさ! お前らもバケモノに・・・」
旧校舎のヌシ(なんかもう既にバケモノみたいだが・・・)
旧校舎のヌシ「旧校舎の!! バケモノにしてやるぜ!!」
旧校舎のヌシ「くらえっ!」
ハルカ「このっ・・・」
旧校舎のヌシ(なんかブレード出してるんですけど・・・岩石も粉微塵になるブレード出してるんですけど・・・)
カシマレイコ「喝ッ!!」
旧校舎のヌシ(バリア出してるんですけど・・・あっちバリアなんか出してるんですけど・・・)
旧校舎のヌシ「お前ら人間じゃねーな!」
カシマレイコ「おだまり、高い能力は備わっているが、使い方が分からないようね、ならば・・・」
カシマレイコ「臨兵闘者皆陣烈在・・・」
ハルカ「おっと、危なそうだな」
カシマレイコ「前っ!!」
旧校舎のヌシ「ぎゃあ!?」
カシマレイコ「そこよ」
旧校舎のヌシ「ぐふっ・・・」
カシマレイコ「ふう・・・トドメはお願いね」
ハルカ「承知!」
旧校舎のヌシ「ばっ・・・バカな・・・ 何も・・・できな・・・」
カシマレイコ「終わったわね、高いエネルギーを持ってはいた、しかし技量が伴って無かったようね」
ハルカ「とんだ雑魚だったね・・・ ん?」
ハルカ「こっ・・・これは・・・」
カシマレイコ「ヌシのエネルギーを・・・」
ハルカ「痛っ・・・なんなんだ?」
カシマレイコ(あのヌシのエネルギーを・・・喰らった? 本人の意思に関係無く?)
カシマレイコ(マズいわね、この場で彼を始末するべきかしら?しかし・・・高い戦闘力、そんな彼が莫大なヌシのエネルギーを・・・)
カシマレイコ(下手をしたら返り討ちになる可能性も・・・ならば、ここは見逃すしかないわね)
ハルカ「今のは・・・なんだったんだ?」
カシマレイコ「・・・呪いの類、だったのでしょう・・・ 本来なら、ね でも、アンタの力になってしまったようね」
カシマレイコ「アンタが無事で良かったわ」
ハルカ「嫌な感じだが・・・ 出口が分かったぞ いや、ヌシの力で 僕が作れるんだね」
ハルカ「うん、大丈夫 この旧校舎を閉じて、消すこともできそうだ」
カシマレイコ「アンタは、これからどうするの?」
ハルカ「・・・来た所に戻る予定だけど、アナタは?」
カシマレイコ「アタシは多分、旧校舎跡地に戻るでしょう アンタって、日本の人間よね?魂で分かる、一緒に帰る?」
カシマレイコ(手元に置いていた方が、始末するにも良いでしょうし)
カシマレイコ「どうかな?」
ハルカ「・・・・・・・・・」
  日本、地球、僕が元々居た世界、しかし・・・僕の帰りを待つ人なんて・・・
ハルカ「いや、友達を探さないと」
カシマレイコ「そう、残念だわ」
カシマレイコ「でも、きっとまた会えると思う コレを預けるわ」
ハルカ「コレは?」
カシマレイコ「お守り」
カシマレイコ(ただの霊石で、発信機みたいな物だけど)
カシマレイコ「助かったわ アンタが居なければまだ旧校舎で立ち往生してたもの、本当にありがとう」
  世界が遠くなる、それぞれが元いた場所に戻るのだろう。

〇荒れたホテルの一室
  気がつくと、そこはもう洋館の一室、旧校舎は跡形もなく消えた。
ハルカ「終わったのか・・・」
顔色の悪い人「あ、この何か饐えたような臭い、それに血生臭い空気、元の世界に戻ったのね!」
ハルカ(居たんだ・・・すっかり忘れてた・・・)
顔色の悪い人「そしてこのレモンの香りは・・・君ね!君がなんとかしてくれたのね!」
ハルカ「え・・・うん・・・」
顔色の悪い人「これ、裏口の鍵、サッサと帰ってくれる?ブラッド・サッカー様が帰って来たら面倒だし」
顔色の悪い人「鍵使ったら、裏口側のテーブルの上に置いといてね、この部屋の鍵も一緒にね」
ハルカ「わかりました」
顔色の悪い人「じゃ、私は横にならせて貰います」
  手探りでボロボロのベットに潜り、そのまま眠ってしまったようだ。
  ベッドから拳銃が転がってきたぞ、あの人の物ではなさそうだけど・・・。
ハルカ(・・・貰っちゃお)
  武器には困ってないが、こんな状況だし必要になるかも、なんでベットの上にこんな物があるのか不思議だが。
ハルカ「しかし、弾は入って無いようだが・・・」
  部屋の中にあるだろうか。
  
