聖なる夜にサンタが服を脱ぐ理由

オレカタ!

読切(脚本)

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〇住宅街の道
  夜明けも近い時刻。
  サンタは閑静な住宅街の一軒家に居た。

  プレゼントの箱を枕元に置き、子供を起こさないようにゆっくり足を忍ばせて歩くサンタクロース。
  誰もいないリビングまで来ると立ち止まり、ついつい独り言をはいた。

〇おしゃれなリビングダイニング
サンタクロース「あ~、疲れたでしゅ 音を立てないって神経つかうのでしゅ」
サンタクロース「お腹も減ったし この時間帯はキツイでしゅねぇ」
  ぼやきながら歩き出すと、テーブルの上のケーキが目に入った。
サンタクロース「うまそうでしゅ 残り物かな?食べたいでしゅ」
  そんなふうに思った時、辺りが煙に包まれて目の前に悪魔が現れた。

〇おしゃれなリビングダイニング
悪魔「ヒヒヒヒヒ」
サンタクロース「え?ひょっとして、アタシの心の中に住む悪魔でしゅか?」
サンタクロース「サンタの心にも悪魔とか住んでるの?」
悪魔「誰だろうと心に悪魔は潜んでいるのさ、ヒヒヒ」
サンタクロース「サンタの中にサタンが居るなんて驚きでしゅ」
悪魔「腹が減ったんだろ そのケーキ、食べちゃえよ」
サンタクロース「いや、さすがにそれはマズイでしゅよ」
  と言った直後、サンタの腹がぐぅぅと鳴った。
悪魔「腹減ってプレゼント配り切れないぞ 体力勝負なんだろ?」
サンタクロース「まあねえ」
悪魔「プレゼントが届かないと子どもたちが悲しむぜぇ」
サンタクロース「それは困りましゅねぇ」
悪魔「だろ なら甘いモン食って、もうひと頑張りしようぜ」
サンタクロース「うん、そうしゅる」
  サンタはなんの躊躇もせずに ほぼまんま残っていたホールケーキにかぶりついた。
悪魔「意外と簡単に説得できたぜ、ヒヒヒ」
  満足そうに悪魔が笑った時には もうケーキは無くなっていた。
サンタクロース「まだ足りないでしゅ」
  サンタはそう言うと冷蔵庫の中を物色し始めた。
悪魔「おいおい、サンタのくせに図々しいじゃねえか」
サンタクロース「いいもん見っけ」
  冷蔵庫から骨付きのチキンが大量にのったプレートを取り出し、当たり前のように食べ始めた。
サンタクロース「ちょっと冷たいけど、うん美味しい」
悪魔「よく食うな 遠慮とかないのか?」
  あっという間にプレートは骨だらけになった。
サンタクロース「いやあ、満足満足」
悪魔「あ、お前ワインまで飲んでるじゃねえか! ソリの運転大丈夫なのかよ!」
サンタクロース「大丈夫、基本トナカイ任せだから でも次つかまったら免停でしゅ、ほほほ」
悪魔「モラルのねえサンタだな」
  サンタはフラつきながら立ち上がった。そして近くの食器棚にぶつかった。
  食器棚から立派なグラスが飛び出し、床に落ちると高級な音を立てて割れた。
悪魔「バカっ!何やってんだ!」
  なおも おぼつかない足取りでフラフラと歩き出すサンタ。
  ふらつくその巨体をソファにバウンドさせて壁に激突し大きな穴を開け、
  しがみ付いたカーテンをレールごと引きちぎり、ゴロンと倒れ込んでようやく動きを止めた。
サンタクロース「・・・ちょっと酔っちゃったみたい」
悪魔「だいぶ酔ってるだろ! ドタバタしやがって、住人起きてくるぞ!」
サンタクロース「あれ?なんか痛い」
悪魔「鼻血出てんじゃねえか!」
サンタクロース「鼻じゃなくてお腹が痛いでしゅ、お腹」
悪魔「そりゃ食い過ぎだ!」
サンタクロース「トイレ行ってくる!」

