執刃のサティリシア

jloo(ジロー)

【第三話】その嬢、扱いに困る(脚本)

執刃のサティリシア

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執刃のサティリシア
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〇英国風の部屋
サティリシア「あら、可愛い子じゃない」
  物音に、薄く目を開く。
ハル「誰・・・・・・」
サティリシア「サティリシアよ、覚えておいて損は無いわ」
ハル「サティリ・・・・・・シア」
  身体を持ち上げようとするが、動かない。
  全身が痺れ、まるで金縛りにでもあったかのようだ。
サティリシア「あらあら、貴方もこの呪い・・・・・・烙印を、捺されてしまったのね」
サティリシア「一体、どんな命令を受けて動けないのかは知らないけど・・・・・・好都合だわ」
ハル「ひっ・・・・・・」
  サティリシアの指が、身体を伝う。
  痺れていることもあり、何とも言えない感触が伝わってくる。
サティリシア「だって・・・・・・」
  サティリシアの顔が、近づいてくる。
  熱い吐息が、顔に吹きかかる。その、甘い香りに、脳が溶けそうになる。
サティリシア「貴方のこと、好きに出来ちゃうってことですもんね」

〇黒背景
サティリシア「ん・・・・・・」
  唇が、重なる・・・・・・
  呼吸が、苦しくなる・・・・・・鼻から空気を吸い込むが、酸素が足りない。
ハル「っ・・・・・・」

〇英国風の部屋
  突然の激痛に、顔を歪める。
  口の中が、焼けるように痛い。この感覚には、覚えがあった。
サティリシア「ふふふ、騙された」
ハル「一体、何を」
  サティリシアは、舌を出す。その上には、小さな印・・・・・・下僕の烙印が、乗っていた。
ハル「君は、一体何者なんだ・・・・・・」
サティリシア「貴方と同じ、ただの下僕よ」
サティリシア「あ、でもちょっと違うかな」
ハル「どういう、意味」
サティリシア「貴方は、私の下僕でもあるもの」
ハル「さっきの烙印か・・・・・・一体、どういうつもりなんだ」
サティリシア「私、貴方のことを気に入っちゃったから・・・・・・ペットにしてあげようかと思って」
ハル「動けないのを、良いことに」
サティリシア「あら、私とキスしたくてわざと動けない振りをしていたんじゃ無いのかしら」
ハル「そんな訳、無いだろう」
  そう言いながら、気づく。腕が動かせる・・・・・・脚も、胴体も。
サティリシア「ほら、やっぱり・・・・・・」
  サティリシアは、怯えたような目でこちらを見つめている。
  まるで、これから押し倒されるとでも思っているかのような表情だ。
ハル「やめてくれよ、そんな気分じゃないんだ」
サティリシア「あら、だったらどんな気分なら良いのかしら」
ハル「冗談は、やめてくれって言っているんだよ」
サティリシア「私は、本気よ」
ハル「はあ・・・・・・」
  話に、ならない。
  サティリシアと話していると、どうにも落ち着かない。

〇海沿いの街
  窓の外を、見つめる。少しは、気分が晴れるかもしれないと思ったからだ。
  高台ということもあり、眼下に街が一望出来る。
サティリシア「どう、思った?」
  いつの間にか、隣にはサティリシアが立っていた。
  彼女は先程までのふざけた表情とは異なり、真剣な瞳でこちらを見る。
ハル「どうって言われても困るけど・・・・・・何だか、遠い存在に感じるな」
サティリシア「どうして?」
ハル「ご主人様が、シュナイトに殺されて・・・・・・居場所が無くなってしまったから」
ハル「だからかな・・・・・・この街が余所余所しく、僕のことを拒んでいるような気がするんだ」
サティリシア「そう、なんだ・・・・・・」
  寂しそうに、サティリシアが俯く。
  同情、しているのだろうか・・・・・・。
  でも、それにしてはその表情は何処か遠くを見つめていて。
  まるで、僕のことなど見えていないかのようだった。
サティリシア「ねぇ、君」
ハル「え」
サティリシア「君は、何処から来たの?」
ハル「ジェント伯爵の邸宅で、働いていたよ」
サティリシア「その前は・・・・・・?」
ハル「実は、あまり覚えていないんだ・・・・・・気づいたら、孤児だった」
サティリシア「そう、なんだ・・・・・・」
ハル「サティリシアは、どうなの? どうして、ここに来たの」
サティリシア「私は・・・・・・」
  サティリシアは口ごもり、そして視線を逸らす。
  何かを言おうとして、口を開き・・・・・・しかし、何も言わずに閉じてしまう。
  暫くの、沈黙が流れた。
  その沈黙を破ったのはサティリシアの言葉ではなく、部屋の扉を叩く音だった。

〇英国風の部屋
アリシア「ハルさん、開けてもよろしいですか」
  返事を待たずに、アリシアは部屋の扉を開く。
アリシア「サティリシア・・・・・・何故、ここに」
サティリシア「あら、アリシア・・・・・・御機嫌よう」
サティリシア「少し、新人さんの様子を見てみようと思ってね。駄目かしら」
アリシア「・・・・・・はぁ」
  アリシアは呆れた様子で、小さく溜息をつく。
  その態度から、サティリシアが日常的に問題行動を起こしていることが見て取れる。
アリシア「まあ、良いでしょう。手間が、省けました」
ハル「どういうこと」
アリシア「ハル、サティリシア・・・・・・ついてきなさい。シュナイト侯爵が、お呼びです」

次のエピソード:【第四話】人形

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