  周りを見て見ると、ベットの上に死体が・・・はあの人だった。
ハルカ「空っぽ」
ハルカ「いらない」
ハルカ「また銃だ・・・だけど・・・ 壊れてる?」
  マガジンの中には弾が残ってる、こっちの拳銃に使えるだろうか?。
ハルカ「こんなものか、そろそろ出ないとな・・・それにしても近代的な道具が見つかるなんて・・・」
  異界が重なった結果か、それとも生存者が持ち運んだのか・・・役に立てれるなら使おう。
  トキオは、まだ近くに居るだろうか。

〇廃ビル
  廊下に出ると、トキオの姿は無かった、屋敷の中に居てくれてるだろうか。
ハルカ「コレは・・・何か床に挟めて置いてあるぞ」
  書き置きだ。
  なら大丈夫だと思い□□□□だがオレは□□□□□□でも□□□だが──
ハルカ(所々に見たこともない文字が並べられている・・・裏面にも・・・)
  𓋴𓄿𓎡𓇌𓈖𓇌𓇌𓎡𓅱
  
  𓉔𓄿𓂋𓅱𓎡𓄿
  
     こっちは見ないで
ハルカ「書いてる途中で読めない文字だって気づいたっぽいな」
ハルカ「今ごろどうしてるやら、屋敷の中に使えそうな物がある所は・・・」
  ブラッド・サッカーが旧校舎から集めた物に役に立つような物はあっただろうか?、この近くに置いてあるに違いないが。
ハルカ「出席簿だ、書き置きの近くに・・・概要欄や連絡先のページなどを見ながら書き置きしたみたいだな」
  屋敷の簡単な地図だ、出席簿に挟まっていた、角部屋に目標がされてる。
ハルカ「とりあえずこの部屋を調べるか、近いし」

〇洋館の一室
  その角部屋は、やたら綺麗に整っていた、修繕すらされている。
トキオ「エダグレース・・・バーイー アムウエダグレース・・・ バーイー・・・バーイー・・・」
トキオ「イム・・・エダグレース・・・ イム・・・エダグレース・・・ ノクラ・・・エバ・・・サダージ・・・」
  窓に大量の手形が・・・。
トキオ「ソレは話が違うだろ、約束を違えれば貴様ら容赦せんぞ・・・ハルカに関わるな、他の奴を・・・」
ハルカ「なにして・・・るの?」
トキオ「静かにしておれ、今は取り込み中」
トキオ「うおっ!?ハルカ!? 居たの!?」
  イソイソと・・・何かの儀式のお片付けをしている。
ハルカ「これ、落としたけど・・・」
トキオ「お、その辺に捨ててくれて構わないのぜ!テレパシーのアンテナ替わりに用意しただけなのぜ!」
ハルカ「そう・・・、所で随分と綺麗な部屋だね」
トキオ「ブラッド・サッカーの奴の部屋みたいだな、必要なアイテムもそろってて ふーッ!!」
  ロウソクの火を吹き消すと、香草の妙な臭いだけが残った、手形も綺麗サッパリ消えている。
トキオ「ちょっと用事があって、ハルカが無事に帰れるよう取引しようと思ったら よしっ・・・」
  水晶玉を戸棚に仕舞ってる、もうトキオの部屋みたいだな。
トキオ「まさか帰って来てたとは!」
  不気味な本を片付け終えると、トキオは安心したように微笑む。
トキオ「ハルカか旧校舎に消えてから・・・」
トキオ「ちょっと待て」
ハルカ「あっ!それ・・・」
トキオ「・・・ふん、まあ何にしても こんな物は無い方が良いだろう・・・」
  トキオはお守り玉を握り潰し・・・。
トキオ「痛ってぇ〜!」
ハルカ「潰そうとしないで、ね? ソレは借りた物だから」
  なんとか取り返せた、いきなり何なんだコイツ。
トキオ「力のある人間に会ったみたいだな、ソレは処分することを勧めるのぜ、どうせロクデナシのクズの持ち物なのぜ」
ハルカ(あからさまに機嫌悪くしてる・・・)
ハルカ「まあそう言わず、それより裏口から出よう、鍵もある・・・屋敷の裏から先に進めるみたいだし」
  そもそも道を塞ぐような屋敷なんて・・・やはりこの建物も本来ならここには存在しない異世界から召喚された物なのかな?。
トキオ「そうだな クモが群がってなければ良いけどな」
  僕たちは屋敷の裏口を目指す、特に障害もなく屋敷から出る事が出来た。
  約束どおり、屋敷の鍵は手放した、
  先を急ごう。

