第17話 『犯人との対面』(脚本)
〇警察署の医務室
ベッドで眠っているアリスの横で、犬伏と新井が話し込んでいた。
犬伏徹「アリスさんが綾子の名前を?」
新井和樹「ああ。ついさっさ捜査本部でな。 幻覚でも見たのかもしれん」
犬伏徹「・・・・・・」
新井和樹「そういうわけだから、目を覚ましてもくれぐれも無理させてくれるなと、捜査本部長からのお達しだ」
犬伏徹「ああ、わかった」
ベッド脇に置かれた眠剤を見つめる犬伏。
犬伏徹「やっぱり、これは──」
犬伏は眠剤の瓶をそっとスーツの懐に入れた。
佐川アリス「犬、伏・・・」
犬伏徹「アリスさん!? もう起きて──」
佐川アリス「捜査・・・行くぞ」
犬伏徹「な、何言ってるんですか。まだ寝てないと!」
佐川アリス「もう大丈夫だ」
犬伏徹「無理しないでください」
佐川アリス「いま無理しないで、いつ無理するんだ。 先に車に行ってるぞ」
犬伏徹「・・・・・・」
〇一戸建て
閑静な住宅街にある一軒家。
アリスと犬伏がその玄関から出てきた。
犬伏徹「やっぱり、信用してもらえませんでしたね」
佐川アリス「当然だろう」
佐川アリス「そもそも、自分が日頃、犯罪者まがいの行動をしてるんだ」
佐川アリス「警察のやっかいになどなりたくないはずだ」
犬伏徹「この家に住む佐藤淳(さとうじゅん)さんが、次のターゲットになる可能性は高いんですよね?」
佐川アリス「ああ」
犬伏徹「根拠はあるんですか?」
佐川アリス「佐藤の妻は、生安の窓口に何度も相談に来ていた」
佐川アリス「夫のDVはかなり深刻な状況だ」
犬伏徹「・・・・・・」
佐川アリス「それともう一つは──」
〇黒
残りのターゲットは、金井五郎、佐藤淳、相馬孝之、金城アキラ、竹岡純一郎の5人だろ?
〇一戸建て
佐川アリス「刑事の勘だよ」
犬伏徹「なら、マークしなくちゃですね」
佐川アリス「やけに素直だな」
犬伏徹「なんだか、この件に関しては、アリスさんの勘が一番信頼できる気がしてきました」
佐川アリス「ふん・・・なら今夜から張り込みでも文句はないな?」
犬伏徹「今夜!? また徹夜ですか?」
犬伏徹「無理をするなって本部長から──」
佐川アリス「一度署に戻って支度するぞ。以上」
犬伏徹「ちょっとアリスさん!」
〇中規模マンション
付近の工事中のマンションから、ガコンガコンという大きな音が響く。
その近くに止まっているのはアリスの車だ。
〇車内
佐川アリス「・・・奴は来る」
〇黒
君の、殺しのターゲットリストに上がっている人間──それを今日から24時間ごとに1人、殺していくことにした
〇車内
佐川アリス「あたしなら、次に狙うのは佐藤だ」
そのとき、車内の無線機から犬伏の声が聞こえた。
アリスさん。聞こえますか?
佐川アリス「ああ」
いや、その実はご飯を買い忘れちゃって
佐川アリス「ご飯?」
ちょっとだけ晩飯買いにコンビニ行ったらまずいですよね?
佐川アリス「・・・!!」
犬伏の言葉に、アリスはハッとして佐藤の家の窓を眺める。
佐川アリス「部屋の電気が・・・ついてない?」
?
佐川アリス「今・・・何時だ!?」
へ? もうすぐ7時ですけど
佐川アリス「普通ならとっくに晩御飯を食べている時間だ」
え?
佐川アリス「まずい・・・!」
アリスは慌てて車を飛び出した。
〇市街地の交差点
犬伏徹「急にどうしたのかな・・・」
犬伏徹「はい。犬伏です」
犬伏徹「・・・え、結果が出た?」
〇一軒家の玄関扉
アリスは何度もインターホンを鳴らすが、返事はない。
意を決してドアを開けると、鍵がかかっていないことに気付く。
佐川アリス「!」
〇シックなリビング
部屋に飛び込んだアリスが目にしたのは、左腕を切られて横たわる佐藤の遺体だった。
佐川アリス「やられた・・・!!」
周囲を見回すと、居間の奥で佐藤の妻と子供が拘束されていた。
アリスは慌てて二人の元に駆け寄り、拘束を解いた。
佐川アリス「誰にやられたんですか・・・!?」
佐藤の妻「刑事・・・さんが」
佐川アリス「刑事?」
佐藤の妻「昼間・・・あなたたちの後に・・・別の、刑事が・・・」
佐川アリス「その刑事を名乗る男にやられたんですね?」
佐藤の妻「・・・・・・」
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