〇部屋の扉
  トイレを探し当てると勢いよく突入しドアを閉めた。
  閉めるやいなや、ブリブリと深夜の空気をけがす不快な音が鳴り響く。
悪魔「デカい音出しやがって ホントに住人起きてくるぞ」
「あれ?ない」
悪魔「何が?」
「紙がない!」
悪魔「マジかよ 運のない野郎だな」
「どうしよ?」
悪魔「知らねえよ」
「これで拭いちゃえ」
悪魔「なんでもいいから早くしろ」
「あれ?」
悪魔「今度は何だ?」
「流れない!」
悪魔「どんだけデカいの出したんだ!」
「2回流しても流れない!」
  その時、悪魔は2階から降りてくる人の気配を感じた。
悪魔「もう諦めろ!だれか起きてきたぞ!」
「いまパンツ履いてるとこ」
悪魔「早くしろ! もうヤバイぞ!」
「今出るから」
悪魔「ああ!もう! 俺の手には負えん!」
  悪魔はフッと姿を消した。
  それに合わせるように パッと部屋に明かりがともった。

〇おしゃれなリビングダイニング
ご主人「え、だれ?」
サンタクロース「いやだな、サンタクロースに決まってるじゃないでしゅか」
ご主人「サンタさん?いや無理あるでしょ? カラーがぜんぜん違うじゃん!」
サンタクロース「あの服、脱がないとトイレできないのよね」
サンタクロース「でも、サンタ髭があるでしょ」
ご主人「確かにサンタ髭は立派なんだけど ・・・無理あるでしょ?」
サンタクロース「いやいや、信じてくだしゃいよぉ」
ご主人「無理だって 警察呼ぶわ」
サンタクロース「トナカイ待たせてるんで、失礼します」
ご主人「待て待て!」
サンタクロース「嫌だ嫌だ、大人は。 いつからでしゅか?信じる心を失くしてしまったのは?」
サンタクロース「サンタを信じていた あの頃の純粋な気持ちを思い出してくだしゃい」
ご主人「純粋な心で見ても怪しいよ、あんた」
ご主人「でもプレゼントくれるなら信じてやってもいいよ」
サンタクロース「わあ、せこいでしゅねぇ」
サンタクロース「でもいいでしゅ プレゼントくらいあげますでしゅ」
ご主人「良いやつちょうだいよ」
  サンタは袋を拾い上げ、手を入れて中を探った。
サンタクロース「はい あなたに必要な物でしゅ」
ご主人「お、ちゃんとしたやつじゃん! やった!」
サンタクロース「メリークリスマス! では、また来年」
ご主人「別にもう来なくていいよ」
  サンタクロースは庭へとつづく窓を開け、まだ暗い夜の世界へと消えていった。
  サンタが消えた窓からはビュービューと冷たい風が室内に流れ込んでいる。
ご主人「ちゃんと閉めて行けや!」
ご主人「さて、それでプレゼントの中身は何かな?」
  主人はプレゼントの箱を開け、中をのぞき込んだ。
  箱の中には便所スッポンが入っていた。
  主人があわててトイレを見に行くと、サンタ服が脱ぎ散らかされ、便器には赤い帽子が詰まっていた。
「・・・あいつ、本物のサンタだったか」

〇月夜
  聖なる夜の出来事。

コメント

  • めちゃくちゃなサンタさんが楽しかったです。笑
    悪魔の方がだいぶまともなようですね。
    食べ散らかされたのを見て、家の人はどう思うんだろう?笑

  • サンタにサタンがいるとこ笑った。サタンよりサンタが悪い人でしょ。トナカイでも飲酒運転になるんだ。初めて知った。しかも免停。笑った。

  • こういうシンプルなわかりやすい笑いっていいですね。サンタさん、服を脱いだらただの人、、、おじさん。勝手に人の家にあがりこんであやしいったらありゃしない、、、笑えました!置いてったプレゼントもナイス♪実用的なすぐ使えるものっていいですね(笑)

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