〇廃列車
  屋敷から離れると、今度は線路が見えてきた、時間も空間もぐちゃぐちゃに混ざり合っているようだ。
トキオ「変わった道だな、異世界の発明品なのぜ?」
ハルカ「僕の記憶が確かなら、鉄道線と電車・・・なんだよね?」
トキオ「おー、なんか聞いたことあるな・・・ なんか早い奴?」
ハルカ「・・・そう言えば、これ 拾ったんだけど」
トキオ「おっ! 鉄砲だなっ! いーなーソレっ!」
ハルカ(電車は知らないけど、 銃は知ってるんだな・・・)
ハルカ「僕には必要ないし トキオが使えるなら使いなよ、弾も少しだけ見つけたし」
トキオ「本当!良いのぜ!?」
トキオ「石投げるより強いしな さっそくなんか撃ち殺したいのぜ、結局クモもゾンビも居ないし」
  確かに、静か過ぎる。
  ここまで怪物も、魔物にも遭遇しなかった。
  あの変な剣が散乱していたり、あちこち突き刺さってるのは見かけるが。
顔色の悪い軍人「クソったれ・・・これ以上身体がボロボロになってしまったら・・・」
ハルカ「あ、喋れそうな人だ」
  あの剣が突き刺さってる、襲われて逃げてきたみたいだ、それにあの服装・・・屋敷で銃を落とした人なのかな?。
トキオ「あ、良さそうな的が」
ハルカ「やめなさい」
トキオ「確かに、動かぬ的などつまらんしな、自分の頭でも撃った方が楽しめそうだ」
ハルカ「それも、やめなさい」
顔色の悪い軍人「貴様らは! あの剣のガキの仲間か!?」
トキオ「なにそれ?果物?」
ハルカ「トキオ!あれ爆弾!! 銃を知ってて手榴弾を知らないの!?」
トキオ「ばくだん?」
ハルカ「爆弾すら忘れてるし! 破裂して周囲を破壊する武器だよ!武器!!」
トキオ「わっ!いや!!」
顔色の悪い軍人「なに!? ピストルだと・・・」
  精密極めた射撃が手榴弾を持った手をかすめ、ピンもぬけてないまま落ちて転がる。
トキオ「へー、けっこう反動がきついのな・・・人間って面白い武器を作るものだな」
  トキオは拳銃をまじまじとながめている。
  
  初めての射撃にしては、本当に正確な一撃だったが。
ハルカ「そこのアナタ! 大人しくして、爆弾も無しで!話が出来るなら両手を上げてゆっくりと近付いて!早く!」
トキオ「次は耳だ、跪いて命乞いをする 時間なのぜなのぜー」
顔色の悪い軍人「分かった!撃つな!撃つなよ!!」
トキオ「振りかな?」
顔色の悪い軍人「振りってなんだよ・・・ そこのゴツゴツのアンタ! そのバカからピストルを取り上げてくれ!近づけないだろ!」
ハルカ「トキオ撃っちゃダメ もう大丈夫、状況を説明してほしい・・・ その剣は?」
  深々と刺さってる、ゾンビで無かったら致命的だな。
顔色の悪い軍人「仲間や連れ合いはバラバラにされちまった、剣を雨のように降らせるクソガキだよ、この先に居る」
ハルカ「それは大変でしたね、屋敷の方に戻られるのですか? 周囲を大クモが取り囲んでますが・・・」
顔色の悪い軍人「ソイツらに殺されてこんな生ける屍になってしまったんだよ・・・奴らにみんな殺された」
トキオ(なるほど、そしてゾンビ化したら興味を失せると・・・ アトラクナグァーが近くに居るのか)
顔色の悪い軍人「だが死んでからは奴らから襲われないみたいだ、それなら屋敷に立て籠もった方が安全だろう?」
顔色の悪い軍人「あんなガキにもう一度殺されるくらいなら、部屋で腐乱死体にでもなってた方がマシだ」
ハルカ「目が無くなっちゃった女の子ゾンビも居るし、屋敷の方が退屈しないかもね」
顔色の悪い軍人「・・・それは本当か?」
ハルカ「え?あ・・・うん・・・」
ハルカ(話しフッといてアレだけど、 ちょっと引くな・・・)
顔色の悪い軍人「生存者?が居るなら 戦える者として、側に居なければなっ」
顔色の悪い軍人(ゴムもあったよな確か)
顔色の悪い軍人「それでは、急いて戻らねばな! 銃弾だ、持っていけ」
顔色の悪い軍人「ハンドガンが壊れて捨てたのにマガジンを身に付けたままだったのだよ、ではな」
ハルカ「なんでゾンビの方が元気なんだろ・・・」
トキオ「弾が貰えてラッキーだな、それに・・・」
トキオ「バクダンも貰っちゃおうぜー」
ハルカ「気をつけて使いなよ それじゃ、先を急ごう その剣のガキって奴が 生存者みたいだし」
トキオ「応ともぜっ! 首洗って待ってろよー」
  線路を進むように、先を目指す。

〇地下広場
  線路が続くトンネルを進むと、見覚えのある地下の空間だった。
ハルカ(僕が眠っていた・・・あの研究施設と繋がってるのかな・・・)
トキオ(なんだ、ここか ならばこの階段を上れば・・・)
「エインヘリアル・レイニー!!」
ハルカ「来たな!」
  大量の剣、本当に雨のように降り注ぐ。
「ほう・・・我が神技を破るか・・・面白い」
天沢 剣助「わが名は 天沢 剣助 (あまさわ ケンスケ) 漆黒の刃を以て悪を討つ者」
ハルカ「おかしくなってるね」
トキオ「魔力の高まりを見るに アレは素だね」
ハルカ「そうなんだ・・・」
天沢 剣助「ふっ・・・雑魚がまたぞろ集まって来ても無駄だ、魔王に伝えておけ」
ハルカ「魔王?」
トキオ「何?」
天沢 剣助「卑劣なる魔王よ! 私が!来た!!」
トキオ「お前が来たからなんだってんだよ」
トキオ「へー、ガキのクセに反応は良いな」
天沢 剣助「へ?へぇ!?」
天沢 剣助「ヒィィィ!!!」
  液晶のモニター、いや薄型テレビを盾に蹲るケンスケ、トキオは無表情で撃ちまくる。
ハルカ「トキオ!」
トキオ「弾切れ、けっこう丈夫だな」
  ピストルの弾薬を素早く装填しつつ、硝煙も絶えぬ間に再び構えたトキオ。
トキオ「殺しやしない、動けなくなるまで風穴をあけるだけ」
トキオ「時間が惜しい、早く諦めろ」
天沢 剣助「たっ・・・助け・・・」
  テレビがボロボロになり、液晶が情けなくたれ流れる、ケンスケはもう動けそうもない。
ハルカ「これ以上はもういい! 銃を下ろすんだ!!」
トキオ「奴は剣を生成する能力じゃない、あらゆる物質を生成する能力がある」
トキオ「時間を与えれば、不利になるのは我々だ、空気を全て毒素に変えたら?広範囲を破壊する兵器は?」
トキオ「時間や空間を歪める発明品で距離を取られたら?一瞬で命を奪う方法なんて星の数も用意できる能力だ」
トキオ「ソイツの茶番に付き合っていれば、今度は旧校舎の時みたいには済まないのだよ」
トキオ「地球人は、ただでさえ変異のスピードが早く、強力な能力に目覚めやすい、あのゾンビどももだ、意思があり過ぎている」
トキオ「あれだけの自我を保てたアンデッド、見たこともない、生きたまま怪物になればどうなることか・・・」
ハルカ「そうは言って・・・おおっ!?」
  いつの間にか背後にケンスケが、テレビから離れ僕を盾にしてる。
トキオ「ハルカ退いて、ソイツ撃てない」
天沢 剣助「た・・・助けてょ・・・」
ハルカ「すっかり戦意喪失してるからもう大丈夫だよ」
ハルカ(僕を人質にでもするかと思ったが・・・完全にガタガタ震えてる)
天沢 剣助「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ」
  トキオは無言で銃を仕舞った。
ハルカ「ほら、ケンスケ君? こっちはもう・・・」
天沢 剣助「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ」
ハルカ「だめだ、ガタガタしてて話しにならない・・・」
トキオ「先ずは一人・・・ とりあえずソイツを連れてキャンプに戻ろうぜ、その頃には落ち着くだろ」
ハルカ「でも微動だにしないけど」
トキオ「ハルカ、抱っこして来て」
ハルカ「ええ・・・仕方ないか・・・ よっ・・・」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ」
ハルカ「すすごごいい・・・ ふふ震えてる・・・」
  ケンスケを抱きかかえ、トキオの後を追う。
  こうして、僕はトキオと生存者を探すため、この歪な世界を探索することになった。
  自分の事も、トキオの事も、何一つ分からないまま、それが良いことか、悪いことかも分からない。
  今は、進むしかないのだろう、後ろに戻っても、何も無いのだから。
  エピソード・1
  
  終

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • 進んでも進んでも抜け出せないような果てしない悪夢を見ているような気分でした。ゾンビや怪物よりも、存在や言動に一貫性を欠いたトキオがいちばん不気味で後味が悪いですね。

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